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2008年10月05日

「浜松町かもめ亭」九月公演レポ

先週の9月30日(火)、文化放送・メディアプラスホールにて、第21回「浜松町かもめ亭」が開催されました。

番組は下記の通りです。

一、転失気    立川こはる
一、粗忽長屋  古今亭菊六
一、阿武松    桂文字助
      中入り
一、俗曲     笹木美きえ
一、お見立て  古今亭志ん輔

(詳しいレポートは近く「浜松町かもめ亭」公式サイトhttp://www.joqr.co.jp/kamome/にUPされます)

今回、「かもめ亭」の広告には<江戸前の芸をたっぷりと!>と銘打ったのですが、その看板に偽り無しの内容になったと思います。

とくに中入り前に「阿部松」を演じられた文字助師匠!
大の相撲贔屓である文字助師匠の「阿部松」は自家薬籠中の演目であると伺っていますが、得意の演目にありがちな慣れや当て込みが一切無く、丁重かつ歯切れの良い口調ですみずみまでしっかりと語られ、水も漏らさぬ出来。
とくに、小車が板橋の宿屋で最期の大飯を食べるシーンや、それに続く立花家とのやりとり、さらに二人目の師匠となる錣山との対面は情味も深く、なまじの人情噺よりもずっと「人の情け」を感じさせてくれました。
また、錣山が框に平伏する若者を見て、ただ「うーむ」とうなるところの力の籠もり具合や、それから一転、地にかえって「これが後の横綱、阿部松・・・」と語りになる話芸独特の面白さは近ごろ無類の味でしたね。

「かもめ亭」二回目のトリを飾ってくださった志ん輔師匠は「お見立て」の一席。
川島雄三の映画「幕末太陽伝」でも大詰め近くに「お見立て」のシーンが挿入されていますが、あの名画のタッチに近く、若い者(実年齢は若くもないはず)の喜助が、ただひたすら軽く、空疎に嘘をつきまくるそのうちに、笑いと共にやがてある種の苦味が広がります。
この噺、噺の進展している時刻が昼なのか、夜なのか、演出次第でどちらにも持って行けるのですが(そこを意図的にぼかす演者も多いですが)、志ん輔版ではハッキリ「夜が明けたからこれから墓参りに」と運んでいます。そのことにより、夜が更け、深夜になり、やがて明け切ってしまった遊里の光景とそこに暮らす人々、通う人々の「虚実」や「苦楽」のコントラストが浮かび上がり、上々の一席でした。

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もうひとつ。今回の「かもめ亭」ではいつもはお囃子を担当してくださっている笹木美きえ師匠がはじめて高座に出演をされました。
いわゆる「俗曲」というスタイルで、演奏されたのは「東雲節」「ストトン節」「チョンコ節」「サイサイ節」、「奴さん」「見世物風景」などなど。普段の寄席にも俗曲のお師匠さんたちは出演されていますが、美きえ師匠の高座が面白かったのは、寄席にレギュラー出演されている師匠方にくらべて、演奏がゆっくり目でおっとりしているのです。美きえ師匠の演奏は、普段はお弟子さんへのお稽古や、演奏会出演がメイン。そのためかと思うのですが、寄席風の「観客に受ける」という計算が少なく、そのぶん丁重で一曲一曲が露を含んだような感触なのです。とくにラストの「見世物風景」は、寄席でもよく聞きますが、まるで違う雰囲気があり、ひとつひとつの出店の風景がくっきりと浮かび上がりました。
(美きえ師匠HPhttp://www15.tok2.com/home/waon/index.htm お弟子さんに端唄・俗曲のお稽古もされています。ご覧下さい)

なんとも渋く、静かな楽しさに満ちた今回の「かもめ亭」でした。

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終演後は、会場隣の会議室で打ち上げが催されました。

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さて、次回「浜松町かもめ亭」は10月8日(水)の開催。
出演は、三遊亭金馬、桂小金治、金原亭馬治、立川こはるの各人です。
当日券もございます。
ぜひご来場下さい。
また十月公演のロビーにて11月かもめ亭「百栄・兼好二人会」および12月公演「立川流忘年会」、大晦日の「正蔵・喬太郎二人会」のチケットを販売いたします。

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次回もご来場をお待ちしています。

http://www.joqr.co.jp/kamome/lineup.html


松本尚久 (浜松町かもめ亭プロデューサー・放送作家)

投稿者 落語 : 2008年10月05日 23:51