2013年04月12日
微差は大差
負けが不思議でしかたない。
1-4
前夜の藤岡と同様に、この日の唐川も前半戦は西武打線を無失点に抑え味方の援護を待ち続けた。
しかし打線は好投に報いることはできず、唐川は7回2失点で力尽きマウンドを譲った。
実は前夜、マウンドを降りる藤岡は泣いていた。
藤岡は、成瀬、グライシンガーが不在の今、マリンズ投手陣の中において自分が置かれている立場をを十分に理解している。
故に好投したとはいえ、相手に先に点を与え、相手投手よりも先に降板する不甲斐なさに自然と悔し涙が滲んできた。
その無念を晴らすべく今夜同級生唐川は登板したが、まるで昨夜のリプレイを見ているかのような試合展開に持ち込まれ同じく敗れた。
戦力的に見ても遜色があるわけではない。
むしろ中島、おかわり君のいない打線に迫力は全く感じられない。
なのに、終盤に点をもぎ取られ突き放される。
一見どちらに勝利が転がり込んでもおかしくない試合に見えるが、細かく振り返ればライオンズの守備力に勝負処でマリンズ打線の勢いを寸断させられている。
連夜のライオンズ右翼金子のアクロバットな捕球と送球は、完全に流れを変えるプレーだったし、7回2死から鈴木大地のセンターに抜けそうな鋭い打球を涌井は咄嗟にグラブで触れ、結果ショートゴロとした。その確かな反応の良さが大きく勝負を左右させた。
しかも、打った鈴木大地は昨夜の終盤三塁守備で、強い当たりではあったが、三塁線の打球を捕球できずに逆転負けのきっかけを作ってしまっていた。
それでも鈴木は、試合前の練習開始の瞬間から昨日のミスを引きずらないように、敢えて「ヨシっ!」と声を出し、自らを鼓舞しながらグラウンドに飛び出していった。
スタメンを言い渡され、今日この試合で昨日のミスを取り返すために。
イメージ通りに名誉挽回の打席は回ってきた。7回2死2塁同点のチャンス。
集中力を最大に高め、涌井の投球を捉えた。しかし、微かにグラブに触れられた。
キッチリ答えを出せたはずだったのだが、ほんの僅か、涌井が上回った。
ポテンシャルをポテンシャルが封じた。
気持ちを気持ちで止めたように見えなくもないが、常々僕たちが見ているスポーツはアスリートたちの身体能力と技能の戦いだ。
それには驚きがある。憧れがある。感動がある。
微差は大差。
悔し涙の藤岡も、無念の唐川も、この試合ではミスを取り返せなかった鈴木大地も、これを糧にしてネクストステージのポテンシャルで相手を圧倒するパフォーマンスを見せつけてくれることを願いたい。
かわのをとや
投稿者 文化放送スポーツ部 : 2013年04月12日 06:21