2006年04月07日
千住のサイン
目下、野球漬けの日々を送っています。
僕も、いわゆるスポーツアナウンサーの一人として
この時期は“野球まっしぐら”にならざるをえないのです。
それも毎年のことになってくると
マンネリと化してしまうのは、どの仕事も一緒。
いつも自分の尻を叩いて取り組んでいても
気がつくと楽な道を選んでいた、なんてことはザラにあります。
ところが、今年は、何かが違うんですよ。
世界一であることが証明された日本のプロ野球を
半年間取材する立場にいることに
新たな誇りと喜びを感じているから、なのかもしれません。
今シーズンのライオンズナイターを聴いた方々が
「一美の放送は、良い方向に向いている」と
少しでも感じて下さるようであれば
それは紛れもない“WBC効果”です。
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こんな、野球、野球で占められた頭の中が
久々にゆっくりとほぐされていくのが分かりました。
念願叶い、ついに
千住真理子のヴァイオリン・リサイタルに
行くことが出来たのです!
1冊の本を読んだことがきっかけで
千住ファミリーの生き様に魅せられた僕は
(お時間があれば、1月10日付ブログをチェック!)
その、運命のストラディバリウス“デュランティ”とやらが醸す音を
絶対に、生で聴かなければ気が済みませんでした。
名器に選ばれしソリスト・千住真理子が奏でる世界は
寸分の曇りもない清らかさに溢れていました。
それでいて・・・低音だけは妙に艶かしい。妙に。
同じ曲を彼女のCDで何度聴いても気づかなかったのに!
しかし、これこそが
『マイクはない代わり、空気の震えを体全体で感じ取れる』(本人談)
というクラシックのライブの醍醐味だったのです。
それにしても『まるで生きているようだ』と表現される
デュランティの“魅力”は、きっと【魔力】にも通じています。
名器たるもの、妖器なのです。
それをサラッと聴かせてしまう千住真理子に
すっかり脱帽の90分間でした。
毎日、午前2時まで練習を欠かさない徹底したプロ意識が生んだ
あの上腕二頭筋を見るだけでも、十分に価値はあります。
しかも・・・
『これからお送りするパガニーニの“ラ・カンパネラ”。
彼はあまりにも天才だったので
《本当は人間ではないのでは?》と疑われ
外出の際は“人間証明書”を持たされていたほどです』
・・・とか・・・
『ドヴォルザークは大の汽車好き。
お聴き頂く名曲“ユーモレスク”は
汽車に乗っていた時のリズムから思いついたそうです』
・・・といった音楽トリビアも
鈴を響かせたような美しい声で披露してくれました。
12才のプロデビューから30年。
天才少女と呼ばれたがゆえの賞賛と嫉妬を受け止めながら
あらゆる節目に彼女が弾いてきたのが、バッハ。
バッハで幕を開け
バッハでフィナーレを迎えた構成に胸が熱くなりました。
終演後、思わずサイン会の列に並んでしまったほどです。
CDにサインしてもらったのは久しぶりです。
12年前のこの喜びが、違う形で甦ってきました。
かなり貴重でしょ?
投稿者 斉藤一美 : 2006年04月07日 17:50