2006年09月09日
ザ・監督
東北楽天ゴールデンイーグルスの野村克也監督が
一言、何か口にするだけで
人はすぐに“ぼやき”という言葉で一括りにしがちです。
ぼやく・・(中部・近畿・四国方言)ぶつぶつ不平を言う
【第六版・新明解国語辞典】
京都出身の方なので、この表現はまさにドンピシャ。
でも、実は「不平」ばかりでもありません。
先日、インボイスSEIBUドームの3塁側ベンチで
70分間たっぷりと(要は、楽天の練習時間中ずっと)
《ノムさんの独り言》に耳を傾けて、実感しました。
この方の話は、勉強になるということを。
野球の専門的な話はもちろん
そこから派生する人生論は、特にうなずけます。
『今の時代、努力するという環境が失われている。
貧しい、苦しい、を知らずに育っている選手が多いからだ。
なぁ、二軍に落ちたら年俸100万円ってのはどうだ?
・・・・そうか、さすがにキツイか。
じゃあ、せめて月30万。
年俸360万円でファームの選手は頑張れ!
これぐらい格差をつけて、初めて死に物狂いになれるんだ。
寮も、昔のように一・二軍で分けなきゃダメ。
もっとハングリー精神を煽るべきだよ。
・・・・でも、それじゃ若い人は来たがらないのか( ´△`)
当たり前のことを当たり前にやってこそ、プロ。
その“当たり前”は、厳しさの中でこそ身につくのにな。
とにかく、このチームに残したいものは、ただ一つ。
『努力をする』という環境なんだよ。
昔の巨人は、王・長嶋がモノ凄い量の練習をこなしていたから
他の選手も「やらなきゃ!」となって、V9につながったワケだ。
銀座のクラブで、王と鉢合わせたことがあった。
お互い別のテーブルで飲んでいたんだけど
しばらくして、王が近づいてきて
「ノムさん、すいません。お先に失礼します」って言うから
何か用があるんか、と訊いたら
王は「荒川さんを待たせているんです」と答えたんだよ。
こんな夜中にまだ練習するのか!と思い知らされた時
あぁ、いつか王にホームラン記録を抜かれる、と確信したな。
でも、その後オレはまだクラブで飲んでたけど(* ̄∇ ̄*)
鑑(かがみ)だな・・・・いい鑑が欲しいよ・・・・』
試合は、西武に完敗でした。で、試合後。
『・・・・・・・・・・何か美味しいもんないかな・・・・・・・・・・』
と切りだした野村監督はゆ~っくりと辺りを見渡して
テーブルに残っていたケータリングのぶどうを見つけると
2粒つまんでモグモグと口を動かしながら仏頂面で、一言。
『どうぞ~』
これは「質問をどうぞ~」ということらしいのです。
万物を超越した存在感に圧倒されました・・・。
ぶどうを食べる姿がこんなに怖い人を僕は知りません。
僕は何も言えず、ただただひたすらそこに立ちすくみ
無心でボールペンを走らせていただけでした(_ _;)/~~~~"
『覇気とか執念とか全く感じない。初回から頭に来とったよ』って
静かに語るものだから、余計に心に響きます。
たぶん、選手から見ればとっつきにくい存在でしょう。
周囲からもあることないこと言われています。
でも、それは傑出した大人物だからこそ。
選手達が、このザ・監督の懐に
決死の覚悟で飛び込んでいけば
楽天イーグルスは変貌を遂げるはずです。
ライオンズをこよなく愛する者として
ちょっとだけ、末恐ろしい・・と思った秋の夜長でした( ̄~ ̄;)
投稿者 斉藤一美 : 2006年09月09日 23:56