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2012年01月22日
石井徹也の「らくご聴いたまま」 2012年 二之席号
今回は、おなじみ石井徹也さんによる私的落語レビュー「らくご聴いたまま」の2012年二之席号をお送りします。稀代の落語”道落者”石井徹也さんによります、渾身のレポートをお楽しみください。
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◆1月11日 新宿末廣亭二之席夜
朝呂久『好きと怖い』/時松(交代出演)『手紙無筆(上)』/小菊/三之助(交代出演)
『堀の内』志ん彌(交互出演)『垂乳根』/はん治(扇遊代演)『ボヤキ酒屋』/猫八小猫
/ 市馬(交代出演)『かつぎ屋』/雲助『子褒め』/権太楼『代書屋』/のいるこいる/小
満ん『時そば』/金馬『孝行糖』//~仲入り~//寿獅子/一朝『尻餅』/小遠治『初天
神(飴)』/小さん『親子酒』/正楽/小三治『転宅』
★小三治師匠『転宅』
泥棒の愛すべき間抜けさ加減は勿論だが、お菊のいい加減さが従来より強まって可笑
しい。「肩をポーンと叩かれて」の暢気さなんて女郎と客である。
★一朝師匠『尻餅』
少し短めだが東京の寄席が誇る佳品。
★小さん師匠『親子酒』
親父が酔っ払うまでは良かったが、倅が帰って来てからに無駄の多いのは惜しい。
★市馬師匠『かつぎ屋』
若水汲み・雑煮・宝船と繋げたが、かつぎ屋主の御幣担ぎぶりにクドさがなく、全体
が明るくおおどかなのが良い。中で最初の陰気な宝船売りがアクセントになる。
◆1月12日 第四回林家正蔵一門会(にぎわい座芸能ホール)
つる子『垂乳根(上)』/なな子『垂乳根(下)』/まめ平『元犬』/たこ平『時うどん』/
正蔵『身投げ屋』//~仲入り~//はな平『蚫熨斗』/たけ平『宿題』
★たけ平さん『宿題』
三枝師匠の作ったネタで、他愛なく巧く作られた噺であるが、それを巧みに東京風に
刈り込み、更に焦れて困る独特の親父のキャラクターの可笑しさを与えた。似合って
いて、売り物になりそう。
★たこ平さん『時うどん』
噺の入り方がまだ陰気なのは惜しいけれど、最初のうどん屋での二人の遣り取り、
二番目のうどん屋相手の喜六の一人騒ぎと、恐怖に顔をひきつらせたうどん屋の表情
は非常に楽しい。 また、最初のうどん屋の立て前に夜の雰囲気があるのは、二ツ目
さんでは得難い。『堀川』の前半が聞きたい。
★はな平さん『蚫熨斗』
テンポはあるのだけれど、全体にもう少し派手さが欲しい。甚兵衛さんのボワッとし
た持ち味はあるから、噺の出来が悪い訳ではない。甚兵さんに対して、かみさんが些
かつっけんどんかな。
◆1月13日 第252回柳家小満んの会(お江戸日本橋亭)
市也『元犬』/小満ん『宝船』/小満ん『干物箱』//~仲入り~//小満ん『蒟蒻問答』
★小満ん師匠『宝船』
(初めて聞いた噺だと思っていたが、扇橋師が『三人ばなし』で演ったのは聴いてた
かな?)。サラーッと筋立てを語った印象だが、運任せの成功譚なのに、土左衛門を
供養した徳のお陰だという「隠徳」のクサ味や、成功譚の嫌らしさが全く無いのが小
満ん師らしい。一寸不思議な体験の連続で、優しいお伽噺みたいだ。
★小満ん師匠『干物箱』
親旦那が黒門町の文楽師の日常みたいな怒り方をするのが凄く可笑しい。幕開きの銭
湯行きから親旦那は怒ってる(藪入りの日で小僧がおらず親旦那が下で一人で寝て
る、という設定も巧い)。善公と若旦那銀之助の遣り取りはひたすら洒落ていて馬鹿
馬鹿しく、タッタカタッタカ善公が喋るのがステキに愉しい。巻頭巻軸の句はなく、
干物の話から花魁の手紙になるが、善公と銀之助の遣り取りから廓での色っぽさが張
られているから、善公の憤慨の可笑しさが倍加する。
★小満ん師匠『蒟蒻問答』
ほぼ四代目小さん師から目白の小さん師に受け継がれた演出のまま。六兵衛の親分ら
しさと政五郎(八五郎じゃなかった)の下端っばらしいチャチな可笑しさ、元は江戸っ
子同士らしい刹那な可笑しさがが遣り取りから感じられる。権助の跳ね具合はシニカ
ルでなく軽妙(余り前に出てこない)。寺の三人と対照的な択善の堅さが以外と出な
かったのは、小満ん師の洒脱さゆえか。少し堅真面目過ぎてボケちゃう面を抑えたか
な。
◆1月14日 第1848回黒門亭(第二部・黒門亭)
花どん 『饅頭怖い』/遊一『悋気の独楽』/左楽『寝床』/菊志ん『一文惜しみ』
★菊志ん師匠『一文惜しみ』
些か「公事(訴訟)」に関する説明過多な所はあるが、圓生師の『一文惜しみ』や、談
志師、三三師の『五貫裁き』とも違う、もっと熊八世界の噺で落語というマンガに
なっている。飽くまでもケチという野暮を大家がへこます落語である。惜しむらくは
特に前半、噺のキーマンである大家の出番が少ない。空々しい可笑しさがあるから、
最初のお白洲から大家がもっと前に出て来ても良いのではあるまいか。初五郎は疝気
の虫が人間になったみたいな、ガチャガチャとチャチなとこが愉しいキャラクター性
を高めたい。徳力屋はケチぶりを強調出来れば良い。徳力屋の親戚で落語国のケチ
キャラクターが集まって親族会議をする、という演出には笑った。
※この『一文惜しみ』を聞いていると『髪結新三』の弥太五郎源七が出張る場面から
大家と新三の遣り取りも部分的に切り取って味付けすれば落語になるな、と感じた。
◆1月14日 池袋演芸場二之席夜席
壽獅子/一朝『芝居の喧嘩』/菊丸『時そば』/正楽/志ん輔『夕立勘五郎』//~仲入り
~//彦いち(交互出演)『反対俥』/我太楼(交互出演)『強情灸』/正朝『桜鯛』/志ん
橋『雑俳』/のいるこいる/権太楼『猫の災難』
★権太楼師匠『猫の災難』
『サザエさん』のカツオが大きくなってとぼけたみたいな熊さんのキャラクターが可
愛く可笑しい。全体に馬鹿馬鹿しく、マンガ的で、物凄く酒を呑むのが速い展開にも
関わらず、酒呑みならではの楽しみは分かる。冒頭の「休まなきゃ良かった」のボヤ
キから、あれよあれよと酒が目の前に出現した嬉しさへの変化も愉しい。ただ、雰囲
気が可笑しさに止まってしまう。ストーリーの無い噺だけに、見事に構成されて、酒
呑みの念願叶った休日の雰囲気に満ち溢れた目白の小さん師の絶妙な愉しさと比べて
は径庭がある(比べちゃいけないのだけどね)。目白へのオマージュかな。
◆1月15日 月例三三独演新春公演初日(国立演芸場)
市楽『転宅』/三三『加賀の千代』/琴柳『魚屋本多』//~仲入り~//三三『山崎屋』
★三三師匠『加賀の千代』
いつも通り悪くないが、『鮑熨斗』に比べると世界の広がらない噺だなァ。
★三三師匠『山崎屋』
今夜は頭への礼の鰹節の切手も入れてタップリ目。ストーリーは相変わらず面白く聞
ける。あと、花魁上がりの若い嫁さんが楚々として見えたのは結構。半面、男連中は
ストーリーの陰に隠れて魅力が立ち上がって来ない。知恵の回る番頭など、もっと目
立っても良いのだが。離れオチの場面の仕込みで「親旦那はどうでも良い事を根掘り
葉掘り訊く」と番頭が若旦那に語るが、これがラストシーンの「日溜まりの中の舅と
嫁の会話」という風情を無くしてしまう。ラストを小津安二郎作品にするなら伏線は
却って邪魔だ。
★市楽さん『転宅』
二ツ目になってから、ちと方向性に迷っている感じだったが、今夜の『転宅』は悪
くない。持ち味が濃い目だから軽く演った方が人物が活きる。
◆1月16日 月例三三独演新春公演二日目(国立演芸場)
ろべえ『平林』/三三『幇間腹』/小柳枝『妾馬』//~仲入り~//三三『夢金』
★三三師匠『幇間腹』
随分と手を入れて、落語協会の一般的な『幇間腹』を離れて可笑しくなった。感情を
入れずにツウツウ喋りまくる料亭の女将や一八のキャラクターは『妾馬』の冒頭の長
屋連中のパターンであるが、スピード感があり、間を溜めないので人物表現の浅さも
感じられず、落し噺らしくなる。落し噺に関しては、品川の圓蔵師タイプの演出が向
くのかな。「川口の鋳物屋の可部さん」ってギャグは誰かから過去に聞いた覚えがあ
る。
★三三師匠『夢金』
熊のキャラクターを緩めた印象で割と落語。愛嬌とまでは行かないが、欲深な可笑し
さは出てきた。侍は二ヒリスティックな磯貝浪江型で怖さがある。船を漕ぎ出すと熊
の体から寒さが消えて雪を感じなくなるのは、寒さを避ける上半身の堅さがなくなる
ためか。侍をたぶらかす件の演出は普通で、あそこは矢来町の演出に敵わない。船を
もっと逆向きに動かすイメージが欲しい。
★小柳枝師匠『妾馬』
芸術協会のスタンダード『妾馬』で、ちゃんと何時も通りの安定した出来。全体はあ
くまでも寄席尺だが、チャカチャカした八五郎の可笑しさと対照的な、殿様の全く揺
るがない品の良さには驚く。夢楽師型三太夫独特の爺むささも小柳枝師が演じるとコ
クになる。
◆1月17日 た○平の会(ことぶ季)
たけ平・たこ平・あずみ/あずみ/たけ平『荒茶の湯』/たい平『井戸の茶碗』//~仲
入り~//たけ平・たこ平・あずみ/たこ平『鼠穴』
★たい平師匠『井戸の茶碗』
カットバックが巧みで、スピーディーな展開にまず感心。ただ面白可笑しいだけでな
く、千代田卜斎の「人の情けにすがる千代田卜斎ではない」の良さ、高木の清廉さと
人物も、芝居臭くなく、ちゃんと浮かび上がってくる。また、清兵衛が鉄炮笊と秤を
高木の御小屋に預けて卜斎の長屋に向かうる事で、距離感が出るのには唸った。体調
は良くなかったとかで、笑いの多い部分をカットし、また井戸の茶碗と分ってからテ
ンションが下がったのは惜しまれる。
★たけ平さん『荒茶の湯』
鶴光師匠譲りとの事だが、加藤清正の髭が濃茶の中に入る場面の気色悪さがそのま
ま残っている。柳朝師匠のも気味が悪いまんまだが、この髭の演出は私には『勘定
板』より遥かに汚く感じられる。そこがネックになって演者も気を殺がれるのか、前
後のリズムが一定していない。鶴光師のサービス精神重視の語り口で演る演出なんだ
ろう。そこ以外はたけ平さんの特徴である「人物に入り込まない展開」で、恬淡とし
た雰囲気だから、髭を何かと差し替えたい。あと、挿入される友達のエピソードまで
鶴光師から教わったままの必要もないだろう(このエピソードは必要なのかな?)。
★たこ平さん『鼠穴』
今年聞いた噺の中で最初の傑作。やや内向的な芸ではあるけれど素っ晴らしい!最近
珍しい圓生師型だが、特に竹次郎兄弟の人物がこれだけ出た『鼠穴』は談志師匠以
降、聞いた事がない。非常に独特な田舎者の兄弟で、短い言葉の使い方で二人とも生
真面目で意地っ張りな性格が似てるのも分かるし(兄のテレ、弟の甘えの違いも良く
出ている)、兄弟の関係性や絆も説明でなく感じられる。兄貴の番頭(この番頭が兄貴
と価値観の全く同じ人物に見えるのも偉い)や娘の芳も文句は無い。兄貴が少し微笑
み乍ら(テレているのが愛しく感じられる)、竹次郎に詫びを言う場面で涙が本当に出
たのも談志師匠以来だ。竹次郎が首を括る件を仕種だけで演じて、そこから竹次郎を
兄貴が起こすまで、惜しむらくはリズムと仕種の綺麗さに欠けた面はあるものの、ベ
テランの師匠世代でも、これほど噺と演者がピタリと嵌まった『鼠穴』は近年無いと
私には思えた。
※この兄貴は先代金馬師みたいな「堅いテレ屋」なんだな。
◆1月18日 上野鈴本演芸場昼席
馬生『紙入れ』/ダーク広和/喜多八『竹の子』//~仲入り~//ロケット団/扇辰(交互
出演)/『垂乳根(上)』/文左衛門『手紙無筆(上)』/二楽/菊之丞『明烏』
★菊之丞師匠『明烏』
以前とは印象が変わり、ナヨナヨした感じが減って黒門町の物真似めいた雰囲気はな
くなった。時次郎は普通だが、最後の最後でウブさが消えて、なかなか強かな若旦那
らしさを与えるのは面白い。源兵衛は腕捲りをして時次郎を脅かす辺りに独特の面白
さがあり、明らかに線が太くなった良さがある。笑わせ所にさのみ特徴はないが、満
遍なく受けているのは偉い。また、源兵衛と太助のキャラクターがごっちゃにならな
いのも結構。
★扇辰師匠『垂乳根(上)』
大家がお千代さんの「傷」について「…今のうちに言っといた方が良いか」と口ごも
る辺りが面白い視点。確かにお千代さんは扇辰師独特の、言葉だけでなく全体に一寸
変な人なのが愉しい。『安兵衛狐』が聞きたいな。
◆1月18日 第108回関内柳家小満んの会
市也『金明竹(多分、『骨皮』抜き)』/小満ん『六尺棒』/小満ん『位牌屋』//~仲入
り~//小満ん『夢金』
★小満ん師匠『六尺棒』
人力俥に乗った体験のマクラから、真に洒落た噺になるものだと感嘆した。若旦那は
それなりに分を心得(分別臭い訳でなく世間が分かっている)、俥を自宅手前で降りて
くるキャラクター。一方、親旦那も大野暮ではないが、倅の分を心得た所までは分か
らないキャラクター。若旦那がコツコツと小音で戸を叩く寒夜の雰囲気、二人の遣り
取りの洒落っ気、逃げる若旦那の粋さ、体力任せに追ってくる親旦那の野暮さと揃っ
て愉しい。
★小満ん師匠『位牌屋』
ケチな赤螺屋の旦那のキャラクターが第一。「酷く吝い」事の可笑しさを浮き立たせ
る演出で、旦那のセリフも煙草を袂に隠す仕種もスピード感があるから、聞いていて
辟易しない。摘み菜屋や芋屋の怒りも余り酷く感じない。小僧が位牌屋で言うセリフ
は単なる鸚鵡返しの可笑しさで、「ゆうべ生まれた坊っちゃんのになさいまし」のオ
チが展開上の旦那へのしっぺ返しに聞こえる。「吝に偏るは愚なり」という心持ちの
(批判ではない)、引き画でからかう趣きがある。
★小満ん師匠『夢金』
三三師の『夢金』の原型かも…但し、本題は昨年、浅草の昼主任で伺った時より非常
に速く、この噺に伴い勝ちな描写もさのみ多くない。船を漕ぎ出してからの熊のセリ
フの速いこと。雪の夜にしても、その速さから墨絵の枯れた雰囲気はない。雪の照り
返しのように、何処かきらびやかな物を感じる。一方、侍は余り破落戸めかず、堅め
の調子で飽くまでも侍らしい。梅津長門といった風情で、もう少し色気があれば眠狂
四郎。全体に笑いを待たず、トントン運んでいる(本当はこの噺が小満ん師匠は嫌い
なの?と思ったくらい)。とはいえ、熊の立て弁のキレや、熊が艫側の小窓を開けて
中の様子を覗く件などはやはり印象に残る。
◆1月19日 上野鈴本演芸場昼席
朝太(交互出演)『垂乳根(上)』/ストレート松浦/菊生(交代出演)『新聞記事』/三三
『六錢小僧』/ペペ桜井/菊丸(南喬代演)『看板のピン』/馬生『干物箱』/ダーク広和
/喜多八『鈴ヶ森』//~仲入り~//ロケット団/扇辰(交互出演)/『悋気の独楽』/文左
衛門『手紙無筆(上)』/二楽/菊之丞『素人鰻』
★菊之丞師匠『素人鰻』
神田川の金が呑み、荒れて行く様子に酒乱というより「アルコール中毒者」の孤独が
漂うのは出色。元侍の旦那にも品はあり、金に酒を勧める麻布の旦那や、二日目も金
に酒を勧める旦那に侍の迂闊さというか、どっか上から目線の驕りを感じるので、最
後が自業自得に見える。「良い旦那でございますな」は皮肉なセリフなんだな。
★喜多八師匠『鈴ヶ森』
最初のうちはテンションが低かったが、演じているうちに客席のリアクションが良
く、親分の「馬鹿なんだよ」を調子を張らずに、親分子分でモソモソ話をしながら馬
鹿馬鹿しい愉しさがレベル以上になったのは良かった。
★扇辰師匠『悋気の独楽』
聞いた記憶の無い演目。妾にも御内儀にも色気があり、旦那はかなり耄碌っぽいが、
女二人の間で独特の一寸無気味な可笑しさの小僧定吉が活躍する。東京の噺家さんに
は珍しく御店の雰囲気があるのも貴重。
★馬生師匠『干物箱』
親旦那の硬さと善公のフワフワした硬軟の可笑しさの対照が印象的。
◆1月19日 第回白酒ひとり
さん坊『小町』/白酒『犬の災難』/白酒「アンケート読み」/白酒『干物箱』//~仲
入り~//白酒『御慶』
★白酒師匠『犬の災難』
この噺の馬鹿馬鹿しさと能天気さ、『猫の災難』より主人公の性質がちとこすいとい
う、志ん生師の噺らしい雰囲気がよく出ている。
★白酒師匠『干物箱』
雲助輔師の演じる鼻の圓遊型だが、雲輔師の古風な可笑しさを巧く現代的に置き換え
ているのは、一寸他の中堅真打では真似の出来ないところ。最後に親旦那が善公と気
づかず、力比べをしようとする愉しさは人物造型の確かさを感じさせる。半面、藪井
竹庵の古風な雰囲気に変わるものはまだない。善公が二階に上ってから、俥屋の真似
をする馬鹿馬鹿しさなども雲助師のテンションにはそりゃ及ばない。
★白酒師匠『御慶』
随分久しぶりに聞いた演目。八五郎のキャラクターを遥かに「富籤バカ」に変えてあ
り、その八五郎に釣り合うオバカなカミサンを組み合わせてあるので(古今亭の噺は
どうしても『火焔太鼓』の夫婦が雛型になるのかな)、序盤が非常に可笑しい。終
盤、目白のような新年の清々しさが足りないのは仕方ないか。サゲを変えた。
石井徹也 (落語”道落者”)
投稿者 落語 : 2012年01月22日 04:38