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2008年07月28日

◆2008年前半 聞いた落語会、落語会で聞いたゾ佳作ネタ

■1月
5日 月例三三正月特番昼 柳家小満ん/盃の殿様
     月例三三正月特番夜
7日 にぎわい座談春独演会
11日 三遊亭圓橘の会三遊亭圓橘/三味線栗毛
12日 オリンパスシンクル寄席柳亭市馬/普段の袴
13日 柳家小満んの会
16日 権太楼三昧柳家権太楼/百年目:ネタ卸し
17日 第5回らくだ亭
20日 第13回かもめ亭 柳家小満ん/明烏
28日 三遊亭圓橘一門会 三遊亭圓橘/夢金

■2月 
4日 月例三三独演
11日 圓朝座 入船亭扇遊/牡丹燈籠:お露新三郎
14日 喬太郎たっぷり愛しナイト
17日 悠々遊雀
19日 黒談春昼
冬の正蔵2 林家正蔵/しじみ売り
21日 第6回らくだ亭 古今亭志ん五/干物箱
瀧川鯉昇/宿屋の富/長屋の花見
23日 特選落語会
24日 飯能・有望若手応援寄席 第6回三三独演会
26日 東西若手落語コンペディショングランドチャンピオン大会
桂かい枝/堪忍袋
27日 三遊亭圓橘の会 三遊亭圓橘/梅見のやかん
 28日 第14回かもめ亭

■3月
1日ラジオデイズ落語会 橘家文左衛門/文七元結
5日 にぎわい座 談春独演会
11日 喬弟仁義
13日 鯉昇・喬太郎 古典こもり 瀧川鯉昇/明烏
14日 月例三三独演 柳家三三/雛鍔
20日 YEBISU亭
21日 第15回かもめ亭 快楽亭ブラック/川柳の芝浜
22日 三三・菊志んの会 古今亭菊志ん/だくだく
23日 三三・左龍の会 柳亭左龍/徳ちゃん
25日 黒談春
27日 歌舞伎と落語~江戸東京博物館15周年記念
柳家喬太郎/おせつ徳三郎
白鳥アドベンチャー 三遊亭白鳥/明烏:改作版
28日 ビクター落語会 古今亭菊之丞/三味線栗毛
29日 ビクター落語会
30日 権太楼日曜朝のお浚い会
31日 本調子やなぎの会 柳家の若い衆 柳亭市馬/堪忍袋

■4月
5日 ラジオデイズ落語会
9日 春の正蔵3林家正蔵/突き落とし
10日 にぎわい座談春独演会
11日 初演の会
12日 第52回扇辰・喬太郎の会 柳家喬太郎/宮戸川:通し
16日 第2回こんにゃくえんま一朝会
18日 三遊亭圓橘一門会
第4回柳噺研究会
19日 ビクター落語会 柳亭左龍/淀五郎
遊雀卯月会 三遊亭遊雀/堪忍袋
21日 しのばず寄席 三遊亭圓橘/三十石
23日 WAZAOGI ろっくおん 
24日 16回かもめ亭 柳亭市馬/らくだ:上
25日 夢空間花形特選落語会 柳家喬太郎/宮戸川:通し
30日 第478回落語研究会 林家正蔵/芋俵

■5月
2日 にぎわい座談春独演会 立川談春/不動坊火焔
3日 圓朝座
9日 ミックス寄席 古今亭菊之丞の会
11日 東京マンスリー 古今亭菊志んの会 古今亭菊志ん/湯屋番
12日 月例三三独演 柳家三三/甲府ぃ
13日 柳家小満んの会
15日 桂米朝一門会
16日 横浜喬太郎勉強会
17日 ビクター落語会 春風亭正太郎/狸の札
WAZAOGI落語会 柳家権太楼/文七元結
22日 立川生志真打昇進披露公演
23日 第17回かもめ亭 柳家喜多八/欠伸指南 古今亭壽輔/文七元結
26日 白鳥・喬太郎 デンジャラスナイト 三遊亭白鳥/アニメ勧進帳
29日 らくだ亭 桂小米朝/親子茶屋
31日 あの人のあの噺が聞きたい 林家正蔵/子は鎹

■6月
2日 三三 三十三歳三夜三席三宅坂第一夜
3日 三三 三十三歳三夜三席三宅坂第二夜
3日 三三 三十三歳三夜三席三宅坂第三夜 立川談春/おしくら
6日 にぎわい座談春独演会
7日 談志・志らく親子会
10日 WAZAOGI ろっくおん 通好み(1) 瀧川鯉昇/鰻屋
13日 市馬落語集 柳亭市馬/抜け雀
14日 特選落語会 柳家さん喬/心眼 柳亭市馬/らくだ:上
17日 圓丈の骨、白鳥の肉 三遊亭白鳥/悲しみは日本海へ向けて:改作
20日 東京マンスリー 古今亭菊志んの会
古今亭菊志ん/本膳/三枚起請
21日 遊雀水無月会 三遊亭遊雀/お茶汲み
22日 三三・左龍の会 柳亭左龍/船徳
23日 らくだ亭
24日 柳家三三独演会 柳家三三/五目講釈
26日 いわと寄席 市馬の日
28日 談志・談春親子会
30日 第18回かもめ亭 瀧川鯉昇/ちりとてちん 春風亭小柳枝/船徳


◆2008年前半 聞いた高座ベスト10

① 柳家さん喬 幾代餅 5月4日 上野鈴本演芸場昼席   柳家小三治師の代演として仲入りに登場。さん喬師の『幾代餅』は寄席で16~20分くらいでよく演じられるが、この日は演出がかなり違い、前半が人情噺的に丁寧で、終盤は落とし噺でワッと笑わせてと緩急自在。
特に中盤、幇間医者の薮井竹庵と主人公・清蔵が歩きながらする会話が絶妙で、そこから幾代と清蔵のジックリした遣り取りで観客を唸らせた。1月(こちらは柳家小三治師の代バネ)と4月の新宿末広亭夜席主任で2度伺った『妾馬』も季節感の変化など、細かく配慮の行き届いた逸品。
そのさん喬師が、どうして上野鈴本演芸場の主任だと、落語味の薄い、芸術派深刻演劇落語を演じてしまうのかが不思議でならない。ま、それもさん喬師の芸の幅ではあるのだが。

② 柳家さん喬 ねずみ 1月9日 上野鈴本演芸場夜席   初席の夜、持ち時間はたった10分程度(小三治師の主任だって『小言念仏』なのよ)にも関わらず、いきなり『ねずみ』に入ったから驚いた。
しかも、それが高座に座った途端のマクラの語りだしからオチまで、たった8分38秒しかないのに(マクラが1分くらいあるから実質7分台)、ちゃんと『ねずみ』になっていたからビックリ仰天、てぇかシビレたね!
こういう高座に触れると、「長く演りゃ熱演・名高座」な~んて、“芸知らずのたわごと”と言わざァなるまい。しかも、干支を踏まえたネタって配慮の妙もあり、文句のつけようがない。

③ 柳家小満ん 明烏 1月20日 かもめ亭 新内の『明烏』をサラリと取り入れ、浦里花魁の部屋に時次郎が入ってから、花魁が時次郎をどう扱ったか、部屋の中の細かい様子から花魁の手管までをタップリと演じて、その艶冶にして品の良かった事は無類。
新内の知識がちゃんと小満ん師の中でこなれているから、教養講座の嫌味など微塵も泣く、大人の楽しみになる。
向こうを向いて泣きながら寝てェる時次郎の枕の下に、花魁がスーッと手を差し込んで、時次郎の首を抱えてこっちを向かせる」なんて描写はあんまりステキでゾクゾクしちゃった。先代文楽師以降、最高の『明烏』ではあるまいか。7月の小満んの会で伺った『お富與三郎』の「木更津」で、歌舞伎の場面をちょいと入れる粋な演出なぞも、まず真似手はあるまい。

④ 古今亭壽輔 文七元結 5月23日 かもめ亭
   今年、浅草演芸ホール主任でネタ卸しをされ、上野広小路亭の主任で五日間続けて演じ、さらに池袋演芸場で5日間、吾妻橋から近江屋内まで部分的に演じられて練ったという作品。
「寄席で演れる長さで」という壽輔師の配慮で、吾妻橋からの口演だが、落語協会には絶対にいない、独得の歌い調子で語られる長兵衛のセリフに「人間の不思議な味わい」と「お久に寄せる父親の情愛」が溢れていた。
近江屋に文七が戻った辺りの描写も他にない演出で、ひと言も口をきかない「町内の頭」が実に美味しい脇役になっているなど、芸術ぶらない『分七元結』の佳さをタップリと味あわせて戴いたのに感謝!
近年の『文七元結』では、圓丈師の『大晦日文七元結』や、茶楽師のサラリと短軽快な『文七元結』と並ぶ佳品であります。

⑤ 林家正蔵 しじみ売り 2月19日 冬の正蔵2
面白いのに、何故か演り手が殆どいなかった、先代小文治師から小南師へと伝わった上方系『しじみ売り』を小佐田定雄氏の台本で演じた。
終始、大人びた口をきいていたしじみ売りの小僧が、終盤、一家の味わった身の上の辛さを語って泣く件の悲しみは、『子は鎹』の亀ちゃんの涙と並ぶ“正蔵子役”の名品。『薮入り』が聞きたくなった。
親分の家にいる留公の、如何にも人の良い味わいも嬉しく、上方系『しじみ売り』の笑いと涙を、東京流で見事に復活させてくれた。最後の七五調のセリフのみ、台本も口演もまだ整いきっていないのが課題かな。

⑥ 橘家文左衛門 道灌 4月6日 上野鈴本演芸場夜席
 “文左衛門師の『道灌』はどうしていつも、あんなに面白いんだろう“と思っていた。よ~く注意して聞いて、やっとその理由が分かった。
先代小さん師が語っていたという、「隠居と八っつぁんは仲が良くないといけない」という人間関係を文左衛門師が最も忠実に守っているのだ。
八五郎のトンチンカンに対して隠居が一度として声を荒げない。その距離感が心地よく噺全体を覆っている。先代小さん師以降では最高の『道灌』ではないだろうか。『夏泥』『千早ふる』の面白さも今はダントツだろう。
尤も、そこがまだ中堅の良さでもありますが、ストーリーの立つ話だと小品に比べ、登場人物の距離感がイマイチな感じもするのであります。

⑦ 立川談春 不動坊火焔 5月2日 にぎわい座談春独演会
正直、『慶安太平記』や『小猿七之助』『お富與三郎』を気負って演じている談春師は、私には「談志家元のレプリカ」にしか見えないのでありますが、この『不動坊』や『おしくら』、さらに『らくだ』で手斧目の半次が泣き上戸になってからなどの談春師は素晴らしい。
盤台顔でニマニマとお瀧さんに惚れている吉公も楽しいけれど、やきもち三人組の間抜けさが何とも可愛らしい。映画『父の恋人』に登場する、気の良い三人兄弟なんか演じてもらえないものかしら。

⑧ 三遊亭栄馬 替り目 3月29日 新宿末広亭夜席主任
若い頃より見た目に丸っこくなって、キザな印象が抜け、コクのある高座になってるなァ。モソモソしゃべってるようで、酔っ払いの身勝手な可愛さ、女房の愛情がホコホコと感じられる。後半の夜鳴きうどん屋と酔っ払いのやりとりも夜更けの質感あり。良い意味で庶民的な景色が眼に浮かぶ。目に浮かぶといえば、『茄子娘』なども今は一番風景が感じられます。
この『替り目』に、先代馬生師の演っていた、うどん屋に炙らせた海苔を、如何にも美味しそうにパリパリと折る件を、是非入れて欲しい!

⑨ 古今亭志ん橋 手紙無筆 1月15日 新宿末広亭夜席
志ん駒師匠の代演で、ヒザ前だから前半の10分ほどしかない。
ごく短い高座だったけれど、無筆の男と手紙を持ち込まれて弱っている無筆の兄貴分の会話に「落語らしい無邪気さ」が溢れていた。
このところ、年齢の割にちと老け込んだ感じの高座と続けて出会い、些か心配していたが、まだまだ本領発揮で安心。
志ん橋師では『間抜け泥』の新米泥棒と、その間抜けぶりに手を焼いている親分の会話の無心さも素晴らしい。こういう天性の落語らしさ、無邪気な楽しさは理屈じゃないんだよね。

⑩ 三笑亭夢太朗 お見立て 5月30日 新宿末広亭夜席主任
春雨家雷蔵師匠の代バネ。何よりも言葉に感心した。女郎の喜瀬川が死んだと聞かされた杢兵衛大臣。さらに「墓がある」と喜助から聞かされ、「墓があるのけ!無縁にならなかったのけ!おめえら、墓を
作ってやってくれたのか!」と喜んで泣いたのであります。
『お見立て』は廓噺の中では軽い、気楽なネタとばかり私は思っていたけれど、この杢兵衛大尽のひと言が「死してなお、苦界の浄閑寺」って下級女郎の切なさと、この噺の持つ奥行き、女郎の背負った苦界を知った上で惚れている杢兵衛大尽の人間味を初めて感じさせてくれました。感謝!


石井徹也(放送作家)

投稿者 落語 : 00:23

2008年07月25日

2008年前半 寄席で聞いたゾ 主任ネタ

■1月
3日 両国亭    三遊亭圓橘   小言幸兵衛
6日 上野初席3部 柳家小三治   小言念仏  風邪気味で体調不良
7日 上野昼    林家正蔵    新聞記事
9日 上野夜    柳家小三治   小言念仏
12日 池袋昼    柳家小三治   睨み返し
13日 池袋昼    柳家小三治   出来心
14日 新宿夜    柳家さん喬   妾馬    佳作 小三治代バネ
15日 池袋昼    柳家小三治   一眼国
     新宿夜    柳家小三治   睨み返し
16日 池袋昼    柳家小三治   転宅
17日 池袋昼    柳家権太楼   火焔太鼓  小三治代バネ
18日 池袋昼    柳家小三治   欠伸指南
     新宿夜    柳家小三治   欠伸指南
19日 池袋昼    柳家小三治   野晒し
     新宿夜    柳家小三治   天災
20日 新宿夜    柳家さん喬   妾馬    小三治代バネ
25日 上野夜    古今亭志ん輔  お見立て
27日 上野夜    古今亭志ん輔  幾代餅
29日 新宿夜    三笑亭茶楽   文七元結  佳作
30日 上野昼    古今亭志ん輔  子は鎹   佳作 一朝代バネ
     新宿夜    三笑亭茶楽   寝床
31日 上野昼    春風亭一朝   二番煎じ

■2月
3日 池袋昼    柳家喬太郎   一日署長
4日 池袋昼    林家正蔵    ねずみ   喬太郎代バネ
5日 池袋昼    柳家喬太郎   按摩の炬燵
6日 池袋昼    柳家喬太郎   文七元結  佳作
7日 池袋昼    柳家喬太郎   路地裏の伝説
8日 池袋昼    柳家喬太郎   イナバさんの大冒険
両国亭    三遊亭圓橘   五人廻し
10日 池袋夜    三遊亭圓丈   大晦日文七元結
12日 新宿夜    三遊亭圓輔   三枚起請
15日 池袋夜    桂歌春     天狗裁き
18日 新宿夜    三遊亭圓輔   文違い
22日 池袋昼    三遊亭歌武蔵  池田屋
22日 上野夜    桃月庵白酒   佐々木政談
25日 浅草昼    古今亭壽輔   ラーメン屋
26日 池袋昼    林家たい平   幾代餅   佳作
27日 池袋昼    林家たい平   二番煎じ

■3月
2日 国立演芸場  柳家喬太郎   按摩の炬燵
4日 国立演芸場  柳家喬太郎   金明竹
    池袋夜    三笑亭茶楽   明烏
6日 国立演芸場  柳家喬太郎   初天神   佳作 団子まで
7日 国立演芸場  柳家喬太郎   文七元結  佳作 吾妻橋から
9日 国立演芸場  柳家喬太郎   ちりとてちん
     上野夜    柳家さん喬   唐茄子屋政談
10日 国立演芸場  柳家喬太郎   うどん屋
上野夜    柳家さん喬   中村仲蔵
17日 上野夜    入船亭扇辰   心眼
29日 新宿夜    三遊亭栄馬   替り目   本オチまで

■4月
1日 上野夜    柳家三三    鼠穴
2日 広小路亭   古今亭壽輔   文七元結  吾妻橋から
2日 上野夜    柳家三三    宿屋の仇討
4日 広小路亭   古今亭壽輔   文七元結  吾妻橋から
   上野夜    柳家三三    忠次旅日記・山型屋藤蔵
5日 上野夜    柳家三三    花見の仇討
6日 上野夜    柳家三三    らくだ
7日 広小路亭   三遊亭金太郎  ねずみ
8日 広小路亭   三遊亭金太郎  鼠穴
   上野夜    柳家三三    お化け長屋 本オチまで
11日 池袋昼    瀧川鯉昇    明烏 佳作
12日 池袋昼    桂南なん    ねずみ   鯉昇代バネ
13日 池袋昼    瀧川鯉昇    長屋の花見
14日 池袋昼    瀧川鯉昇    佃祭
15日 池袋昼    瀧川鯉昇    ねずみ   佳作
17日 新宿昼    橘ノ圓     鹿政談
20日 新宿昼    雷門助六    春雨宿
     新宿夜    柳家蝠丸    匙加減
21日 新宿夜    柳家さん喬   百川
26日 新宿夜    柳家さん喬   妾馬    佳作
27日 新宿昼    三遊亭金馬   鹿政談

■5月
1日 上野昼    林家正蔵    ねずみ
2日 上野昼    林家正蔵    鼓ケ瀧   佳作
3日 上野昼    林家正蔵    子は鎹   佳作
4日 上野夜    柳家権太楼   不動坊
5日 上野昼    林家正蔵    悋気の独楽
5日 広小路亭   瀧川鯉昇    佃祭
6日 上野夜    柳家権太楼   子別れ(中~下) 佳作
7日 上野昼    林家正蔵    お菊の皿
8日 浅草夜    柳家小三治   粗忽長屋  佳作
10日 上野昼    林家正蔵    読書の時間
    浅草夜    柳家小三治   天災
14日 新宿夜    春風亭一朝   井戸の茶碗 佳作
18日 新宿夜    春風亭一朝   天狗裁き
20日 池袋昼    三遊亭白鳥   青春残酷物語
24日 新宿夜    春雨や雷蔵   紺屋高尾
27日 池袋昼    柳家はん治   禁酒番屋
    上野夜    古今亭菊之丞  景清
27日 池袋昼    柳家はん治   妾馬
    上野夜    古今亭菊之丞  附き馬
30日 池袋昼    柳家はん治   背なで老いてる唐獅子牡丹
     新宿夜    三笑亭夢太朗  お見立て  佳作
 31日 上野夜    古今亭菊之丞  法事の茶

■6月
1日 池袋夜    春風亭一朝   淀五郎   佳作
5日 広小路亭   柳家蝠丸    田能久
    池袋夜    春風亭一朝   片棒
8日 池袋夜    春風亭一朝   天狗裁き  佳作
11日 新宿夜    橘ノ圓     もう半分  楽輔代バネ
18日 新宿夜    柳亭楽輔    幾代餅
19日 新宿夜    柳亭楽輔    お花半七  準佳作
24日 池袋昼    入船亭扇治   妾馬
29日 新宿昼    川柳川柳    ガーコン
     新宿夜    柳家小三治   青菜


◆2008年前半 寄席で聞いたゾ 佳作ネタ

■1月
9日 上野夜 柳家さん喬 ねずみ
14日 新宿夜 古今亭志ん五 不精床
15日 池袋昼 柳家喬太郎 夫婦に乾杯
     新宿夜 古今亭志ん橋 手紙無筆
16日 池袋夜 柳家喬太郎 擬宝珠 / 古今亭志ん輔 豊竹屋
18日 新宿夜 春風亭一朝 看板のピン

■2月
4日 池袋昼 柳亭市馬 高砂や
5日 池袋昼 入船亭扇辰 紋三郎稲荷
5日 池袋昼 柳家喬之助 締め込み
15日 池袋夜 三笑亭茶楽 品川心中 / 桂竹丸 特攻の母(?)
22日 池袋昼 柳家権太楼 試し酒
26日 池袋昼 入船亭扇遊 厩火事
27日 池袋昼 橘家文左衛門 手紙無筆 / 柳家権太楼 幽霊の辻

■3月
  4日 国立演芸場 桃月庵白酒 時そば
10日 上野夜   三遊亭歌武蔵 強情灸
29日 新宿夜   桂南なん 幇間腹 / 古今亭壽輔 ぜんざい公社

■4月
1日 上野夜   桂才紫 子ほめ / 入船亭扇遊 厩火事
4日 上野夜   入船亭扇遊 天狗裁き
5日 上野夜   古今亭菊志ん 湯屋番 / 柳亭市馬 粗忽の釘  橘家文左衛門 のめる / 林家正蔵 鼓ケ瀧
6日 上野夜   橘家文左衛門 道灌
12日 池袋昼   古今亭壽輔~三笑亭茶楽 文七元結リレー
※以降15日まで連続 / 春風亭柳之助 片棒 
13日 池袋昼   春風亭柳之助 片棒
26日 新宿夜   柳家小さん  長短

■5月
3日 上野昼   柳亭市馬 牛ほめ / 柳家さん喬 そば清  林家鉄平 堀の内
4日 上野昼   柳亭市馬 七段目 / 柳家さん喬 幾代餅(絶妙)
8日 浅草夜   古今亭菊志ん お花半七 / 古今亭志ん五 長短
20日 池袋昼   金原亭伯楽 夢の酒
27日 池袋昼   林家正蔵 蔵丁稚
     上野夜   柳家権太楼 長短
28日 上野夜   柳家権太楼 蜘蛛駕籠
30日 池袋昼   林家錦平 紀州 / 柳家禽太夫 夏泥
     新宿夜   柳家蝠丸 紀州 / 桂南なん のめる
31日 上野夜   古今亭菊生 権助魚 / 柳家権太楼 蜘蛛駕籠  三遊亭金馬 試し酒

■6月
1日 池袋夜   古今亭志ん橋 居酒屋 / 古今亭志ん五 火焔太鼓  春風亭柳朝 牛ほめ
8日 池袋夜   金原亭伯楽 お花半七
11日 新宿夜   桂南なん 松竹梅 / 桂米福 弥次郎
18日 新宿夜   三笑亭茶楽 持参金
19日 新宿夜   三笑亭茶楽 子は鎹
24日 池袋昼   柳亭左龍 浮世床
29日 新宿夜   柳家はん治 粗忽長屋 / 柳家小袁治 夢の酒  春風亭一朝 稽古屋


放送作家・石井徹也

投稿者 落語 : 16:27

大当たり「勧進帳」

大銀座落語祭の落語家「勧進帳」が予想以上の大出来、大当たりでとにかく面白かった。

正蔵、いっ平、小米朝というとにもかくにも知られている落語家三人で「勧進帳」を、という企画がまず大成功。「安宅新関」ではなく、長唄の「勧進帳」を大マジにやるというところがよかった。

一番よかったのは小米朝の富樫で、落語以上の?好成績。台詞回しがよかったし、読み上げで勧進帳をのぞき込むキマリなどが過剰なほどに「芝居がかって」いるのが面白く大喝采。 このひと、往年の市川崑「細雪」の若ボン役もよかったが、つまり役者体質なのであろう。

対する正蔵の弁慶は顔形がいい。眉も黒々と、男らしく、立派な弁慶役者。むろん玄人による化粧がされているとはいえ、それが顔にのるのも才能のひとつである。
花道の登場からカッチリと固くシリアスな弁慶をつくっているがどこか愛嬌があるところもいい。勧進帳の読み上げの後、客席から笑い声が起きたのはギャグではなく、ほっと息をついた弁慶につりこまれてのもので、体にある愛嬌のたまものと言えよう。台詞はやや難調ではあったが、男舞も幕切れの六法もしっかりしていた。

いっ平の義経は品があるところが長所。四天王や番卒もみなよかったが、なかでは一之輔がよかった。 これも小米朝と同様、芝居っけがプラスに作用している。

今回の勧進帳は長唄、三味線、囃子、舞台装置すべて歌舞伎と同じの特別版。
いわゆる鹿芝居と違って当て込みは無い。
だが、読み上げでのキマリや、義経を金剛杖で打擲するくだりは「結果的」に面白く大爆笑。狙った笑いよりも無論面白い。 詰めよりはで本当にギクシャク詰め寄ったので予想外の迫力があった。 (舞踊家ではない面々なのでとかく舞りになりがちな本職の勧進帳とはべつの「実」があったのも収穫である)
何よりも出演者の皆々の真剣さが、義経一行・関守一同の(物語に於ける)真剣さとダブり、感動を呼んだのだった。

以前、ある落語家さんから「鹿芝居は本来、誰でも知っている名人か売れっ子がやってこそ面白い」と言われたがその意味が今回よくわかった。「三津五郎の弁慶」を観に行くのと同じ意味で「正蔵の弁慶」を観に行くのだから(これが日本の芸能の特徴でもあるのだが)、それがたとえ巧い人でも見も知らぬ人ではこんなに盛り上がるはずもなかった。大向こうも大出来で、観客と舞台の気の交流がこれだけあったケースもめずらしい。

今回の「勧進帳」は過去5年間で見た大銀座落語祭の番組で一番面白かった。
それはなぜだろうか?

第一に、落語は演劇とは違って一人でやるものだから、たとえば「寺子屋」を播磨屋と高麗屋の顔合わせで、というような「顔合わせの面白さ」がじつは成立しにくい。

さらに、どんなにイベント性を高めても、落語は落語なので、たとえば落語家個人の独演会の高座よりも大銀座の高座のほうが必ずしも上質というふうにはなりにくい。

第二には「落語」の内容そのものが「祭り」と相反しているということ。ほかの先行芸能と違って落語には信仰(超越的な出来事を再現するという意味での信仰)の名残りがほとんど無いので、近代小説や近代劇と同じく、「祝祭的」にはなりにくい。落語をイベント化すればするほどどこか空しいのはそのためである。(唯一、襲名披露がお祭りになるのは故人の名前を継ぐという行為が、現代社会にはない呪術性、神秘性を持っているからである。二世落語家の存在が、技巧を越えて「なにか」があるように見えるのもここに関係している)

二世落語家三人による一世一代(再演はないという本来の意味で)の「勧進帳」が落語以上に面白かったのは快挙であり、その一方で「落語と祭り」の関係をはからずも照射してしまったとも言えるだろう。

松本尚久(放送作家)


http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20080721-OYT1T00553.htm?from=navr

投稿者 落語 : 16:19

2008年07月17日

浜松町かもめ亭 立川生志真打昇進披露会!

さる7月7日(月)、星祭りの晩に、「浜松町かもめ亭 立川生志真打昇進披露会」が文化放送メディアプラスホールで催されました。
当夜の番組は

『手紙無筆』        立川こはる
『三方一両損』       立川談春
『バールのようなもの』   立川志の輔
        仲入り
真打昇進披露口上   立川志の輔・立川談春・立川生志
『唐茄子屋政談』    立川生志

というものでした。
生志さんの真打披露公演は、この「かもめ亭」で八回目だったのですが、立川流の超売れっ子、志の輔さんと談春さんが助演する会は当会と博多公演だけとあって、前評判も上々。チケットは売り出し即完売と相成りました。たくさんのご来場、あつく御礼申し上げます。

披露公演のお約束である口上は高座に新真打・生志さんが着座し、その横に志の輔さん、談春さんが立って挨拶をするという特別バージョン(単に高座のスペースが狭いからそうしただけ)で、他の会にはない「なんでもあり」の雰囲気。立川流の秘話?も飛び出したりして大笑いでした。

続く生志さんの高座は大ネタ「唐茄子屋政談」。通しでの口演で、たっぷり50分はありました。
入門から20年のキャリアを経た生志さんですが、芸風はいい意味で若いです。
澱みや澱の無い、白き糸の如し持ち味が、お人好しな若旦那の人物像によく似合い、気持ちの良い「唐茄子屋」になりました。(詳細なレポートは「浜松町かもめ亭」サイトをご覧下さい

終演後はホール隣の会議室で恒例の打ち上げ。
出演者のみなさんや、立川流の顧問、野末陳平先生、吉川潮先生も参加してくださり、大いに盛り上がりました。談春さんの「お祝いの会ってのはいいね」という言葉が印象に残るあたたかい会になりました。

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打ち上げ風景・左から新真打、生志師匠 笹木美きえ師匠(かもめ亭お囃子) 長谷川さん(文化放送の落語好き制作者)

記・松本尚久 (浜松町かもめ亭)

投稿者 落語 : 12:06

2008年07月07日

浜松町かもめ亭「日向ひまわり真打昇進披露会」!

6月30日(月)、『浜松町かもめ亭』の第18回公演が、文化放送メディアプラスホールで開かれました。
今回は、このたび真打昇進をされた「日向ひまわり」さんの真打披露公演!
ひまわりさんの講談二席に、落語芸術協会の小柳枝さん、鯉昇さんが助演をしていただき、とてもおめでたい会となりました。

当日の番組です。

『三方原軍記』 日向ひまわり
『ちりとてちん』 瀧川鯉昇
『船徳』 春風亭小柳枝
         仲入り
『清水次郎長伝から
小政の生い立ち』  日向ひまわり

詳細なレポートは近く「浜松町かもめ亭」公式サイトにUPします

ご覧の通り、今回は前座さんナシで、ひまわりさんが開口一番とトリを勤めるという特別プログラムでした。
まずはじめに語られた「三方原軍記」は、戦国時代の合戦をモチーフにした時代物のひとつ。この噺のように戦の様子や武将の描写を張り扇にあわせ、独特のリズムで語るくだりは通称「修羅場読み」と呼ばれます。
昔は講談というと、この「修羅場読み」のリズム、口調が一般に膾炙していたものですが、近年は上演頻度が低くなり(そのぶん世話物的な噺、一席物が流行ります)かえって遠い出し物になっています。
が、ひまわりさんも高座で言ってたとおり、講釈師の基礎技術はこの「修羅場読み」によって磨かれるものであるところから、高座に出すかどうかは別にして、いまでも玄人にとって重要な演目になっています。
ひまわりさんも家での稽古でこの「三方原」を読むことはあるものの(修羅場読みを稽古すると口が廻るようになるそうです)実際の高座で演じるのは数年ぶりだったそうです。
「先代山陽に入門してはじめて稽古したのがこの三方原でした」と仰っていたひまわりさんの、いわば原点とも言えるこの高座。現代人にとってはちょっと難しいのですが、貴重で、なおかつ意義のあったものだと思います。
(数多いひまわりファンからも「三方原は初めて聴いた」という声をいただきました)

トリの一席は「清水次郎長伝から小政の生い立ち」。
子供時代の小政が、清水港の親分次郎長に出会い、その門人に身を寄せるまでのエピソードです。
「野狐三次」などでもぴったりはまる、ひまわりさんの子供キャラの可愛さ、純真さ、生意気さが横溢し楽しい高座になりました。

最後には、小柳枝師匠、鯉昇師匠が高座に登場し、新真打ちの門出を祝し三本締めでお開きとなりました。
「浜松町かもめ亭」としては、はじめての真打昇進披露会。
みなさまのご来場を厚く感謝いたします!


写真・打ち上げにて
左から小柳枝師匠、ひまわりさん、美きえ師匠(かもめ亭下座)、鯉昇師匠。

20080630kamomeminasan.JPG


記・松本尚久 (放送作家)

投稿者 落語 : 10:49