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2007年05月14日
242席収録の落語CDボックス
先月の話になるが、NHK、日本レコード協会、日本伝統文化振興財団などが共同でSPレコードの音源をデジタル化して保存する協議会「歴史的音盤アーカイブ推進協議会」を発足させた。有意義なことだと思う。
http://www.asahi.com/digital/bcnnews/BCN200704270023.html
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20070427/hirac.htm
レコード盤の歴史は20世紀の幕開けと同時にはじまった。(レコード盤の原理そのものは19世紀末に発明されていたが、実用化され始めたのは1900年代はじめ) レコード盤の規格は78回転のSP盤から、戦後のLP盤、EP盤へと変化し、現在のCDにとってかわられた。SP盤規格とLP盤(EP盤)規格が世代交代をしたのが1950年代。つまり、レコード盤の歴史を見れば、SP盤時代がおよそ半世紀、LP盤(EP盤)時代が半世紀弱(80年代からCDが出てきたため)で、レコード盤=SP盤だった時代のほうがじつは長かったのである。
しかし、今日、SP盤の音源はそのごく一部しかデジタル化されていない。
当コラムの話題に即していて言えば、かつて膨大な数の落語、講談、浪花節のSP盤レコードが世に出されていたにもかかわらず、現在、正規のルートで入手できるものはほとんど無かった。
(例外的に、初代春團治や初代三亀松のSP盤レコードはCDの現役品目にもあり、長寿を誇っている。またラジオ番組ではNHK「ラジオ深夜便」がSP盤音源の演芸をある程度オンエアしている)
そんななか、(株)日本音声保存から、巨大なCDボックス「昭和戦前面白落語全集」の東京編と上方編がリリースされた!
このボックスはスゴイ。
CDの枚数で言うと、東京編16枚、上方編8枚。
収録された落語の数は東西合わせて242席!
これは演芸レコードコレクターとして名高い都家歌六師、岡田則夫氏のコレクションを中心に現存するSP盤レコード4000枚の中からセレクションされたものである。
http://www.onsei.co.jp/rakugo/sp/tokyo.htm
http://www.onsei.co.jp/rakugo/sp/kamigata.htm
http://www.asahi.com/culture/stage/rakugo/TKY200611170265.html
収録されている落語家は、東京編で言うと初代権太楼、七代目正蔵(現正蔵の祖父)、四代目小さん、三代目圓馬、金語楼、八世文治・・・そして志ん生、八代目文楽、三代目金馬らのSP盤音源が収められている。
上方編では初代春團治や五代目松鶴が聴けるのはもちろん、二代目花橘、二代目三木助など通常の商業ルートには出にくい演者も入っている。
定価は東京篇2万5200円、上方篇1万2600円。高額ではあるが、242席の貴重な録音が入手できると考えれば安いものだ。(現に、音源所有者の歌六師や岡田氏はSP盤レコードを求めて全国の古道具屋、古物市を放浪したのである。http://nad.nikkeibp.co.jp/Pleasure/200401/)
それにしてもいまから100年以上前の快楽亭ブラックの噺を聴くと、すでに「近頃は世の中が変わってきまして」みたいなことを言っているのがおかしい。
今後、講談、浪花節、歌舞伎のSP盤デジタル化をぜひとも望みたい。
松本尚久
投稿者 落語 : 2007年05月14日 00:58