2006年07月06日
自力V消滅
素晴らしい投手戦に水を差す「珍ジャッジ」だった。
巨人パウエル、中日は5連続完投勝利中の佐藤充の先発で、
両チームともボールがまともにバットに当たらず、あっという間に中盤を迎えていた。
6回裏1アウトからパウエルにヒットが出ると、ようやく巨人打線が活気づき、
1番川中もヒットで続いて1,2塁。
2番小坂はセンター後方へのフライを打ち上げる。
センターの荒木が落下点に入り、捕球態勢を取ると、2塁ランナーパウエルも
タッチアップの構え。
バックネット裏の放送席でその様子を見ていた私は思わず「早いっ!!」と
叫んでしまった。
進塁を焦ったパウエルが、荒木の捕球より明らかに早くスタートを切ってしまったのだ。
そのタイミングは、WBCで西岡が状態だけスタートを切ったのよりもさらに早かった。
そしてもちろん足も動いていた。
この走塁ミスを見逃すまいと、中日セカンドの森野が、3塁送球をあきらめた
カットマンのショート井端に返球を促す。
ボールを受け取るとセカンドベースを踏んでアピールのために顔を上げた。
その瞬間、上げた森野の顔が唖然として止まった。アピールすべき審判がいないのだ!
どうしていいか分からない森野は改めてセカンドベースを踏む。
と、その時、サードの渡辺が、パウエルの3塁でのジャッジをするために
走り込んできていた名幸2塁塁審に気づきアピール。
名幸塁審はなんと、自信なさげに両手を広げパウエルのタッチアップを正規なものと
認めたのだ。
ところがリプレーを見ると、名幸塁審は、パウエルのタッチアップを見越して
荒木の捕球前に3塁に向けてスタートを切っており、
荒木の捕球は確認しているものの、その時セカンドベースはすでに彼の後方になって
しまっていたためにパウエルのタッチアップを確認するのは不可能と思えた。
ただ、この場合、3塁の杉永塁審は打球を追って荒木の捕球を確認する役割のため
(実際にはほとんど動かずに荒木の捕球を確認していたためサードベースのすぐ近くにい
たが・・・)
ランナーの確認のために名幸塁審がサードベースをフォローするのは当然の判断。
とすると、誰がパウエルのタッチアップを確認するのか。
これは基本的な審判のフォーメーションで、役割は決まっているはずだし、
決まっていないならそれは事前に確認されているはず。
それなしにあいまいな判定をされたから、冷静な落合監督も怒った怒った。
目元は穏やかなままだったものの、口調は厳しく、激しかった。
ついには選手を全員ベンチに引き上げさせ、3塁ベンチ前での猛抗議は15分に及んだ。
ここでついに審判団は落合監督に退場処分を下す。
この判断は試合進行を司る審判としては正しい判断だろう。
だが、原監督までが「自分が言うことじゃないけど」と前置きした上で
「審判の判断の仕方がいい判断をしているとは思えないよね」と言うほど、
ミスジャッジとも言えないような審判団の凡プレーだったと思えてならない。
ただ、こんなラッキーも今の巨人は力に変えられない。
2アウト1,3塁とチャンスを広げてもらいながら二岡が三振で結局0点。
7回にようやく阿部がワンバウンドしそうなボールに食らいついてタイムリーヒットを
放ち1点を先制しても、8回に登板した新セットアッパー高橋尚が自滅する。
それも、ノーアウト1塁をゲッツーで助けてもらいながらだ。
2アウトランナーなくなってからフォアボールにヒットでノックアウト。
緊急リリーフした西村が2アウト満塁としてウッズに逆転タイムリーを打たれて
万事休す。
序盤の好ゲームがどこかに消えてしまったようなドタバタで逆転負けを喫し、
ついに自力V消滅。
原監督の「それを考えるより、我々はもっと戦わなければいけないところがある」という
言葉がむなしく、意味深に響いた。
上野智広
東京ドームの正面ゲート付近に掲げられた
長嶋茂雄さんへのファンからのメッセージが書かれた巨大ユニフォーム
投稿者 文化放送スポーツ部 : 2006年07月06日 00:44