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2011年07月29日
石井徹也の「らくご聴いたまま」 六月下席号
暑かったり、急に涼しくなったり、大雨が降ったり・・・ちょっと不安定な陽気のなか、いかがお過ごしでしょうか?
今回は石井徹也(放送作家)による私的落語レビュー「らくご聴いたまま」の六月下席号をお送りいたします。落語”道落者”・石井徹也渾身のレポートをお楽しみください!
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◆6月21日 池袋演芸場昼席
ホンキートンク(ロケット団代演)/福治『幽女買い』/扇遊『口入屋』//~仲入り~//
三三『高砂や(上)』/歌之介『菜の花マラソン』/小菊/喜多八『明烏』
★喜多八師匠『明烏』
可笑しさは相変わらずだけれど、全体のトーンがより軽く、より「非小三治的」にな
り、何とも落語らしくて嬉しくなっちゃう出来である。
◆6月21日 落語協会特選会第47回柳家小里んの会(池袋演芸場)
ございます『子褒め』/麟太郎『転失気』/小里ん『素人鰻』//~仲入り//小里ん『お
化け長屋』
★小里ん師匠『素人鰻』
試演段階ではあるだろうが、旦那の良い人ぶりが良く、黒門町のような色気はない
分、武骨な「士族の商法」らしいコミカルさがある。御内儀が憮然としているのも可
笑しい。金の酒乱ぶりも堂に入っているが、稍シリアスさが勝つかな。此処に目白の
小さん師の『棒鱈』的な味を加えたい。
★小里ん師匠『お化け長屋(通し)』
『素人鰻』で精魂が尽きた訳ではなく、普通以上の出来。但し、少し言い間違いも多
め。杢兵衛の怪談は可笑しいが相手側のリアクションが些か浅い。後半、登場する職
人仲間はキビキビした悪戯好き揃いで結構。また、按摩が目を向いて言う「モモン
ガァ」は小里ん師本人も吹き出したほど、自棄に可笑しい。
◆6月22日 シス・カンパニー公演『ペッジ・パードン』(世田谷パブリックシア
タ ー)
★三谷幸喜版『夏目漱石の舞姫』だが、明治のインテリの葛藤には井上ひさしの『國
語元年』的な雰囲気もある。『マイ・フェア・レディ』や『ミー&マイガール』風に
軽快な前半に比べると、話を小説家漱石誕生の方向に捻曲げた2幕、特に終盤は明ら
かに話が蛇行している。漱石が小説を書き出した事から逆算して、その理由に非業の
死を遂げたヒロインを絡めるのにも無理があろう。『新撰組!』以降、実在の人物を
描く作品に精彩が無いのも、そうした「こじつけ」の嫌らしさからではないだろう
か。ギャグのこじつけは可笑しいが、理屈のこじつけは嫌らしいものである。役者で
は何役も変わる浅野和之が抜群。大泉洋の軽さと終盤に見せる嫉妬も悪くない。漱石
の野村萬斎は段田安則さんに似てるなァと思うだけ。脚本も含めて、夏目金之助の
「江戸っ子がり」の部分が全く描けていない。ヒロイン深津絵理の演技は大竹しのぶ
の真似みたいだ。どうも、『農業少女』以外、「深津オリジナル」の演技ってものを
舞台で観た記憶が私にはない。
◆6月22日 第273回『県民ホール寄席立川生志独演会』(神奈川県民ホール小
ホール)
春樹『狸の鯉』/生志『千早振る』/生志『お見立て』//~仲入り//生志『唐茄子屋政
談』
★生志師匠『千早振る』
サラーッと演っているんだけれど、隠居と八五郎がお互いに面白がって、ちゃらんぽ
らんを言ったり、相手の穴を突いたり、会話で遊んでる様子が如何にも暖かく愉し
い。目白の小さん師匠系とも違う「馴染み同士の雰囲気」で、顔馴染みが四人揃って
麻雀をしてるみたいなもの。
★生志師匠『お見立て』
稍急ぎ加減かな。志ん輔師匠と同じ、「ゲジゲジを杢兵衛大尽の住所を書いた紙で
うっかり潰して火鉢でボッ」が入っていたが、これは前からだったっけ?杢兵衛大尽
の善人キャラクター、喜助の間挟まれの困り方は安定。喜瀬川の薄情さにもう少しキ
レを与えたい。
★生志師匠『唐茄子屋政談』
マクラ無しで若旦那の「腹減ったなァ」から入って最後まで。頭以外は端折りは無い
が、三席目で些か疲れていたのか、序盤、伯父さんのセリフにキレがなく、稍ウェッ
トだった。伯母さんの笑顔の良さは相変わらずこの噺で他演者を引き離して随一。田
原町で徳三郎がコケてから噺は本調子に立ち直った。矢張り唐茄子を売ってくれる町
の衆の言葉、仕種が図抜けて優れている。若旦那はひ弱な感じが以前より強く、若旦
那らしくなってきた。吉原田圃の売り声と唄はまだ課題だね(笑)。徳がまだ花魁に
惚れ切っている初な所が他の演者以上に明確なのは佳い。誓願寺店からは若旦那、貧
しい母、飯を貪る子供と揃って名品。特に若旦那のセリフの佳いこと。伯父さんの家
に済まなそうに戻ってくる様子は他の追随を許さず。伯父さんが話を聞く件からサゲ
までの演出も当代一だろう。伯父さんの言葉の一つ一つ、糊屋の婆さんの涙のセリフ
に「江戸、東京人の憧れと哀れがが詰まっている。何とも温かな気持ちで家路につけ
る。雲助師匠、一朝師匠と並ぶ『唐茄子屋政談』の三幅対の座は不変。
◆6月23日 トム・プロジェクト公演『子供騙し』(紀伊國屋ホール )
★水谷龍二作演出。仙台近郊の床屋に店主、旦那から逃げてきて住込店員になってい
る女、女の亭主に頼まれたホモの探偵が集う一幕ハーフシリアスコメディ。話の転が
しに稍粗いとこもあるが、話全体に『かもめ食堂』とか南フランスの田舎町を舞台に
した小品の雰囲気、バタ臭さ、洒落っ気がある。篠井英介がホモセクシュアルの探
偵ってのは少し狡い設定だけれど、演技、演出に新劇臭い野暮ったさが余り無く、気
楽に楽しめた。今回は高橋長英の演じた床屋主を初演では緒方拳が演じたらしい。
◆6月23日 池袋演芸場昼席
禽太夫(三三代演)/歌之介『竹の水仙』/小菊/喜多八『寝床』
★喜多八師匠『寝床』
「名人」のひと言で留め金が外れ、旦那が狂気乱舞するように浮かれ出す様子に爆
笑。旦那が「どうせあたしは下手です」というと、倅が堂々と「そうだ!」と叫ぶ自
立心旺盛な奴なのがまた可笑しい。
★歌之介師匠『竹の水仙』
トントン運んで、そんなにギャグ沢山ではないのに、慌ただしい宿屋主と落ち着い
た甚五郎、あくせくする大槻玄蕃のキャラクターが生き生きしていて大爆笑。矢張
り、歌之介師匠の落語は得難い魅力がある。
◆6月23日 落語協会特選会『橘家圓太郎商店その九』
ございます『転失気』/圓太郎『鰻の幇間』//~仲入り~/はな平『たが屋』//圓太郎
『五人廻し』
★圓太郎師匠『鰻の幇間』
稍運びが重いけれど、一八が激昂する爆笑編。固くて噛みきれない鰻、野田の薄くて
不味い酒『水乃紫』、沖縄土産のハブとマングースが戦っている徳利、天麩羅屋が出
前で忘れた猪口に道で拾った鰌屋の猪口、重い座蒲団(これはリアルで実に可笑し
い)、油っこい畳、埃の積もった階段、躾の悪い子供。とどめは無言で馬鹿に可笑し
い女中。黙って勘定書きを一八に押しやる仕種が何とも楽しく、またダメな鰻屋の雰
囲気を背負った主みたいで素晴らしい。
★圓太郎師匠『五人廻し』
これも稍重め。軽い声を使うのが不得意なためか。江戸っ子⇒通人⇒田舎大尽⇒官
員⇒相撲取りときて、田舎大尽に戻ると喜瀬川がやってきており、「一緒に帰ってお
くれよ」のサゲになる。江戸っ子の啖呵は流暢さ中心でメリハリや感情、吉原オタク
らしさに乏しい。通人は演り過ぎでちて気味が悪い。手鼻をかむ田舎大尽と四股から
鉄砲に至る相撲取りは可笑しい。官員はもう少し泣いても良いんじゃないだろうか。
喜助は普通。喜瀬川が最後に大尽の前でフッと「みんなに帰って貰っておくれよ。あ
たしゃもう疲れちまった」と言ったのは夜明け近くの廻し部屋らしくて実に結構。
『三枚起請』のオチよりリアルに響いた。
◆6月24日 宝塚歌劇団星組東京公演『ノバ・ボサノバ』『巡りあい再び』(東宝
劇場)
◆6月24日 J亭月替り独演会『柳家三三独演会』(JTアートホール)
菊六『猿後家』/三三『ねずみ』//~仲入り~//三三『青菜』
★三三師匠『ねずみ』
先日聞いた扇辰師匠そのまんま(扇辰師のは佳かったけど)。言葉の雰囲気から若い頃
の圓窓師匠を感じさせる。これは悪い意味で噺が年寄り臭いためである。変に言葉が
収まっている。オリジナリティのある面白さは無い。
★三三師匠『青菜』
植木屋の性根が感心するほど曖昧な『青菜』。この植木屋にご馳走したのでは、柳影
も鯉の洗いも無駄だなァ。決まったセリフを言ってるだけで喜怒哀楽の裏付けが丸っ
きり無い。単なる笑話なら、これで良いかもしれないが・・・「お前さんが毎日来て
くれて嬉しい」というセリフだけが可笑しかった。
◆6月25日 雲助蔵出しふたたび、その九(浅草三業会館)
きょう介『手紙無筆(上)』/小駒『片棒(中)』/雲助『臆病源兵衛』//~仲入り~//雲
助『宮戸川(通し・鳴り物入り)』
★雲助師匠『臆病源兵衛』
源兵衛の驚き方、怖がり方のリアクションが馬鹿に可笑しい辺りは先代馬生師匠譲
りだけれど、雲助師の持ち味で根津の廓の裏手に回って老婆が現れても、怪奇さより
馬鹿馬鹿しさが勝つので気楽に愉しい。
★雲助師匠『宮戸川』
古風な通し。風邪気味か声が稍枯れて調子が低い。後で聞いたら睡眠不足で体調不良
だったとのこと。結果、前半はさのみだが、後半、お花の拐かしから調子の低さが気
になる。正覚坊の亀の物語は良いけれども、それを受ける半七の気組が些か緩く、ど
うも絶好調とは言い難い。最後の芝居掛かりのメリハリはまず結構だが。前半の叔父
叔母の遣り取りの愉しさが一番印象に残った。
◆6月25日 第14回三田落語会夜席(仏教伝導会館ホール)
朝呂久『やかん』/一朝『たが屋』/喜多八『笠碁』//~仲入り~//喜多八『竃幽霊』
/一朝『宿屋の仇討』
★一朝師匠『たが屋』
マクラから言葉の気合いが違った。非常に丁寧に演じられた『たが屋』のお手本。啖
呵も勢いだけでなく意味の表現になっているし、供侍三人それぞれの描き訳の可笑し
いこと!これだけの出来の『たが屋』は一朝師匠でも初めて聞いた。
★一朝師匠『宿屋の仇討』
二ツ目時代に一度演じたきりで、ほぼ30年ぶりの口演!?とは思えない大お手
本。一部のリズムにこそ、「暫くぶり」の形跡はあったものの、稲荷町から先代柳朝
師匠経由の型で非常に素晴らしい。侍が立派で、江戸っ子三人組が能天気で喜助が
ひょうきん律義。特に三木助型の演出より派手に動かないでいた喜助が、勇む侍の刀
の鐺を掴んで「主に代わってお願い申し上げます」以降のセリフの真摯さは稲荷町を
思わせる。それが翌朝、一転して「宿外れで敵討があるって評判で、縁日の商店が西
の外れか?東の外れか?と荷物を持って待ち受けている」と喜助の言う可笑しさは先
代柳朝師匠風でステキに可笑しい。隣にいるのが三浦忠太夫と聞いて、源兵衛が
「にゃにおォー」と驚くのも絶妙。その他、会話のリアクションの名シーン多数。
※思わず楽屋に参上して、「冬に是非『富久』を」とお願いをしてしまったが、そ
れだけに止まらず、『蒟蒻問答』『突き落とし』『粗忽の使者』『明烏』『三方一両
損』
と一朝師匠で伺いたい噺が次々と浮かんでくる。
★喜多八師匠『笠碁』
何とも可愛らしい『笠碁』。受け手側が終盤にボソッと言う「へぼでしょ」の可笑し
いこと。幼馴染みの甘えあう気持ちを枝雀師匠的に拡張表現した中に人間の可愛さが
濃厚に漂う漂う爆笑佳作。目白型の小里ん師と現代の好一対。
★喜多八師匠『竃幽霊』
幽霊が可愛くて、馬鹿者で素晴らしい。特に、助平が女の肌を触るように賽を扱う手
つきが素敵に愉しい。
※演者の組み合わせに配慮し、演目に注文をつけない三田落語会はさん喬師匠、権太
楼師匠、一朝師匠、喜多八師匠、白酒師匠を準レギュラーとして、二人会形式の落語
会としてのみならず、現在、落語会としてダントツのレベルにあると思う。キャパシ
ティ的にも、落語本来の味わいを楽しめる席数なのも嬉しい。対するに、矢張りイベ
ント的な落語会で聞く場合、かつての圓生・彦六・先代小さん・先代馬生・談志・志
ん朝・先代圓楽と腕揃いなら兎も角、噺の内容に関してレベルの限界がある。
◆6月26日 第35回大人の日曜日(祐天寺・花みずき)
一之輔『南瓜屋』/一之輔『死神』//~仲入り~//一之輔『三方一両損』
★一之輔さん『南瓜屋』
与太郎が傍若無人なのは可笑しいが、可愛げに乏しい。勢いのある所は、或る面、志
ん朝師匠に一寸似て見えるが、志ん朝師匠の勢いには意味があった。けれど、一之輔
さんの勢いには意味が無い。おじさんが与太郎を心配している気持ちもイマイチ。唐
茄子を売ってくれる男が一番良いが、もう少し江戸っ子ぶりが欲しく、また与太郎に
もっと呆れても良いのではないか。与太郎が上を向く表情と手の仕種が「イエスの絶
叫」みたいなのには笑ったけれど・・・。
★一之輔さん『死神』
噺の印象は前回とほぼ同じだが、どちらかと言えば『死神』が主役の話に聞こえる。
会話のなかで首を左右に振り過ぎるので、視線も安定せず、更に主人公は無駄な表情
が多すぎる。結果、「決め」の表情が定まらなかったり、視線と感情がリンクしてい
ない。死神の方が無表情な部分が多く、シニカルな怖さともリンクしている。
★一之輔さん『三方一両損』
勢いはあるが、これも恐らくは原型であろう喜多八師と較べると、視線や上下の振り
分けに無駄が多い。だから、感情と言葉(なまじ声が大きいから)がシンクロした可笑
しさにならない。白酒師の「意味から出た可笑しな動き」と対比しても、これでは表
現が意味を伴い難い。
◆6月27日 池袋演芸場昼席
ホンキートンク(ロケット団代演)/扇遊『厩火事』/正蔵『四段目』//~仲入り~//三
三『転宅』/歌武蔵(歌之介代演)『漫談』/小菊/喜多八『鰻の幇間』
★喜多八師匠『鰻の幇間』
軽い、というよりはテンションが上がらなかった印象。歌武蔵師がマクラで言って
たみたいに二日酔いかしらん。
★扇遊師匠『厩火事』
妙に情の面が重かった。演じ過ぎて芝居臭い。
★三三師匠『転宅』
サラサラ演って笑わせて悪くない。もう少し泥棒のキャラクターがハッキリすると尚
良いのだが、間抜けさが与太郎に近い。
★歌武蔵師匠『漫談』
最新の相撲界批評で抜群に可笑しい。
◆6月27日 浅草演芸ホール夜席
コントD51(マグナム代演)/桃太郎『唄入り善哉公社』//~仲入り~//遊史郎『看
板のピン』/小天華/圓馬『ずっこけ』/雷蔵(伸治昼夜替り)『八問答』/Wモアモア/
楽輔『漫談』/喜楽/遊雀『寝床』
★遊雀師匠『寝床』
白酒師匠の原型なのか、「なぜ、そのひと言がいえない」と一番番頭に迫る旦那が馬
鹿に可笑しく(言葉つきは時々職人になるけれど)、一方、「自分の事を忘れてい
たァ・・・期待に添えずにすみません」と号泣したり(本当に泣かせるのが好きだ
ね)、時々ホケッとする茂蔵も無闇と愉しい。時間の関係で店子たちの愚痴をカット
したのは惜しいというか、芸術協会の主任なんだから、時間配分の配慮がまだ足りな
いとも言える。
◆6月28日 第46回浜松町かもめ亭(文化放送メディアプラスホール)
こはる『三方ケ原戦記・陣備え(中断)』/ひまわり『長門守堪忍袋』//~仲入り~//
談春『蟇の油』/阿久鯉『天明白浪伝~おときと三次』
◆6月29日 人形町市馬落語集(日本橋社会教育会館ホール)
市助『転失気』/市馬『粗忽長屋』/市馬『馬の田楽』//~仲入り~//市馬『茶金』
★市馬師匠『粗忽長屋』
良い出来。粗忽二人の軽さが目白の小さん師とは違う愉しさ。特にせっかち粗忽が行
き倒れの世話人に答える「そうでしょ」が馬鹿に可笑しかった。熊は煙草を喫ってお
らず、何となくボンヤリしてるまま、「あ、熊俺だ」と気付くのが可笑しい。このコ
ンビネーションが最後まで嬉しく続いた佳作。
★市馬師匠『馬の田楽』
最初の馬子唄は真に結構だが、本題は言葉のテンポが全体に早すぎて、この噺らしい
モッチリとした雰囲気、油照りのする田舎の夏らしさに乏しい。子供たちも意外に可
愛さが足りない。
★市馬師匠『茶金』
噺の面白さは十分で、本来はシニカルな笑いの噺なのに嫌な所が全く無いのも結構。
反面、江戸っ子油屋の動と茶金さんの静の対比となると些か点が辛くなる。茶金さん
の店から鷹司公屋敷⇒御所の流れは静謐な中での皮肉な可笑しさだから、シニカルと
無縁な市馬師には柄違いなのは確かなんだが・・・『馬の田楽』の馬子より油屋の方
が声がデカイってのも如何なものか。
◆6月30日 第36回都民特選小劇場「市馬・白酒ふたり会」昼(紀伊國屋ホール)
市也『ひと目上がり』/市馬『七段目』/白酒『船徳』//~仲入り~//白酒『壷算』/
市馬『笠碁』
◆6月30日 第36回都民特選小劇場「市馬・白酒ふたり会」夜(紀伊國屋ホール)
市也『ひと目上がり』/市馬『七段目』/白酒『船徳』//~仲入り~//白酒『壷算』/
市馬『笠碁』
※久しぶりの昼夜同一ネタ落語会で流石に草臥れた。
★市馬師匠『笠碁』
前回聞いた時より、全体に人間関係が一層優しくなっている。特に番頭の「ヘッ?」
は愉しく可笑しい。友情は勿論、隠居所の雰囲気、カミサンの呆れ顔も出ている。昼
は白酒師の『壷算』のノリを客席が引き摺ったため、妙にバカ受けしてしまったが、
夜はそれを踏まえてか、マクラから抑え加減で、「オッパイが大きいと思って」も言
わずじまい。その代わり、「ヘボだかザルだか」で一瞬喉がつまりかける「市馬師風
の情の出し方」は夜にあった。強いて言うと、声が良すぎて、待つ側が店の者を叱る
調子がマジに近くなるので、彼処は調子を抑えたい。
★白酒師匠『船徳』
このシーズン、初めて聞いた『白酒船徳』。内容的な可笑しさはほぼ不変。ギャグと
人物造型もちゃんとリンクしている。傘の客が怒り過ぎなくなったのも良い。昨年夏
を代表した爆笑落語の勢いは今年も続くのか。
※でも、矢張り出来は夜の方が良い。昼って「試し」になっちゃうなぁ。
石井徹也(放送作家)
投稿者 落語 : 2011年07月29日 00:01