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2009年07月21日
「2009年 上半期 佳作高座ベスト10!」
二回にわたってお送りしてきた、放送作家・石井徹也さんによる「2009年度 上半期」寄席・落語会通いのレポートの完結編を掲載いたします。
以下の一覧は石井さんが「落語会」で聴いた佳作高座の一覧です。
(寄席での佳作高座に関しては前回、前々回のエントリーをご覧下さい)
落語会の名称だけが書いてあるところは「鑑賞はしたが、佳作高座には当たらなかった、という意味です。特によかった高座は赤色で記しています。
さらに。
おしまいのところで「2009年 上半期」の佳作高座ベスト10を発表。
こちらは寄席・落語会とりまぜての選出です。
どうぞお楽しみ下さい。
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「2009年 上半期 落語会での佳作高座」
■1月
4日 正蔵・三三 二人会 池袋芸術中劇場
5日 新春談笑ショ- 池袋芸術小ホール2
12日 月例三三独演 国立演芸場
柳家三三『文七元結』佐野槌の女将出色
13日 柳家小満んの会 お江戸日本橋亭
14日 第9回白酒ひとり 内幸町ホール
16日 拾年吉日 浅草見番 桂まん我『蜆売り』
17日 黒門亭2部 黒門亭 柳家小満ん『按摩の炬燵』
20日 オリンパスシンクル寄席 お江戸日本橋亭
柳亭市馬 『厄払い』 橘家文左衛門 『寄合酒』
23日 第26回浜松町かもめ亭 文化放送メディアプラスホール
立川談笑『蟇の油』 鈴々舎馬るこ『イタコ捜査官メロディ』
24日 白酒・甚語楼ふたり会 お江戸日本橋亭
柳家甚語楼『引越しの夢』
桃月庵白酒『替り目』「義太夫流し」に爆笑
27日 柳家三三独演会 ~冬~ 中野スペースZERO小ホール
柳家三三『味噌蔵』
29日 マンスリー菊志ん Vol.12 ブディストホール
古今亭菊志ん『夢金』
■2月
2日 春風亭昇太独演会27周年記念落語会“感傷旅行”
春風亭昇太『パパは黒人』『戦後史開封』
3日 月例三三独演 国立演芸場
柳家三三『忠治旅日記~山形屋藤蔵』
11日 圓朝座 お江戸日本橋亭
五街道雲助『鰍澤』終盤芝居掛り
14日 立川流夜席 お江戸広小路亭
18日 第27回浜松町かもめ亭 文化放送メディアプラスホール
桃月庵白酒『つる』
19日 冬の正蔵3 紀尾井町小ホール
21日 浅草見番寄席・河内山スペシャル昼の部 浅草見番
立川談笑『ジーンズ屋ゆうこリン』※絶対放送には出せない
遊雀・卯月会 三遊亭遊雀『お見立て』
23日 談志一門会 練馬文化センター大ホール
24日 マンスリー菊志ん Vol.13 ブディストホール
25日 権太楼三昧 内幸町ホール
柳家権太楼『宿屋の仇討』
26日 第17回らくだ亭 内幸町ホール
柳亭市馬『粗忽の使者』
27日 人形町・市馬落語集 日本橋社会教育会館ホール
28日 第1回三田落語会昼席 仏教伝道会館ホール
柳家権太楼『不動坊』『佃祭』 柳家さん喬『初天神』
■3月
1日 毘沙門寄席第1回 毘沙門天善国寺書院
三遊亭遊雀『初天神』団子の件のみ 三遊亭金馬『東西の長短』
2日 第88回談笑月例独演会 国立演芸場
4日 下北沢演芸祭 春風亭昇太Bネタ市 シアター711
6日 神楽坂落語まつり~神楽坂劇場二人会 箪笥町区民会館ホール
7日 毘沙門寄席第1回 毘沙門天善国寺書院
入船亭扇辰『夢の酒』
8日 毘沙門寄席第1回楽日 毘沙門天善国寺書院
三遊亭白鳥『真夜中の襲名』 柳家喬太郎『死神』
9日 月例三三独演 国立演芸場
13日 柳家小満んの会 お江戸日本橋亭
柳家小満ん『寝床』
14日 第1回銀座山野亭第一部 銀座山野楽器7Fイベントホール
第1回銀座山野亭第二部 上同じ
三遊亭白鳥『火焔太鼓』
17日 第10回白酒ひとり 内幸町ホール
桃月庵白酒『替り目』
18日 第18回らくだ亭 内幸町ホール
21日 寄ってたかって春らくご“21世紀スペシャルONE DAY” 読売ホール
春風亭百栄『お血脈』 三遊亭白鳥『真夜中の襲名』
22日 三三左龍の会 池袋演芸場
柳亭左龍『不動坊火焔』
23日 三人集 紀伊国屋ホール
24日 三人集 紀伊国屋ホール
柳亭市馬『ちきり伊勢屋(下)』
27日 第28回浜松町かもめ亭 文化放送メディアプラスホール
28日 第4回この人を聞きたい 東洋高校オリエントホール
WAZAOGI落語会“モモエ・ハリケーン” お江戸日本橋亭
三遊亭白鳥『恋するヘビ女』
30日 『落語こてんパン』出版記念 柳家喬太郎独演会~落語春夏秋冬~ 紀伊国屋ホール
■4月
1日 柳家小満ん 雪月花の夕べ
柳家小満ん『柳田格之進』絶品!
3日 第2回 三三背伸びの十番 横浜にぎわい座
4日 第13回 特撰落語会 深川江戸資料館小劇場
瀧川鯉昇『千早ふる』モンゴル編 柳家さん喬『井戸の茶碗』
7日 第89回談笑月例独演会 国立演芸場
8日 白鳥×彦いちクロス落語会“冒険野郎のらくご場” 国立演芸場
15日 月例三三独演 国立演芸場
17日 落語教育委員会 中野スペースZERO小ホール
三遊亭歌武蔵『寝床』 柳家喬太郎『肥辰一代記』
18日 立川談志独演会 讀賣ホール
19日 悠々遊雀 内幸町ホール
昔昔亭桃太郎『長短』
21日 いわと寄席“古今亭志ん輔の日”theatre iwato
22日 三遊亭圓橘の会 深川江戸資料館小劇場
23日 第19回らくだ亭 内幸町ホール
柳家喜多八『薬缶舐め』
24日 第29回浜松町かもめ亭 文化放送メディアプラスホール
柳家さん喬『抜け雀』この噺を聞いて初めて涙が出た
25日 第2回三田落語会昼席 仏教伝道会館ホール
瀧川鯉昇『長屋の花見』
柳家三三独演会 ~春~ 中野スペースZERO小ホール
28日 WAZAOGI落語会 ~通好み~ お江戸日本橋亭
■5月
1日 喬太郎 使い慣れたマクラを語る会 日本橋社会教育会館ホール
入船亭扇辰『野晒し』
5日 圓朝座 お江戸日本橋亭
橘家圓太郎『闇夜の梅』
9日 ひとりブタじゃん 横浜にぎわい座
立川生志『寝床』
10日 大演芸祭“落語協会 若手奮闘の日” 国立演芸場
11日 談春一門会 らくごカフェ
12日 第90回談笑月例独演会 国立演芸場
13日 柳家小三治独演会 東京芸術劇場中劇場
16日 第20回らくだ亭特別公演 日本教育会館・一ツ橋ホール
第5回ワザオギ落語会 国立演芸場
17日 日本橋夜のひとり噺第一夜柳亭左龍の会 お江戸日本橋亭
柳亭左龍『おしくら』
19日 月例三三独演 国立演芸場
柳家三三『不孝者』
21日 第11回白酒ひとり 内幸町ホール
桃月庵白酒『新版三十石』『欠伸指南』
23日 遊三を聴く会 上野広小路亭
三遊亭遊三『蛇含草』
24日 第6回柳噺研究会 下谷神社社務所
25日 ご愛顧30年 市馬落語集 上巻 日本橋劇場
26日 ご愛顧30年 市馬落語集 下巻 日本橋劇場
27日 圓丈の骨、白鳥の肉、ふたたび 国立演芸場
三遊亭白鳥『悲しみの東洋館』
三遊亭圓丈『一ツ家早朝ラブストーリー』
30日 柳家喬太郎みたか勉強会 三鷹市芸術文化センター星のホール
31日 末廣亭余一会 夜の部 文左衛門・喬太郎二人会 新宿末廣亭
春風亭一之輔『初天神』 柳家喬太郎『ぺたりこん』『井戸の茶碗』
■6月
2日 第91回談笑月例独演会 国立演芸場
3日 談志ひとり会~夏三夜~第一夜 国立演芸場
5日 第14回特撰落語会 深川江戸資料館小劇場
橘家文左衛門『粗忽の釘』
7日 民音落語会 談春・喬太郎二人会 昼の部 よみうりホール
8日 月例三三独演 国立演芸場
10日 第31回とみん特選小劇場柳家三三独演会 紀伊国屋ホール
談春一門会 らくごカフェ
13日 遊雀・卯月会 お江戸日本橋亭
三遊亭遊雀『宿屋の富』『庖丁』
15日 ふかいり落語会 らくごカフェ
春風亭一之輔『代脈』
16日 いちのすけえん 夏の段 内幸町ホール
17日 民音落語会 談春・喬太郎二人会 夜の部 関内大ホール
18日 第65回萬金寄席 喜多八独演会 新富区民館
19日 夏の正蔵4 紀尾井町小ホール林家正蔵『魚屋本多』情あり
20日 きゅりあん寄席 たい平・三三二人会 大井町きゅりあん大ホール
21日 雲助蔵出し再び1 浅草見番
五街道雲助『新版三十石』
22日 ぎやまん寄席番外編 湯島天神参集殿
柳家喬太郎『転失気』
23日 みなと毎月落語会柳家三三独演会 麻布区民会館
柳家三三『萬両婿』
26日 第31回浜松町かもめ亭 文化放送メディアプラスホール
林家正蔵『鼓ケ瀧』
27日 横浜開港150周年記念独演会~喬太郎創作落語 横浜にぎわい座
橘家文左衛門『ちりとてちん』
三三左龍の会 上野鈴本演芸場
28日 いわと寄席 古今亭志ん輔の日 theatre iwato
四騎の会 上野鈴本演芸場
入船亭扇辰『野晒し』 柳家喬太郎『笑い屋キャリー』
30日 人形町市馬落語集 日本橋社会教育会館
柳亭市馬『唐茄子屋政談』落語らしい落語
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「2009年 上半期 寄席・落語会で聴いた落語ベスト10!!」
第1位 柳家小満ん師匠『柳田格之進』 4月1日 柳家小満ん 雪月花の夕べ
『柳田格之進』としては先代金原亭馬生師匠の口演と並ぶ圧倒的絶品。
「私のおりません間に、お腹を召される事だけはお止め願いとうございます」と娘に言われた格之進が、フッと微笑みながら、「わしにはウソはつけん」と言った時、「柳田格之進とはこういう人だ!」と感動した。の事柄だからこそ、萬屋の主人が柳田に惚れこむのである。この噺で、これまで柳田格之進の人格創造が疎かにされてきた事を痛感させられた。
湯島切通しの坂で、萬屋番頭徳兵衛と出会い、立ち話をしている間、傘を右手に差して立った形の素晴らしさ。「絶妙!」とはこういうものである。
第2位 昔昔亭桃太郎師匠『勘定板』 2月18日 新宿末廣亭夜席
客は入っているのに全然受けず、完全にダレていた寄席に登場。この一席で客席をひっくり返して、寄席の雰囲気を一変させてしまった。
「前の人が今日の“お客さんは受けない”と言ってましたが本当なんですか?」と話し出したが、本題に入ると顔か紅潮するのがハッキリと分かった。こんなに力の入った桃太郎師匠は初めて!普段の癒し高座も大好きだが、「本気だとこんなに可笑しいのか!」と呆れるほど「抜群」に可笑しかった。
第3位 柳家さん喬師匠『抜け雀』 4月24日 第29回浜松町かもめ亭
寄席でもよく15分くらいにまとめて演っている話だが、この日はロングヴァージョン。若い絵師の屈託を隠した明るさも良くて、可笑しさも十分だったけれど、宿の主人が最後にいう「だって貴方、必ず帰ってくるって言ったじゃないですか」のセリフに思わず落涙した。この噺を聞いて泣いたのは初めてである。「情語り・さん喬」の面目躍如というか、「言葉」のひと言ひと言に対する研鑽、「心配りの緻密さ」に感嘆せずにはいられない。偶々楽屋にいた他の一門の前座さんが大感激していた表情も印象的。
第4位 柳家喜多八師匠『松曳き(下)』 3月18日 池袋演芸場昼席
この噺、先代小さん師匠でも談志家元でも、殿様と三太夫の遣り取りが作り物めいて面白いとは思えなかった。この日は寄席用に前半の職人との酒宴をカットして、後半の殿様と三太夫の遣り取りだったけれど、ホントに頓珍漢で、どう演ってもお互いに勝手を言い合ってるだけという、ほとんどチェーホフの作品の登場人物みたいで滅茶苦茶に可笑しかった。喜多八師匠の扇子が物の見事に「落語らしい落語らしさ」を蘇らせた「達人」の高座。
第5位 桂平治師匠『らくだ(上)』 5月7日 池袋演芸場夜席主任
いつも『鼻ほしい』や『おかふぃ』を明るく語っている口調を抑えて、らくだの兄貴分を語るのがと怖かったのなんの!こんなに怖い「らくだ」は先代松鶴師匠、先代小染師匠以来。特に、らくだの死骸を兄貴分が抱えて「かんかんのう」を踊る件は悪鬼羅刹の如し。屑屋を脅かすたびに、兄貴分が首を「ポキッ」と鳴らすのがまたすっげェ可笑しい。屑屋が酔うと兄貴分を圧倒するほど怖くなっちゃうからまた素晴らしい。「芸術協会の未来は平治師匠の成長にかかっているのではないか?」と思うほどの「素敵な悪夢」
第6位 橘家文左衛門師匠『天災』2月25日 池袋演芸場昼席主任
ごく真っ当な『天災』なのだけれど、ハチャメチャ乱暴な八五郎と紅羅坊名丸の間に構築される関係性が素晴らしく魅力的。文左衛門師匠の『道灌』同様、短い間に人間同士のコミュニケーションが醸し出す魅力、人間の孤独を忘れさせてくれる魅力を笑いの中にクッキリと描き出す。話が終わって帰りかけた八五郎に、名丸が「もう帰るのかい。惜しいなァ」と、名残り惜しそうに言ったひと言は終生忘れられまい。落語における人間関係の基本を余す所なく描き「何でこんなに面白いの!」と感じさせた「本格」である。
第7位 柳家三三師匠『萬両婿(お白州前まで)』 6月5日 池袋演芸場昼席
この後、ご自分の独演会では全編を演じたけれど、この日は寄席の仲入りより前の高座で持ち時間はない。タッタッターとテンポよく喋って「これからお白州に掛かります」という件で切ったけれど、面白かったのなんの。小三治師匠系にありがちな「無駄な時間」が全くなく、『五貫裁き』や『不孝者』同様の皮肉な可笑しさがストレートに満ち溢れて楽しい。三三師匠は「人生や人間を揶揄する皮肉な話」を演じさせては桂米朝師匠と並ぶ「ドライ落語の名手」だ。『算段の平兵衛』や『けんげしゃ茶屋』を聞きたいなァ。
第8位 桃月庵白酒師匠『替り目』1月24日 白酒・甚語楼ふたり会
本オチまで演じた。前半の酔っ払い亭主の酔態も、女房のマメマメしいようで一寸醒めた可笑しさも十分に楽しませて貰ったけれど、後半、亭主がうどん屋に酒の燗をさせる、「可愛らしい、いけ図々しさ」に満足感があり、止めを刺すように「義太夫流し」が現れ(『軒付け』じゃあるまいし)「ベンベベン」とやって亭主を愕然とさせたて爆笑した。登場人物の感情の拡大力、笑いのポイントの多様性、馬鹿馬鹿しい楽しさと「落語真髄」に邁進進中。
第9位 林家正蔵師匠『魚屋本多』 6月19日 夏の正蔵4
失礼乍らこの話、講釈師の先生方のを伺っても、落語家さんが演じられたのを聞いても、「何処が面白いの?!ただの泣かせネタじゃん」と疑問を感じていた。しかし、この日の正蔵師匠の高座は誓った。本多の殿様から「殿様こそ、自分の捜し求めていた実父だ」と聞かされ、それまでジッと黙っていた魚屋宗太郎が「おとッつぁん!」と叫んだ瞬間、「このひと言を聞くための噺なんだ」と、異種運にして疑問が解けた。小満ん師匠の項に書いた「わしにはウソはつけん」同様、噺の腹が無いと単に古めかしい人情噺になる。しかし、生きている演者自身に「腹」(または料簡)があれば、ストーリーを超えてリフレッシュ出来る。それを実証した「刮目」の高座である。
第10位 三遊亭白鳥師匠『悲しみの東洋館』5月27日 圓丈の骨、白鳥の肉、ふたたび
昨年の『悲しみは日本海へ向けて』に続く、圓丈師匠作品改作シリーズ。東洋館ドキュメンタリーといえばドキュメンタリーだし、ウディ・アレンの「ブロードウェイのダニー・ローズ」や、トム・ハンクス主演の『パンチライン』的な「売れない芸人世界ドラマ」でもあり、それらをひっくるめて客観的な視点もちゃんと持っている「落語」なのが凄~い。しかも「落語世界の中に生きている可笑しさと切なさ」がある驚異的な作り! 圓丈師匠から白鳥師匠へ「落語作りの天才兼天災」(注:褒めてんですよ)の才能は脈々と受け継がれている。その源流を辿れば三遊亭圓朝なんだから嬉しいやね。
同格10位
柳亭市馬師匠『唐茄子屋政談』 6月30日 人形町・市馬落語集
つまり、「聞いた後に何とも心地が良い」という「落語らしい落語」になってる。「三人集」で演じられた『ちきり伊勢屋』の(下)にも言えるけれど、「馬鹿馬鹿しい可笑しさ」をベース、人間同士のコミュニケーションの魅力や無言のうちに現される風景や、人間の孤独さ、大人のやりきれなさ、若いって事の有難さがちゃんと描かれている。特に、田原町での若旦那・町の衆の描かれ方は立川生志師匠の口演と並んで素晴らしく、同時に客席が柳亭市馬というお天道様に照らされている安心感がある。市馬師匠の『唐茄子屋政談』を聞いているうち、四代目小さん師匠が『みかん屋』どうして『南瓜屋』に直したか分かった気がした。つまり、四代目から初代圓右師匠の『唐茄子屋政談』へ寄せたオマージュだったんだな。
立川談笑『ジーンズ屋ゆうこリン』 2月21日 浅草見番寄席昼の部
CD版とはヒロインがの名前や設定が違い、しかも芸能界を舞台に実名で登場するから、このヴァージョンは絶対放送には出せない。元は『紺屋高尾』だから、甘いといえば甘い、「こんな事ァありえねェ話」だけれど、これも「男の御伽噺」であり、談志家元から談笑師匠へと受け継がれた「落語ロマンティスト」の発露というべきか。同じ談笑師匠の口演でも、物凄~く皮肉でリアルで現代的な無常感の強い内容で見事に仕立て上げられた『居残り佐平次』より、『ジーンズ屋ゆうこリン』に惹かれる私もまたロマンティストなのでありマス。「フィールド・オブ・トリームス」のラスト、車のライトの列を見て泣いた人には絶対オススメの高座。
春風亭一朝『船徳』5月11日 池袋演芸場夜主任
最近聞く『船徳』は、どれも志ん生師匠型と黒門町型の両方を取り入れて「笑いをねだって来る」から、私は聞いてると前半が重くって仕方が無い。一朝師匠の『船徳』はそういう野暮天な重さが皆無で、若旦那も船頭たちも親方も酷い目に合う客2人も、的確な人物描写でスッキリサラッと描かれ、噺の前半と後半の笑いのバランスが絶妙な取れ方をしているので十二分に面白い。“「江戸前の落語」ってのはこういう風に演じるんですよ”という「抜群のお手本」を久しぶりに堪能出来て嬉しかったなァ。
春風亭柳橋『堀の内』3月9日 池袋演芸場夜
主人公がホントにそそっかしくて、忙しくあちこち駆け回る様子が目に浮かぷから楽しい。理屈や演者の自己実現なんか皆無で「落語を聞いてる仕合せ」が感じられた高座。真打披露興行で伺った『ねずみ』のようなストーリー中心の噺より、柳橋師匠は『堀の内』に限らず、『元帳』だとか『狸の札』だとか、登場人物のコミュニケーションの魅力と演者のキャラクターを中心に運ぶ軽い噺が抜群に面白い。「真面目な表情が似合わない」てェと言い過ぎだけれど、もう少し年齢・体力的に枯れてくると、先代圓遊師匠見たいな典型的寄席芸になるのでは?と期待致しております。
石井徹也(放送作家)
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石井徹也さんによる2009年上半期の高座評、いかがでしたでしょうか?十人寄れば気は十色。落語ファンには落語ファンだけの「佳作高座」があると思います。下半期もよい高座に出会いたいものですね!
お知らせ。
かもめ亭の9月公演、10月公演の概要が決定しました。
9月公演は「二つ目祭り」。
期待の二つ目四名、わか馬・一之輔・圓満・きつつきが立ち合い勝負!
さらに特別ゲストの柳家喬太郎師匠が花を添えます。
10月公演は昨年に引き続き「百栄・兼好二人会」。
9月公演は本日(7/21・火曜日)午前10時より前売り開始。
10月公演は7/27(月)前売り開始。
どうぞよろしくお願いいたします。
投稿者 落語 : 2009年07月21日 00:36