キッズのみんな、こんにちは。サイエンステラーの大村正樹です。今週も東京浜松町にある秘密の科学研究所シークレットラボからお送りします「大村正樹のサイエンスキッズ」。さぁ、あと2ヵ月ぐらいするとオリンピック。オリンピック競技の中にヨットという競技があるのね。ヨットって知ってるでしょ?乗ったことがあるキッズは少ないと思いますけれど、帆を広げて風を受けて進む海の上の乗物です。ところが海じゃなくて、実は宇宙にヨットが浮かんでて、日本の技術で悠然と宇宙を旅しているという。知ってた? イメージしてください。お知らせの後、サイコーが登場します。
今週のサイコーは、JAXAの森治さんです。こんにちは。
こんにちは、よろしくお願いします。
もうJAXAといえば宇宙ですよ。宇宙というと、「はやぶさ」の帰還が映画にもなって、この2年間「はやぶさ」がすごくクローズアップされていました。
-
そうですね。
宇宙ヨット「イカロス」というものがあって、森さんはJAXA・宇宙航空研究開発機構でこの「イカロス」のプロジェクトリーダーをされている。「イカロス」、宇宙ヨット…。存じあげませんでした。失礼しました。
-
いえいえ(笑)。ぜひ今日は聞いていただければと思います。
聞きます! JAXA、日本の宇宙技術が宇宙にヨットを出してるということですね。
-
そうです。
イメージ的にはどんな感じですか?
-
まず普通のヨットは海でセイル、帆を広げて風を受けて進むんですが、宇宙ヨットはその宇宙版です。ただし宇宙には空気がないので、風の代わりに太陽からの光をセイルに受けて加速するといったものです。
太陽の力で推進する宇宙ヨット「イカロス」
「©JAXA」
無重力だから風もないので太陽の光で加速する。
-
はい。
それは太陽電池などが動力になるわけではないですよね。
-
実は、太陽の光には圧力があるんです。
へぇ〜。
-
小さいので、人間はこの光の圧力を感じることはできないと思うんですが、「イカロス」のほうは一辺14メートルの正方形。
14メートル×14メートル。
-
そうです。バレーボールのコートより大きくて、テニスコートよりは小さいくらい、だいたい中間ぐらいと思ってください。
イメージできました。えっ、あんなものが宇宙にあるんですか!?
-
はい。
すごい!
-
あれで光から圧力を受けるんですが、その力がだいたい0.1グラム。
はい。
-
1グラムというと1円玉1個なので、1円玉0.1個分という力です(笑)。
0.1個分(笑)。それによって動く?
-
はい。小さいんですけれど、太陽の光は常に受け続けることができます。それと宇宙空間には空気抵抗がないので、いったん加速したらどんどん蓄積されていく状況です。どんどんどんどん速くなっていくというものなんです。
はい。
-
じゃあ、どこまで加速できるかということですが、理論上は光と同じ速度までいきます。
えぇ〜、そうなんですか?
-
これは理論上ですけどね。光よりも遅ければ光に押されるので、どんどんどんどん押されていくと最後は光と同じ速度までいくという原理です。
長〜い年月をかけて太陽の光のエネルギーを推進力として少しずつ速度を増して、やがては何光年という光の単位ですよね。世の中で一番速いといわれる光の速度まで達することも可能ですか?
-
はい、理論上はすごいポテンシャルを持った宇宙船と考えられます。
でもね、ヨットというと僕の子どもの頃は『宇宙戦艦ヤマト』ですよ。
-
はい。
宇宙に船体があるというだけで夢がふくらんでくるんですけれど、14メートル×14メートルでキャビンみたいなものはあるんですか?
-
本体ですね。はい、あります。
ある!
-
中心が円柱形になっていて、その円柱形の本体から正方形の帆が伸びている形になります。
じゃあ、正月にあげる凧(たこ)みたいな感じで、そこの真ん中に芯が通っているイメージですか?
-
そうですね。真ん中にコアがあって、芯というか骨組みはないんですね。
はい。
-
「イカロス」は全体が回転していて、回転の遠心力で帆を張っているので骨組みはないんですが真ん中に本体はあって。
ほぉ〜。それがヨットのキャビンみたいなイメージ?
-
そうです。
そこに何があるんですか?
-
そこにはいろんなセンサーですね。観測するものであったり、あと通信するためのもの、ヒーターや計算機などいろんなものがあります。それは普通の宇宙機と同じですね。
それで地球上に情報は随時送られてくるわけですか?
-
そうです。
今も送られてくるんですか?
-
はい、そうですね。
ちなみに、僕らはそのヨットを画像で見ることは可能ですか?
-
はい。帆が広がった後に小型のカメラを切り離しました。その小型カメラが離れたところから自分自身を撮っている。ちょうど携帯でいうところの“自分撮り”をする人がいますよね。
ええ。
-
あれと同じです。
えっ、それで画像を送ってくれてるんですか?
-
はい。画像があって、JAXAのホームページにも載せてありますので見ることができます。
えぇ〜、全然存じあげなかったなぁ。何でだろう…。いつ打ち上げられたんですか?
-
2010年6月13日。
えっ、じゃあ「はやぶさ」の帰還の直前に打ち上げられたのが「イカロス」?
-
そうです。実は金星探査機「あかつき」と一緒に打ち上げられました。その時には「あかつき」の話題もありますし「はやぶさ」が帰ってくる話題もあったので、なかなかニュースになることも少なかったんですけれど。
イカロスのモニタカメラが撮影した金星
「©JAXA」
「あかつき」有名ですよ。「あかつき」が打ち上げられたのと一緒に、セットで「イカロス」も宇宙に行ったんですか?
-
はい、そうです。
で、金星探査機の「あかつき」と切り離されて、「イカロス」は宇宙空間に今いるわけですか?
-
そうですね。金星探査機というかロケットが一緒に2個ポンポンと切り離したので、ほとんど同じようなところを飛んでいったということです。
へぇ〜。どこから打ち上げられたんですか?
-
種子島宇宙センターです。
じゃあ、それはニュースになったわけですよね。
-
そうです。
「イカロス」が切り離されて宇宙空間にあるというのはどうですか、有名な話ですか?
-
え〜と(笑)、こういったところでたくさんの人に、まだまだたくさんの方に知ってもらいたいと思っております。
プロジェクトリーダーとして2年間、「もうちょっとフューチャーしてくれよ」と思いませんでした?
-
そうですね、「はやぶさ」でいろいろ話題が持っていかれたこともあるので(笑)。逆に「はやぶさ」と一緒に取り上げてもらうことも多いんですけれども、ぜひ「イカロス」のこともたくさん知ってもらいたいなと思ってます。
興味深いですよ。
-
「はやぶさ」が帰って来た次の日にカメラで撮影したんですね。
6月14日?
-
はい。
それこそワールドカップのカメルーン戦ですねぇ。その時にその姿が明らかになったんですか? 帆を広げて?
-
はい、そうです。
すみません、カメルーン戦に話題を持ってかれちゃったわけですね(笑)。
-
そうですね。でも本当に感動的な写真で、真っ暗な宇宙の闇の中でキラキラした帆がまるで宝石のように飛んでいるんですね。
はぁ〜。
-
ぜひ見ていただければと思います。
見ますよ〜! 来週までにちゃんと見ておきます。宇宙の無重力の空間で帆を広げる作業は、1回広げてしまうと半永久的に宇宙空間で軌道周回すればイメージとしてはありかなという気がするんですけど、アイデアは日本独自のものですか?
-
これ自身は、もう昔からあります。100年ぐらい前からあるといわれてます。
えっ、100年前から宇宙でそんな話があるんですか!?
-
アイデア自身は。ただ実際につくるのは難しくて、まだ実現されてませんでした。
はい。
-
その前にはSF小説などでよく取り上げられてはいたんですが、実際に成功したのは「イカロス」が初めてなんです。
日本の技術が?
-
はい。
帆を広げるのに成功したのが初めて?
-
はい、そうです。帆を広げただけでなくて、実際にそれが光を受けて進んでいることも確認して、さらに帆の向きを傾けることで行き先も変えられます。好きな方向に行くということをきちんと評価も含めてやったのは、すべて日本が、この「イカロス」が世界で初めてになります。
もう時間だ。すみません、ちょっと「イカロス」にかなり興味を持ってしまったので、また来週詳しい話を聞かせてください。
-
はい。
今週のサイコーは、JAXAの森治さんでした。ありがとうございました。
-
ありがとうございました。
今、JAXAのホームページを見て、宇宙ヨットの「イカロス」出てますねぇ。四角いのね。へぇ〜。あらっ、森さんも一緒に! ぜひ見てください。これ日本の技術ということです。宇宙ヨット、ホームページでぜひ確認してください。それでは、来週も夕方5時半に会いましょう。バイバ〜イ!