2006年03月04日
ドラえもんの呪縛
春休みロードショーの先陣を切って
『ドラえもん・のび太の恐竜2006』が
今日、ついに公開されます。
「な~んだ、ドラえもんか」と思った方。
あなたは、僕とほとんど同じ人間です。
「え!ドラえもんシリーズの最高傑作がリメイクされたの?」
「うわ~っ、なつかしいなぁ!
生まれて初めて観た映画が『のび太の恐竜』なんだよ」
と反応された方。
僕は、あなたが心底うらやましい。
リアルタイムでこの映画をみていれば
もうちょっと違う子供時代を過ごせていたかもしれないからです。
人への思いやりに満ちた、より素晴らしい子供時代を。
お父さんの仕事の関係で手に入れた
ティラノサウルスの爪の化石を自慢するスネ夫。
ジャイアンとしずかちゃんには見せるのに
のび太にはちゃんと見せません。
腹立ちまぎれにのび太の口から出た言葉は
「爪ぐらいで騒ぐな!
僕は恐竜丸ごとの化石を発掘してみせる!!」
というとんでもないものでした。
激しく後悔するのび太。
それでも、ひょんなことから卵型の特大の石を見つけると
「恐竜の卵の化石だ!」と小躍りします。
ここで、ドラえもんの出番。
「何をバカなことを・・・ただの石だよぉ」とか言ってグチりながらも
さりげなく、部屋の外にタイムふろしきを置く絶妙なアシスト。
で、孵化させてみると、恐竜が生まれているわけでして。
のび太の大冒険の始まり、始まり~・・・ってな感じなんです。
原作の藤子・F・不二雄によると
『野生のエルザ』を読んだ時の感動をドラえもんの世界で再現しよう、と
意気込んで描き上げたわずか25ページの短編が
この『のび太の恐竜』なのだそうです。
TVアニメ化→映画化は自然の流れでしたが
ドラえもんに長編はなかったので
後日談を加えて劇場公開したのが1980年。
それから、声優陣が一斉に交代するまで
四半世紀にわたって続くドラえもんシリーズの
記念すべき第1作となりました。
当時、僕は小学校を卒業したばかり。
リバイバルされた『あしたのジョー』に心酔していて
“メルヘンチックなアニメ”を意識的に遠ざけていた時期でした。
『ドラえもん』は、何となく、そのグループに入ってしまったのです。
中2で、再放送の『キャンディ・キャンディ』にハマったくせに、全く。
1作目を観ていないと、2作目も観ない、という妙なこだわりも邪魔して
生まれてこの方、ドラえもんシリーズとは無縁な生活を送ってきました。
ところが、おととし、息子の小学校の友達家族に誘われて
25作目『ワンニャン時空伝』を観に行くと
笑い・スリル・涙の“面白映画・3つの条件”を
全て兼ね備えているので、仰天。
よし、来年も!と意気込んだら
大山のぶ代の声で
再来年、また会おうねぇだって。
声優陣・若返り計画のあおりを受けて、出端をくじかれた形でした。
半ばスネたように、テレビの新シリーズも一切無視していたのに
映画を観て、また後悔!
今の声優の方々も、完全にキャラクターに溶け込んでいたのです。
個人的には、ジャイアンがピカイチ。
映画になると、彼はナイスガイに変身しますが
今回も、情に厚い、最高に頼れる男として、グループを引っ張ります。
この難役を、15才(木村昴。ドイツ人とのハーフ!)が
吹き替えているとは、ホントに驚きです。
71才・たてかべ和也から56才の若返りは、大成功ですよ。
もちろん、ドラえもん役の水田わさびも◎。
降りかかるトラブルにあたふたしながらも
のび太を温かい目(ここで観客は100%大爆笑)で見守るるさまが
ちょっと不思議な声と絶妙にフィットしています。
まだ、ドラえもんの映画は・・・というあなた。
ぜひ一度、ご覧あそばせ。
この『のび太の恐竜』に触れたスティーブン・スピルバーグが
のちに『E.T.』『ジュラシック・パーク』を撮った理由が分かります。
それほどまでに、大人の鑑賞に堪えうるものなのです。
試写会後、近くのファミレスへ入ると、注文を取りに来たウェイトレスが
僕がテーブルに置いたパンフレットを見つけ、話しかけてきました。
「ドラえもん、ご覧になったんですか?
私“のび太の友人A”役で出演しました!」
何たる偶然。そこでまた、一盛り上がり。
この国で暮らす限り、ドラえもんからは逃れられないのです、たぶん。
投稿者 斉藤一美 : 2006年03月04日 03:22