2011年08月22日
ツーシームとシュートの違い
ダルビッシュの投げる“ツーシーム”は
ほとんどシュートのような軌道です。
だから、彼が先発した開幕戦で
僕の隣りに座っていた清原和博さんに
「ツーシームとシュートってどう違うんですか?」と伺いました。
答えは、こんな感じでした。
ツーシームだと
ボールの縫い目が
見えるんですよ ( ̄ー+ ̄)
・・・凄いっ!まさに想像を超える世界です。
そのようなものを判別できる能力を備えたスーパースターの言葉に
僕は、嘆息を漏らすしかありませんでした( ̄◇ ̄;)
しかし、時が経つにつれて・・・
なぜ、シュートでは縫い目が見えないのだろうか?
・・・という新たな疑問が頭の中で湧き上がって来たのです。
僕が西武ドームで楽天イーグルスの
ベンチサイドリポートを仰せつかった日に
旧知の仲である松井稼頭央選手へ、清原さんの話を聞いてもらうと・・・
それ、僕も分かるね。
・・・と即答。
またここにもスーパースターが一人いた!と興奮する僕に
松井選手は、ツーシームの使い手が居並ぶ
メジャーリーグで揉まれた経験から
ゆっくりと言葉を紡いでくれました。
まず、シーム(seam)は“縫い目”という意味です。
真っ直ぐな軌道を描きながらキャッチャーミットに収まるストレートは
アメリカで「フォーシーム・ファストボール」と表現されます。
ボールが縦に1回転するうちに、横に向いた「4つの縫い目」が
「等間隔」で現れるため、空気中で受ける抵抗は
規則的なものになり、ボールは直進するのです。
そこで、ツーシーム。
正式名称は「ツーシーム・ファストボール」。
人差し指と中指で、それぞれ縫い目を覆うようにボールを握り
ストレートを投げる要領でそのまま腕を振れば
右投手の場合、右打者のインコースに食い込む軌道を描きます。
ボールが縦に1回転するうちに、横に向いた「2つの縫い目」が
「不規則」に現れるため、空気抵抗も不規則になるのです。
『縫い目・縫い目・縫い目・縫い目』と回転すれば、素直なストレート。
『縫い目・縫い目・・・・・・・・・・縫い目・縫い目』となると、ツーシーム。
こういった前提を踏まえた上で、以下、松井稼頭央選手の説明です。
シュートは、フォーシームの回転で打者の懐へ向かっていく球。
ツーシームは、空気抵抗を不規則に受けるため
ボールの回転が『重力』に負けてしまい
手元で“スッ・・・”と落ちる球。
だから、シュートよりもボールの回転数が少ない。
初速が同じ140キロでも、終速はツーシームの方が遅いから
縫い目が見えたりすることもある。
バットを振りに行った時、少しだけ落ちる分
ツーシームはボールの上っ面を叩きがちなので
内野ゴロを打たせたい状況では極めて有効な変化球。
「ストレートだ!」「シュートだ!」と思ってスイングを始めても
ツーシームは終速が遅いので
ほんの少しだけタイミングをずらされてしまい
どうしてもボールを捉えるポイントが前になってしまう。
ツーシームを狙うなら
通常のスイングよりも“引きつけて打つ”イメージ。
非の打ちどころが見当たらない説明を受けた僕は
この時、人生で一番ポカーンとしていたような気がします(°∇°;)
もう迷いません。
ツーシームとシュートの違いは僅かではありますが、歴然です!
投稿者 斉藤一美 : 2011年08月22日 12:35