1月5日(金) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「花ニアラシノタトヘモアルゾ サヨナラダケガ人生ダ」 井伏鱒二
実は中国、唐の時代の詩人、于武陵(うぶりょう)という方の、「酒を勧める」と書いて「勧酒」という漢詩の、井伏鱒二さん流の訳詞なのです。ご紹介します。
「コノサカヅキヲ 受ケテクレ
ドウゾナミナミ ツガシテオクレ
ハナニアラシノ タトヘモアルゾ
『サヨナラ』ダケガ 人生ダ」
◇本日の曲◇
「長い夜/シカゴ」
1970年(昭和45年)大阪万博の年の大ヒット、「長い夜(25 or 6 to 4)」は、シカゴの名曲中の名曲です。
投稿者 joqr : 12:00
1月4日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「思えば遠く来たもんだ
この先まだまだいつまでか 生きてゆくのであろうけど」 中原中也
フォーク、ニューミュージックのアーティストたちに大きな影響を与えたことでも知られる詩人、中原中也の有名な詩「頑是(がんぜ)ない歌」の一節。海援隊のヒット曲に、この一節をほとんどそのままタイトルにした「思えば遠くへ来たもんだ」があります。
1907年(明治40年)に生まれた中原中也の生前に出た詩集はわずか一冊。そしてもう一冊の清書を終えた後、出版を見ることなく、1937年(昭和12年)、わずか30歳の若さで、結核性脳膜炎のためこの世を去っていますが、このほかにも「汚れちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる」など、有名なフレーズをたくさん残しています。それでは、この「頑是ない歌」の一部をご紹介します。
「思えば遠く来たもんだ 十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた 汽笛の湯気は今いづこ
雲の間に月はいて それな汽笛を耳にすると
竦然(しようぜん)として身をすくめ 月はその時空にいた
それから何年経つことか 汽笛の湯気を茫然と
眼で追い悲しくなっていた あの頃の俺は今いづこ
今では女房子供もち 思えば遠く来たもんだ
この先まだまだいつまでか 生きてゆくのであろうけど」
◇本日の曲◇
「追憶の日々/シカゴ」
1975年(昭和50年)のヒット、シカゴの「追憶の日々(OLD DAYS)」は、楽しかった子供の頃の思い出を歌っています。
投稿者 joqr : 12:00
1月1日(月) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「新年とは年を新しくすることではなく、自分の心を新しく持ち直すことなのだ」 大仏次郎
昭和に活躍した文学者、大仏次郎のことば、元日に聞いてみると、本当に、しみじみと味わいがあります。さて、昔、お正月にはもう一つの意味がありました。それは、全員一斉に、ひとつ、年を取ること。小さい頃、お年寄りに年を聞かれて、「数え? 満?」と聞き返され、訳がわからなくなった思い出がありますが、かつて日本人の公式の年の数え方は「数え年」でした。
これは、生まれたときが既に「1歳」。そして、それからお正月が来るたび1つずつ年を取る。ですから、大晦日に生まれたら、翌日もう「2歳」。これが公式に「満年齢」へと変わったのが、1949年(昭和24年)のことですから、この言葉には、まだまだそんな「年を取る」という感覚も込められていたように思います。一休禅師の有名な歌に「門松は 冥土の旅の一里塚めでたくもあり めでたくもなし」がありますが、そうやって今日、全員一斉に年をとっていた時代のことばだと思うと、これもグッとくるものがあります。
◇本日の曲◇
「ビギニングス/シカゴ」
1971年(昭和46年)のヒット、シカゴの「ビギニングス」は、恋の始まりのドキドキ感をずっと持ち続けていたいと歌う、新しい年の始まりにふさわしい曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月29日(金) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「楽しみに、また道楽にお酒を飲むなど、とんでもない不心得である。
お酒というものは、
あるいはお酒を飲むということは、そんなどうでもいい話ではない」 内田百閒
先日特集しました、内田百閒先生の言葉、お酒特集、そして今年の音楽温泉の締めくくりにも、ご登場いただきました。この方も、本当にお酒が好きでした。お酒に関する名言を、もう一つご紹介します。
「昨夜、気分進まず飲み残した一合の酒を、一升瓶のまま持ち回った。
これだけはいくら手がふさがっていても捨てていくわけにいかない。」
ふむふむ、なるほど…と思いますが、シチュエーションを聞くとびっくりします。実はこの言葉、空襲で焼け出された時のものなのです。空襲に遭い…若い方のために付け加えておきますが、これは今から61年前、アメリカと戦争していたとき、アメリカの飛行機が空から東京をバンバン爆撃しまして、何十万人もの方が亡くなられた時のお話です。命からがら逃げ出す、普通は財布ですとか、通帳ですとか、そんな大切なものを持って行きますね。しかしそこは酒のみの百閒先生ですから、「どんなに手がふさがっていても」
一升瓶だけは手放せない。正に、酒のみの鏡です。
「昨夜、気分進まず飲み残した一合の酒を、一升瓶のまま持ち回った。
これだけはいくら手がふさがっていても捨てていくわけにいかない。」
◇本日の曲◇
「喜びの世界/スリー・ドッグ・ナイト」
スリー・ドッグ・ナイトの「喜びの世界」は、おいしそうなお酒が登場する曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月28日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「酒が敵(かたき)であったわいなア。」 近松門左衛門
近松門左衛門の名作で、「三大姦通もの」と呼ばれる、今風に言えば「不倫」を描いた悲劇の傑作、「堀川 波の鼓」に登場する有名な台詞です。
鳥取藩士の彦九郎とお種は、幼なじみからそのまま夫婦になった、仲睦まじいカップル。二人はとても幸せに暮らしていました。ところが、武士には「参勤交替」があります。江戸詰の間は、夫婦離れ離れで暮らさなければなりません。当然、奥さんの寂しさは募る。ある日、この奥さんが夫の同僚に言い寄られる。
その様子を、鼓のお師匠さんに聞かれてしまった。もちろん、言い寄られただけで何もなかったのですが、奥さんとしては、なんとなくバツが悪い。「誰にも言わないでくださいね…」と、鼓のお師匠さんにお酒を勧める。奥さん、自分も嫌いな方ではないのでクイクイと、酔いが回るにつれ、一人暮らしの寂しさもあって、ついつい一夜の過ちを犯してしまいます。
今ならよくある話…と言えるかもしれませんが、当時は「不義密通」は大きな罪、結局奥さんはこの一件が夫に露見し、夫の手で殺されてしまうという悲劇が起きるのですが、そんな奥さんが取り返しのつかないことをしてしまった…と嘆くセリフです。
◇本日の曲◇
「酒と泪と男と女/河島英五」
河島英五の「酒と泪と男と女」は、お酒を歌った名曲中の名曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月27日(水) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「酒の飲めない人は本当に気の毒だと思う。
私からするならば、人生を半分しか生きていないような感じがする。」 山口 瞳
この方もお酒好きとして有名でした、高度成長期から平成の始めにかけ活躍された作家、エッセイストの山口瞳さん。早いもので、亡くなられてからもう十年以上の月日が流れました。サントリーの社員として、PR誌「洋酒天国」の編集に携わったり、コピーライターとして活躍。「トリスを飲んでハワイへ行こう!」という名文句は、今でも覚えていらっしゃる方が多いことでしょう。作家として独立しますが、その後も長年、毎年成人の日になると、古巣・サントリーの広告で、「お酒の飲み方」に関するエッセイを発表していたのが懐かしく思い出されます。山口さんのお酒の名言をもう一つご紹介しましょう。
「私は、酒場で、水割りですかときかれたときには
『酒を水で割って飲むほど貧乏しちゃいねえや』と叫ぶことにしている。」
この言葉からは、本当の酒のみの気迫がヒシヒシと伝わってくるような気がします。
◇本日の曲◇
「スウィート・メモリーズ/松田聖子」
松田聖子の「スウィート・メモリーズ」は、山口瞳さんの古巣、サントリーのCMに使われ、大ヒットした曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月26日(火) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「かたはらいたきもの…思う人のいたく酔いて、おなじことしたる。」 清少納言
かの有名な清少納言の枕草子の一節です。皆さん、なんとなく意味はおわかりでしょうが、
一応、解説しておきます。
「かたはらいたきもの」
時代劇で「片腹痛いわ、ぐっふっふ」といった台詞をよく耳にします。これは「おかしくてたまらない、笑止千万である」という意味なのだそうですが、こちらの清少納言の場合は、「そばで見ていて気がかり、耐えられない」ということ。
「思う人のいたく酔いて、おなじことしたる」
愛する男が、ひどく酔っ払っちゃって、おんなじことばかり言ってる…という意味です。つまり、続けて現代語に訳してみますと、
「大好きな彼なんだけど、酔っ払ってずーっと同じことばっか言ってんの、
みっともなくってイヤになっちゃう!」
と、まあ、こういう感じになりますでしょうか。
酒好きな男性側からいいますと、好きな女性と差し向かいで飲むというのは最高に楽しい時間です。あんまり楽しいから、ついつい沢山のんで酔っ払っちゃう。そして、けっこう、これが原因になって、女性にサジを投げられてしまったりなんかするわけで。ああ、もうこんな失敗は繰り返さないようにしよう…と思ったところでどうしようもないのが酒のみの悲しさですね。
◇本日の曲◇
「赤ちょうちん/かぐや姫」
かぐや姫の「赤ちょうちん」は、酒を歌った70年代の名曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月25日(月) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「酒はいいものだ。 実においしくって。 毒の中では一番いいものだ」 葛西善蔵
1887年(明治20年)、青森に生まれた文学者、葛西善蔵。鉄道の車掌、営林署の所員、砂金掘りなどの職業を転々とし、21歳で結婚したものの、小説家を志し、単身上京。そこはかとないユーモア溢れる作風で人気作家となりますが、もともと肺結核を病んでいた上に、とにかく酒を飲んで飲んで飲みまくっていたため体調を崩し、わずか41歳の若さでこの世を去っています。戒名が「芸術院善巧酒仙居士」というものだそうで、「酒仙」を辞書を引きますと「俗事を超越して酒を楽しむ人」、まさにそんな人生だったようです。
飲み始めたのが10歳のとき、そしてその酒飲みは、実に臨終の日まで続いたといいます。善蔵が13の年の春、桜の盛りに、大好きだったお祖父さんが亡くなりました。家族は、死に目に合わせてやろうと、善蔵を探すがどこにもいない。ようやく探し当てられたとき、彼はすっかり空になったヒョウタンを傍らに置き、満開の桜の下で、気持ちよさそうに眠っていた…というエピソードが残っている程です。
◇本日の曲◇
「旅の宿/吉田拓郎」
吉田拓郎の「旅の宿」は、こんなお酒を飲んでみたい…と思わせる名曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月22日(金) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「交通機関が便利になる程、
どこかへ出掛けなければならない用事が出来る」 内田百閒
確かに、その通りです。高速道路や新幹線、そして飛行機。いまはこういう物が便利になり過ぎていますから、昔だったらあり得ない出張もどんどん出来てしまいます。金曜日の放送が終わったら、すぐ東京を出発して、日本のあちこちを取材して日曜の夜に戻ってきて、そして月曜の早朝にはまたスタジオ入り。こんなことは、大量輸送機関のなかった江戸時代には、まったくあり得ない企画だったでしょう。ちなみにこの百閒先生の台詞は、1938年(昭和13年)のもので、当時既に、こういう慌ただしい日常が現実のものとなりつつあったんでしょう。
しかし、だからといって百閒先生が、旅が嫌いだったかといえば、さにあらず。汽車に乗るのは何よりも好きで、「何も用事がないけれど 汽車に乗って大阪へ行ってこようと思う」と、名作エッセイ「阿房列車(あほうれっしゃ)」シリーズを書き残しています。このシリーズの中から、いかにも音楽好きらしい名言をもう一つご紹介します。
「大きな、とんでもない大きなソナタを、 この急行列車が走りながら演奏している。
線路が東京から新潟にまたがる巨大な楽器の絃である」
列車好きな方なら頷かれることでしょう。
◇本日の曲◇
「トレイン/1910フルーツガムカンパニー」
投稿者 joqr : 12:00
12月21日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「エロというものは 隠すことだ」 内田百閒
こちらは「男女」にまつわる名言です。
1991年(平成3年)、かの篠山紀信撮影の樋口可南子写真集「ウォーターフルーツ」によって、実質的にヘアヌードが解禁になって以来、日本のエロ事情は完全に「開けっぴろげ」時代に突入。インターネットに接続すれば、海の向こうから、モザイクも何もない画像がいくらでも飛んで来る、恐ろしい世の中になっています。しかし、ここまで来てしまうと、逆に、いささかゲンナリしてしまうこともあります。この言葉には続きがありますのでご紹介します。
「エロといふものは隠すことだ。出してしまっちゃ色気はない。めくるんだね」
最後の、ポツリと一言「めくるんだね」…いいですねー。めくりたいですねー。
◇本日の曲◇
「セーラー服を脱がさないで/おニャン子クラブ」
おニャン子クラブの「セーラー服を脱がさないで」は、1985年(昭和60年)の衝撃的なヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月20日(水) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「社会に出て役に立たぬことを学校で講義するところに、学校の意味がある」 内田百閒
学校や勉強に関する名言をお送りします。
「こんなこと習っても、社会では何の役にも立たない」よく学生さんはそう云って、勉強をサボります。また、経済界などからよく聞かれる声に、「学校に十何年行っても、英語が話せないのは何事だ!」…というのがあります。
しかし、それでいいじゃないか。学校とは、そういうものだ…というのが、百閒のこの言葉。学校に過大な期待をしてはいけない、役に立つことを覚えたいのなら、自分で学べ。先生は、こんな風におっしゃっているように思います。親になって子供を学校に通わせる身になると、学校に行きさえすれば、きちんと知識は身に付く…と、ついつい思ってしまいがちですが、そんなことはありません。自分の通ってきた道を考えれば、すぐ、わかります。それよりも、いい友達をこしらえる。思い切り体を動かす。そして、恋をする。そんなことが、学校の一番大切な所ではないでしょうか。
◇本日の曲◇
「初恋/村下孝蔵」
村下孝蔵の「初恋」は、学校時代の切ない恋心を歌い上げた名曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月19日(火) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「人の大勢行くところへ行きそびれて、そのまま何年もたつと、
何となく意地になって、そんな所へ誰が行くものかと思う」 内田百閒
思い切り、ひねくれてますね。でもこの気持ち、なんとなくわかる…という方、けっこうたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
六本木ヒルズにも表参道ヒルズにも、まだ行ったことがない…と、森ビルさんには申し訳ありませんが、こんな自慢をする人、ときどきいますよね。心の底の底では「一度行ってみたいな~」なんて気持ちを持ちつつも、人前に出ると、「ヒルズ? あんなとこ、バカバカしくって、行けっかよ~」なんて、強がってみせたりする。これが人間心理の面白いところです。百閒先生のひねくれ名言をもう一つご紹介します。
「温泉場は人がいるから行きたくない。その土地でも宿屋でも、人が来るのを待っている。
向こうがそのつもりでいる所へ、誰が行ってやるものかと思う」
まあ、こういう方に限って、ブツクサ文句を言いながらも、実際に温泉場に出掛けると、けっこう楽しんで、旅館のレターセットを片っ端から持ち帰ったり、朝食の焼きのりの小袋を使わず持ち帰ったり…ということが、ありがち…ですね。
◇本日の曲◇
「悪女/中島みゆき」
中島みゆきの「悪女」は、ちょっぴりひねくれた女ごころが切ない、大ヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月18日(金) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「金貸しが悪辣であるのは当たり前」 内田百閒
とにかくその生涯に渡って、ありとあらゆる所から、お金を借りて借りて借りまくり、その借金を芸にまで高めたといわれる内田百閒先生。夏目漱石の弟子として、日本文学の歴史の上で、特異な位置を占める名高い文学者でありながら、とにかく常に借金取りに追われる人生を送り、そのお金を借りる技術を「錬金術」と称していたのは、有名な話です。続きをご紹介しましょう。
「金貸しが悪辣であるのは当たり前の話で、あいつは悪い奴であって、人格が下劣だから
金を借りてやらない…と考えても、始まらない」
誰にでも、お金が必要な時はあります。どんなに気が進まなくても、お金を借りなければならない時というのは、長い人生、ままあるもの。そんな時に、借りる相手のことをどうこう考えても仕方がない…と、こういうわけです。そんなお金のない生活が続いたせいで、こんな凄い台詞も百閒は残しています。
「お金を持つということは、その人間を卑小にし (いやしくする、ということ)、
排他的ならしめ、また独善的にする。厭うべきはお金である。
お金があっては、道を修め、徳を養うことはできない」
ここまで云いきるのも、天晴れという感じがします。
◇本日の曲◇
「キャント・バイ・ミー・ラヴ/ビートルズ」
ザ・ビートルズの「キャント・バイ・ミー・ラヴ」は、お金をテーマにした曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月14日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「人間同士は、会ったときが正月だ」 山本周五郎
会ったときが正月…
「一期一会」の精神を、これほどわかりやすく言い表した言葉もないように思います。「ながい坂」という作品の一節ですが、この小説に限らず、周五郎先生の著作は、どの一行を取っても味わい深く、すべてが「名言集」になるといっても過言ではないほどです。いちいちメモを取りながら読んでいたら、おそらく時間がかかってかかってしょうがないでしょう。
さて、この言葉ですが、これは、酔っ払った男が色街で初めて会った女性に対して言ったもの。若いときは毎日のように飲み歩いていて、「また明日ね~」などと言いながら、その日のうちにまた会って飲んでたりしたものですが、50の声が聞こえますと、本当に、人と会ってお酒を飲むという機会が、とても大切に思えてきます。また今度…なんて言わずに、「会ったときが正月」。そして周五郎先生は同じ作品の中で、こんな言葉も残しています。
「時には我を失うほど酔うことも人間の特権だ」
◇本日の曲◇
「二人でお酒を/梓みちよ」
お酒をテーマにした、梓みちよの「二人でお酒を」は、1974年(昭和49年)の大ヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月13日(水) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「絶望は人間だけがもつことのできる黄金である」 山本周五郎
山本周五郎は、「樅の木は残った」「赤ひげ診療譚」「青べか物語」など、数多くの名作を残し、亡くなってからもう40年近くの歳月が流れましたが、現在もなおその作品のほとんどが文庫に収録され、版を重ねている、恐るべき作家です。
生まれたのは1903年(明治36年)、本名は清水三十六(さとむ)。幼い頃から文才に優れ、小学校の先生に「君は小説家になれ」と言われて文学を志します。ところが、待っていたのは茨の道でした。小学校卒業後は、「山本周五郎商店」という質屋さんの住み込み店員となり、筆舌に尽くしがたい苦労を味わいながら文学修業を続け、1926年(大正15年)、文藝春秋に作品が掲載され文壇デビューを果たします。その時、原稿には、「山本周五郎方清水三十六」と書いてありましたが、文藝春秋の方で「山本周五郎」が名前だと勘違い。そのまま雑誌に載ってしまったことから、これがペンネームとなったのだそうです。
実際、このホンモノの山本周五郎さんは、とても洒落た、文学などにも造詣の深い人物だったそうで、清水少年を何かにつけ励まし、物心両面で援助を続け、小説家の山本周五郎さんも、生涯の恩人として慕い続けたというエピソードが残っていますが、どんなに、お店の旦那さんに可愛がってもらっても、やはり小僧をしながら文学を志すのは大変なこと。絶望したことも一度や二度ではなかったでしょう。そんな経験をバネに、大ベストセラー作家となった山本周五郎の言葉を噛みしめていただきましょう。
◇本日の曲◇
「希望/岸洋子」
岸洋子の「希望」は、1970年(昭和45年)の大ヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月12日(火) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「男と女が肌と肌を触れ合い、快楽と陶酔をともにしても、
二人の人間がしんじついっしょになることはない」 山本周五郎
山本周五郎の芸道小説「虚空遍歴」に登場する言葉です。この作品は、旗本の次男に生まれた男が、何気なく作った端唄(当時の流行歌のようなもの)が大ヒットしてしまったことで、自分のすべてを賭け、本格的な浄瑠璃に取り組んでいくようになるというお話。
この作品は実は、アメリカの作曲家で、「おおスザンナ」や「草競馬」で知られる、スティーヴン・フォスターの生涯に触発されて書き上げたものなのだそうです。そんなことを念頭に置いて読むと、また違った面白さが味わえるかも知れません。
さて、この言葉ですが、主人公の旗本の次男が、妻が初めて体の悦びを知った後に、しみじみ思った感慨。女性の方も、もちろん、同じような事を思われるのかもしれませんが、男性としては、本当に、うんうん…と強く頷かされる言葉ではないでしょうか。同じようなことを歌っている有名な歌に、あの野坂昭如さんが歌った「黒の舟歌」…「男と女のあいだには 深くて暗い河がある…」という、あの有名なフレーズがあります。
◇本日の曲◇
「アローン・アゲイン/ギルバート・オサリバン」
ギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」は、1972年(昭和47年)の世界的大ヒットです。
投稿者 joqr : 12:00
12月11日(月) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「人間のすることに、
いちいちわけがなくっちゃならない、ってことはないんじゃないか」 山本周五郎
山本周五郎の名作中の名作「さぶ」に登場する一節。この作品は何度もテレビドラマや映画化されていますから、ご存じの方もたくさんいらっしゃることでしょう。経師屋に住み込みで働く若い二人の職人、栄二とさぶの友情と成長を描く清々しい物語です。
二枚目で頭も切れる栄二と、見かけはぱっとしないが正直で善良なさぶ。二人は大の親友で、栄二は何かとさぶを庇い、世話を焼いていたのですが、ある時、栄二が無実の罪で石川島の人足寄場に送られてしまいます。辛い日々の中、ひたすら自分を陥れた者への復讐を思い、性格もねじくれてしまう栄二。しかし、さぶは、親友を心から思い続け、その立ち直りに手を貸そうとするのでした…というお話です。
人が信じられなくなってしまった栄二は、「どうしてそんなにいろんな人が、俺のことを心配するんだ?」と言います。すると、さぶが答えたのが、このことば。
「人間のすることに、いちいちわけがなくっちゃならない、ってことはないんじゃないか。
お互い人間ても のは、どうしてそんなことをしたのか、自分でもわからないようなことをするとき
があるんじゃないだろうか」
この友情がジーンと栄二の心に染みていくのです。
◇本日の曲◇
「男どうし/杉田二郎」
1975年(昭和50年)、杉田二郎の「男どうし」は、友情を歌ったこのヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月7日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「人間が何かを強調するときには、
それによって本当の情報を目立たせたくないという事情が
隠されていることが多い」 ウォーレン・バフェット
バフェットは毎年、自分の投資専門会社、バークシャー・ハザウエイの年次報告書を、世界有数の大富豪となった今でも自ら書いています。そして、その内容が実にわかりやすく、率直なことでも有名なのですが、驚くべきことに、この報告書には、読者の目を引くような写真とか、また株式関係の書類ではありがちなグラフなどが一切使われていないのです。
これはなぜか?…という問いに対する答えが、この言葉。プレゼンテーションの資料用に写真を撮ったり、グラフを書いたりしている方、中にはドキッとされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。政府関係の広報資料にも、グラフがたくさん登場しますが、そうしたものを眺めるときも、バフェットのこの言葉をじっくりと噛みしめてみるといいかもしれませんね。
これはマジックの世界でもよく使われるテクニック。右手を大きく動かすと、実はその間に左手がチョコチョコっと何かをやっていたりする、あの呼吸ですよね。
◇本日の曲◇
「マジック/パイロット」
1975年(昭和50年)のヒット、パイロット「マジック」は、あのチューリップにも大きな影響を与えた、70年代ポップス名曲中の名曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月6日(水) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「事業の多角化は、無知を隠す一つの手段。
自分が手がけるビジネスをちゃんと理解していれば、
多角化など無意味に思えるはずです」 ウォーレン・バフェット
政府は景気がいい、景気がいいと旗を振りますが、われわれ庶民レベルでは、なかなかそんな実感もありません。どの会社でも、事業がうまくいかなくなると、まず頭に浮かぶのが「多角化」です。もちろん、バフェットも、多角化をすべて否定するわけではありません。何も考えないで 「これがダメだから、こっちもやろう」 といった程度では、絶対に無理だということ。安易に手を広げることは、かえって本業を危うくするから、とにかくまず、本業を徹底的に掘り下げろ…と、アドバイスしているわけです。
バフェットは、同じことを、ユーモアたっぷりにこんな言葉でも表現しています。
「40人も女性のいるハーレムを作ったところで、一人一人を深く知ることはできないでしょう?」
…それはそれで魅力的な気もしますが。ともかく、少なくとも企業経営に関しては、あまり気が多いのは勧められることではない。投資対象としては、一つの事業を徹底的に掘り下げている会社がいいでしょう、というわけです。
◇本日の曲◇
「どうぞこのまま/丸山圭子」
投稿者 joqr : 12:00
12月5日(火) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「高さが2mもある塀を乗り越えようとは思いません。
辺りを見回して30センチの柵を探し、そこをまたいで行くつもりです」ウォーレン・バフェット
世界一の大富豪、ウォーレン・バフェット。頭を使ってお買い得な株を手に入れ、その会社が自分が見込んだ通り成長していくのを見るのが何よりも楽しいというこのバフェットさん、要するに彼にとってお金とは、この楽しい「株式売買ゲーム」で勝つことで得られる、ごほうびのようなものなのですね。
毎朝、オフィスに出勤するときは 「システィナ礼拝堂に絵を描きに行くような気分がする」 というこの人物。システィナ礼拝堂は、あのミケランジェロの天井画で有名なヴァチカンの名所ですが、まあ、いってみれば、彼は証券取引の世界のミケランジェロのような存在という訳です。
彼の証券売買のコツは、デイトレーダーのように株式を売ったり買ったりせず、いったん手に入れたら、気長に持ち続けるということ。つまり、決して無理はしない。そんな生き方を、ユーモアたっぷりに表現したのが、この言葉というわけですが、それにしても、なかなか味わい深い言葉だと思いませんか?
◇本日の曲◇
「危険なふたり/沢田研二」
無理をしてしまった若い二人のやるせない曲、沢田研二の「危険なふたり」は、1973年(昭和48年)日本歌謡大賞受賞曲です。
投稿者 joqr : 12:00
12月4日(月) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「価格とは、何かを買うときに支払うもの。
価値とは、何かを買うときに手に入れるもの」 ウォーレン・バフェット
今年6月、資産のおよそ85%を、ビル・ゲイツが運営する福祉財団に寄付すると発表して話題になったバフェット。それがどれくらいの額か、といいますと…報じられているところでは、合計400億ドル…ということは、日本円にしておよそ5兆円近く。資本主義の凄まじさを、まざまざと思い知らされます。
11歳のとき、初めて株取引に手を染めて以来、経済の仕組みに魅せられた少年は、大学を出て証券取引の道を本格的に歩み始めます。20代で投資専門の会社を設立してからは、順調にその資産を増やし続け、1993年には、お金持ちランキング雑誌「フォーブズ400」で初の首位、当時の数字は83億ドル(約1兆円)でした。
いったいどんなテクニックを使ったのか、といえば、これがいたってシンプルなのです。
「いい銘柄を見つけ、いいタイミングで買い、いい会社である限りそれを持ち続けること」。
カンや、ちょっとした情報で飛びついて売り買いせず、じっくりと投資に見合う会社かどうかを吟味した上で買い、値段の上下に一喜一憂せず、それを持ち続けること。この言葉にも、そんな彼の考え方が反映されています。
◇本日の曲◇
「狙いうち/山本リンダ」
投稿者 joqr : 12:00
12月1日(金) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「世の中に無神経ほど強い物はない。」 勝海舟
これは非常にわかりやすい言葉です。あまりデリカシーをもたない人間に、普通に気を遣う人間が、どれほど疲れさせられるか。結局、無神経な奴にはかなわない…と、酒を飲みながらグチをこぼす、よくあることです。
ところが面白いのは、勝海舟は、この言葉をどちらかといえば肯定的に使っていること。
あたりを飛んでいるトンボを例に出して、「尻尾を切って放しても、平気で飛んで行くではないか。俺などもまあトンボぐらいのところだ」と言い、さらに、「むやみに神経を使ってやたら世間の事を気にして、朝から晩まで頼みもしないことに奔走し、そのため頭がはげたり髪が白くなったりして、もうろくしてしまうような人間にはとてもなれない。」と続けています。
つまり、現在の「無神経」と、当時のニュアンスが少し違って来ているということなのでしょう。あまり細々したことを気に病むな、何事にも余裕を持って当たれ…という、海舟先生の持論を別な形で言い表した言葉です。しかし、それにしても、この短い言葉のもつ迫力は、現在でこそ輝くものではないでしょうか。
◇本日の曲◇
「リッチ・ガール/ダリル・ホール&ジョン・オーツ」
ダリル・ホール&ジョン・オーツの「リッチ・ガール」は、お金持ちの無神経な彼女に、翻弄される悲しい男の歌です。
投稿者 joqr : 12:00
11月30日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「時に古今の差なく、国に東西の別はない。
人間は始終同じことを繰り返しているばかりだ。」 勝海舟
明治維新に際して、幕府を代表してスムーズな政権移行に協力。その後長年、赤坂・氷川神社の近くに居を構え、在野の「ご意見番」として、数々の名言を遺した勝海舟。この言葉は、明治28年(1895年)、日清戦争の講和会議で清の全権、李鴻章が狙撃されるなど、物騒な事件が相次いだ時期の発言です。
当時、既に、江戸時代は文明化されていなかったが、明治維新で日本も先進国への道が開かれた…といった意見が、数多く唱えられていましたが、これに対し勝海舟は「昔も今も変わらない」と、異を唱えたのです。
海舟は薩摩藩士がイギリス人を殺傷した「生麦事件」や、品川・英国公使館の「御殿山焼き討ち事件」などを例に、「こうした事件は、みな維新前でなければ考えられない、未開の国ならではの出来事だというけれど、明治になっても巡査がロシア皇太子を刺した大津事件や、李鴻章の狙撃事件などがあるではないか」と説き、結局のところ、今も昔も、東も西も変わらない。人間というものは、永遠に同じことを繰り返す。
とりわけ、明治時代は、江戸からガラリと変わって、文明的ないい世の中になった…と考える人が多い中、そんなことはない、昔と少しも変わらない…と、クールに考えていたのが勝海舟という人なのでした。
◇本日の曲◇
「時代/中島みゆき」
中島みゆきの「時代」は、1976年(昭和51年)の大ヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
11月29日(水) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「人は皆、様々にその長ずるところ、信ずるところを行えばよいのサ。」 勝海舟
悲しいことに、若い人たちの自殺のニュースが続きます。新聞を眺めても、各界有名人などによる「生命を大切にしよう」というメッセージが連日掲載されていますが、さしずめ、この海舟先生の言葉なども、ぜひ考えてみて頂きたいもの。続きがありますので、ご紹介します。
「人は皆、様々にその長ずるところ、信ずるところを行えばよいのサ。
社会は大きいから、あらゆるものを包み込んで、少しも不都合はない」
わかりやすく、少し現代語に代えてみました。誰でも、自分の得意なことをしていけばいいのだし、こういう生き方がしたいと思ったら、その通りに生きればいい。前半はこういう意味です。そして後半、これは本当に、我々大人にとっても心強い言葉。社会というものは本当に大きく広い。ありとあらゆるものを包み込んでしまうから、何をしたところで問題はない…というわけです。
幕府の中には、江戸に進撃してくる官軍に対し、徹底的に戦おうという意見も少なくなかったそうですが、そんなことをしても何の益にもならない…と、自らの信念に従い、無血開城を行った海舟。やはり、こうした考えの持ち主だったからこそ、新政府のスムーズな船出を助けることができたのでしょう。
◇本日の曲◇
「これが私の生きる道/PUFFY」
PUFFYの「これが私の生きる道」は、10年前の大ヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
11月28日(火) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「大事を為すには、寿命が長くなくてはいけないよ」 勝海舟
勝海舟は旗本の家に生まれ、若い頃は剣術の修業に明け暮れ、剣豪・島田虎之助の弟子となり、直心影流(じきしんかげりゅう)免許皆伝の腕前。また蘭学や西洋の兵学を学んで江戸に私塾を開き、その後は長崎留学を果たし、西洋の事情にも精通。後には幕府の使節として咸臨丸でアメリカ渡航、さらに幕府に海軍を創設。明治維新に際しては幕府の代表として西郷隆盛と交渉、江戸を無血開城に導いたことで知られています。ここまで、これだけの功績を残した勝海舟ですが、明治維新のとき、まだ44歳!
「人生五十年」と言われた時代のことですから、これぐらいは当たり前だったのかもしれませんが、海舟は、この後さらに30年以上の月日を生き、新政府の成り行きを見守っていくことになります。
そんな勝海舟の説く、長寿の秘訣をご紹介します。
ちゃんと食事をして、適度な運動をすること…というのは、
俗物にはいいかもしれないが、大人物はそれではダメ。
まず「余裕」を持つことが大切で、つまらないことに執着したり、
こだわったりすることがよくない。
こうした心境になれたなら、運動も栄養も関係ない…と、これが海舟先生の説く長寿法です。
◇本日の曲◇
「ルージュの伝言/荒井由実」
30年以上の長きに渡り、時代の最先端を走り続ける「長寿アーティスト」の代表格、ユーミン。
「ルージュの伝言」は、1975年、荒井(松任谷)由実にとって初めてのシングルヒットです。
投稿者 joqr : 12:00
11月27日(月) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「自分で豪傑がるのは、実に見られないヨ」 勝海舟
幕末期、揺らぎかけた幕府を必死に支え、いよいよダメだとなると西郷隆盛と交渉して江戸城を無血開城に導き、街を戦火から救った江戸っ子・勝海舟。海舟は1899年(明治32年)まで長命を保ち、その時々の政局や経済などに対し、歯に衣着せぬ鋭い談話を発表して、長く新政府の監視役を務めました。
この言葉は、1897年(明治30年)、「元勲」と呼ばれるようになった、伊藤博文や山県有朋といった人々に対する痛烈な批判です。
もう少しご紹介します。
「この頃、元勲とか何とか、自分でえらがる人たちがいる。
自分で豪傑がるのは、実に見られないヨ。
伊藤もまた外国へ出かけたそうナ、いつまでも自惚れが強いノウ」
当時の政府のお偉方を、これだけ痛烈にやっつける。今と違って、民主主義のかけらもない時代のことですから、生半可な人がやれば生死に関わりますが、勝海舟先生の言葉となれば誰も異は唱えられません。新聞記者は、勝家のある赤坂・氷川に日参し、面白いコメントを取ろうと必死だったそうです。
◇本日の曲◇
「あんたが大将/海援隊」
「あんたが大将」は、1977年(昭和52年)、海援隊のコミカルなヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
11月24日(金) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「いのちは、老いたるも若きもおぼつかなし」 樋口一葉
老人であろうと、若者であろうと、命がおぼつかない…きわめて不安定であることには変わりがない。
こんな意味になりますでしょうか。24歳の若さ、いよいよこれから文壇に出ていこう…というその矢先に、結核のため世を去った一葉の言葉をじっくりと噛みしめたいです。
19歳で小説で身を立てようと決心し、それから必死の修業を続けた樋口一葉。吉原にほど近い下谷龍泉寺町(りゅうせんじまち)で、小間物屋の店を営むなどしながら、そこで耳にした様々なエピソードをもとに、23歳の年に名作「たけくらべ」の連載を開始。
そして、それから病に倒れるまでのごく短い間に、「大つごもり」「にごりえ」「十三夜」といった、今日まで知られる数々の傑作を執筆しており、後に「奇跡の一年」と呼ばれるようになります。迫り来る死期と争うように、次から次へと湧き上がってくるアイディアをひたすら書き綴っていった一葉の濃密な日々が偲ばれます。
◇本日の曲◇
「愛にすべてを/クイーン」
「愛にすべてを」は、1976年(昭和51年)のクイーンの大ヒット曲。フレディ・マーキュリーは、今から15年前、1991年の11月24日に45歳で世を去りました。
投稿者 joqr : 12:00
11月22日(水) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「たやすきものは人の世にして、あなどるまじきも此の人の世なり」 樋口一葉
世の中は、時にたやすく思われるものだけれど、また、決してあなどってはいけないものでもある…現代語にすると、こんな意味になるでしょうか。
たとえば、ある日突然、万馬券が的中、それも1本ではなく2本も3本も当たってしまう。
「もしかしたら俺には競馬の才能があるのでは?」これが翌週も続くと、「俺には競馬の才能がある!」となりまして、 家庭も顧みずひたすら馬券を買い続けるようになる。すると、あんなに簡単に的中していた馬券が不思議なことにまったく当たらなくなって、あっと言う間に一文無し…。
これは極端な例ですが、仕事でも何でもこんなことチョロイもんだと適当にこなしていると、そのうち手痛い「しっぺ返し」を食う。これは、多くの皆さん、経験のあることではないかと思います。
◇本日の曲◇
「ドント節/ハナ肇とクレイジーキャッツ」
世の中、不思議なことに、一生、どんなことでも適当にこなし続けて、何の苦労もなくスイスイと生きていく人を、ときどき見かけることもあります。たとえば、ハナ肇とクレイジーキャッツの「ドント節」の主人公など、もし一葉女史が存命だったら、どう思ったことでしょう。
投稿者 joqr : 12:00
11月21日(火) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「男気(おとこけ)なき家の、いかにあなどられて くやしき事ども多からむ」 樋口一葉
こちらも文語文ですが、かなりわかりやすいのではないでしょうか。要するに「男のいない、女所帯のため、どれだけ侮られ、悔しい思いをしてきたことか」という意味です。
樋口一葉は1872年(明治5年)生まれで、父親はもともと南町奉行所の同心でしたが、維新後は東京府に勤め、まずまずの暮らしをしていました。ところが87年、15歳のときに長兄を亡くし、さらに2年後、17歳で父を亡くしたことで運命が暗転。最初は母、妹と次兄のもとに身を寄せますが、もともと折り合いの悪い兄だったため、ほどなくそこを出て、母、妹との生活が始まります。
それでなくても女性蔑視が当たり前だった当時、女所帯への風当たりは、かなり強かったことでしょう。今と違って、外に出て働く口も簡単に見つかりません。結局のところ、非常に割の悪い針仕事などの内職で稼いでいくしかなく、暮らしは貧困を極めました。
それでも、前向きな気持ちを失わないのが一葉。19歳の時には、もともと好きだった文芸の道で身を立てていこうと決心、修業を重ね、「たけくらべ」「にごりえ」などの傑作を次々に発表しますが、わずか24歳で結核のため死去。ようやく非凡な才能が花開こうとする、その直前の悲劇でした。
◇本日の曲◇
「ダイアモンド/プリンセス・プリンセス」
「ダイアモンド」は、プリンセス・プリンセスの大ヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
11月20日(月) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「ものは捨つるに破れて、用いるに成るものぞとよ」 樋口一葉
明治時代の言葉ですが、これだけではわかりにくいので、少々解説を加えることにします。
「ものは捨つるに破れて…」捨つる…というのは「捨てる」という意味。つまり、何事でも捨ててしまう、あきらめてしまうと、「破れる」、それでダメになってしまう。後半部分の「用いるになるものぞとよ」は、反対に、何事でも使い続ける、つまり努力を続ければいつかは成就するもの、といった意味合いです。
つまり、現代語風に訳していえば、「なんでもあきらめてしまってはそこでおしまい。地道に努力を続ければ、なんとかなるものよ」…という意味になります。現代語にしてしまうと、よくある応援ソングの歌詞のようで、情緒も何もありませんが、一葉の見事な文語文だと、途端に格調高くなるのが不思議。
貧しい暮らしの続く中、なんとか文筆で身を立てようと、必死に努力を続けた樋口一葉は、自分で自分にこの言葉を言い聞かせ、ともすればくじけそうになる気持ちを、奮い立たせていたのかもしれません。
◇本日の曲◇
「SOMEDAY/佐野元春」
1981年夏にリリースされた、佐野元春の「SOMEDAY」は、日本ロック史に輝く名曲です。
投稿者 joqr : 12:00
11月17日(金) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「金のない男ほど、魅力のないものはない」 林芙美子
思わず「アイタ!」と言ってしまいそうになります。これは林芙美子の名作「晩菊」に登場する一節。年老いた芸者のもとへ、昔なじんだ男が現れる。芸者は昔の恋が甦るのかと淡い期待を抱くが、男は当時と違って生活に困っており、昔の女のところへ金策に来ただけ。その行き違いが生む、おかしくて悲しいストーリーで、林芙美子はこの短編で女流文学賞を受賞しています。
この言葉の前後をご紹介しましょう。きん、というのは主人公で、56歳の芸者の名前です。
「きんは金のない男を相手にする様な事は決してしなかつた。
金のない男ほど魅力のないものはない。
恋をする男が、ブラッシュもかけない洋服を着たり、
肌着のボタンの外れたのなぞ平気で着ている様な男はふっとイヤになってしまう。
恋をする、その事自体が、きんには一つ一つ芸術品を造り出す様な気がした」
女性の皆さんは、同感できる…方も多いことでしょう。しかし男性、それも「だらしない」と言われることの
多い中年男性には、グサグサ突き刺さりますね。
◇本日の曲◇
「ホンキー・トンク・ウィメン/ローリング・ストーンズ」
アメリカ、フォーブズ誌の選んだ「世界のパワーセレブ」、音楽部門の堂々第一位に輝いたこのバンド、ザ・ローリング・ストーンズの「ホンキー・トンク・ウィメン」は、1969年(昭和44年)夏のビッグヒット。ミック・ジャガーのボーカルが色気満点です。
投稿者 joqr : 12:00
11月16日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「大抵の亭主は、家出がしたいのを我慢してる世の中だ。」 獅子文六
実に、しみじみとくる言葉です。
独特のユーモア溢れる小説で、戦前・戦後を通じベストセラーを連発した作家、獅子文六。この言葉は、その中でも代表作とされる「自由学校」に登場する一節です。
この作品が生まれたのは1950年(昭和25年)。戦争が終わって進駐軍がやってきて、日本国憲法が制定された時代。一般庶民たちは、突然天から降ってきたような「自由」に戸惑い、いったいどうやってこれを使えばいいのか、途方にくれているようなところがあり、こんな世相をベストセラー作家・獅子文六が実にうまく汲み取って、「自由学校」という見事なタイトルの作品に仕立てました。
戦後、非常に力の強くなったやり手の女房に、ホトホト疲れたぐうたら亭主が家出するという物語で、家を出た主人公のぐうたら亭主は、なんと中央線御茶ノ水駅から見える対岸の土手に暮らします。当時、戦争で家を焼け出された人々が掘っ建て小屋を立て、あの神田川の岸辺にたくさん住んでいたのです。今では想像もつかない出来事ですが、当時は実にリアル。その証拠に、大映と松竹、二つの会社で映画化され、なんと同じ日に公開されたという凄まじさ。こちらも、今ではありえないエピソードですね。
◇本日の曲◇
「さらば恋人/堺正章」
堺正章の「さらば恋人」は、1971年(昭和46年)、スパイダース解散後、初めてのビッグヒットとなった曲です。
投稿者 joqr : 12:00
11月15日(水) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「革命を成功させるのは希望であり、絶望ではない」 クロポトキン
19世紀のロシア生まれの「革命家」の言葉…百科事典に「革命家」という肩書きで載っているというのも、かなりカッコいい気がします。確かに「こんな政治はもう嫌だ…」と、絶望の末に革命を志すより、「もっとまともな世の中にしたい」と、希望を持って革命に取り組む方が、成功率は高いでしょう。
ピョートル・アレクセビッチ・クロポトキンは、1842年、公爵という名門に生まれながら、無政府主義=アナーキズムに夢中になり、労働者の間に入り、革命運動に身を投じますが、逮捕され、投獄されてしまいます。のちに脱獄して亡命、ロンドンで活動、1917年のロシア革命後はモスクワに戻ります。
しかし、人々が互いに助け合うことを何よりも大切に考え、そうした人々の地域的な集団があれば、国家などまったく必要ないと考えていたクロポトキン。共産党の独裁政権となったソヴィエトには批判的だったそうで、まさに筋金入りの革命家です。
◇本日の曲◇
「MY REVOLUTION/渡辺美里」
「MY REVOLUTION」は、1986年(昭和61年)の大ヒット曲ですが、渡辺美里さん、そして作曲の小室哲哉さんの出世作でもあります。
投稿者 joqr : 12:00
11月14日(火) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「犬でもケンカをするときは、主人の邸(やしき)にいる方が強くなる」 森鴎外
夏目漱石と並ぶ明治の文豪、森鴎外の言葉。盗みに入った家で残っていたコニャックをがぶ飲みし、酔っ払った泥棒のマヌケなエピソードを描いた「金貨」という作品に登場する一節です。
この言葉から、私達がいま連想するのは、今年の日本シリーズ、北海道日本ハムファイターズ。正に、ホームタウンの地の利を最大限に味方につけ、圧倒的不利という予想だったにもかかわらず、見事に日本一の座を手に入れました。かつてこの日本では、ホームとアウエイの差は、そんなにはっきりと区別できるものではありませんでした。たとえば神宮球場のヤクルト阪神戦で、ともすると阪神ファンの方が多かったり…。ただJリーグのスタートにより、日本各地に「自分の街のチームを応援するという喜び」が広まるようになり、それが野球にも反映されるようになった。ボクシングで言うところの「ホームタウン・デシジョン」、地元の圧倒的な声援が判定にも微妙に影響するという、あの現象が、このところ明確になってきたように思います。ジャイアンツ戦の視聴率低迷というのも、こうした現象の一環なのかもしれません。
◇本日の曲◇
「北酒場/細川たかし」
北海道出身、細川たかしの大ヒット曲「北酒場」は、1982年(昭和57年)レコード大賞受賞曲です。
投稿者 joqr : 12:00
11月13日(月) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「悪は必要である。 もし悪が存在しなければ善もまた存在しない。
悪こそは善の唯一の存在理由なのだ」 アナトール・フランス
いきなり「悪は必要である」と言われると、かなりドッキリさせられますが、その後に続く言葉を聞くと、うーむ…といろいろ考えさせられます。正に、名言。
アナトール・フランスは、19世紀から20世紀前半に活躍した、その名の通り、フランスの大作家で、1921年(大正10年)ノーベル文学賞を受賞。芥川龍之介が心酔した作家としても知られています。アナトール・フランスは、父親がセーヌ川の川岸に店を開いていた、古本の露天商だったという面白い経歴の持ち主。ノートルダム寺院の見事な建物を背景に、マロニエやプラタナスの並木の下に古本のワゴンが並び、パリジェンヌが通りすぎていくこの川岸は、世界で最も美しいところ…と彼は書いています。確かにそんな場所で育ったら、感受性も豊かになるでしょう。
彼の著書には、こんなエピソードも紹介されています。
ある冬の日、ナポレオン三世がこのあたりを散歩していたら、一人の年老いた青空古書店の
オヤジが、暖を取るために本を燃やしていた。商売物を燃やす?
いったいどんな本なのか、興味を持って部下に調べさせたら、なんと自分が書いた本だったという…
◇本日の曲◇
「悪魔がにくい/平田隆夫とセルスターズ」
平田隆夫とセルスターズの「悪魔がにくい」は、1971年(昭和46年)の大ヒットです。
投稿者 joqr : 12:00
11月10日(金) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「酒は茶の代わりになるも、茶は酒の代わりにならず。」 張潮(ちょうちょう)
週末、金曜日にふさわしい名言ではないでしょうか。酒のみにとって、これほど気持ちのいい言葉はありません。酒を飲まない方にとっては、何をバカなことを…と思われるかもしれませんが、たとえば喉が渇いたときに、お茶がないけどビールがある。仕方がないけど、ビールで我慢するか。これは可能です。反対に、なんとなく気分が晴れなくて、今夜はしたたかに酔いたい。そんな時、家中のどこを探しても酒が切れている。愚妻に「おい、どっかに酒ないの?」と聞いても冷たく「ありません。お茶でも飲めば?」なんて言われたら、…ホントに悲しいものですよね。
張潮は、中国、清朝の初期、17世紀後半から18世紀にかけ活躍したエッセイストです。この言葉は「幽夢影(ゆうむえい)」という彼の代表作に含まれているものです。
◇本日の曲◇
「チャンチキおけさ/三波春夫」
「チャンチキおけさ」は、1957年(昭和32年)、それまで浪曲の世界で活躍していた三波春夫さんが歌手としての第一歩を踏み出した記念すべきデビュー・シングルです。
投稿者 joqr : 12:00
11月9日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「自分で薪を割れ、二重に暖まる」 ヘンリー・フォード
かの自動車王、ヘンリー・フォードの言葉。もちろんガスや電気などない時代の話ですから、寒い季節、暖を取るには薪ストーブが一般的。簡単に温まるには、薪を買ってきてそれを燃やせばいいわけですが、しかし、もし、自分で薪割りをすれば、けっこう激しい運動ですからそれだけで温まる。さらに、お金も節約できるどいう効果もあります。早い話、自分で出来ることは極力自分でしなさいよ…と、フォードさんは、おっしゃってる訳です。
「石油ピーク」も囁かれる昨今、ガソリン代もずいぶん高くなってきました。化石燃料を節約し、地球環境に負担をかけないためにも、たとえば冬、灯油を配達してもらうのではなく、自分でポリタンクを持って買いに行ったりすると、このフォードの精神を体感できるのではないでしょうか。
◇本日の曲◇
「THE FLAME(永遠の愛の炎)/チープ・トリック」
チープ・トリックの「THE FLAME(永遠の愛の炎)」は、1988年(昭和63年)、彼らにとって初めての全米1位となった曲です。
投稿者 joqr : 12:00
11月8日(水) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「理性的な女というのは、針金で突っ張ってある花みたいで阿呆らしい」 円地文子
戦後、華々しい活躍をした女流作家、円地文子。有名な国語学者の娘として生まれ、幼いころから歌舞伎、能狂言などに親しみ、戦後、本格的に作家としてデビュー。とりわけ乳腺炎で乳房を失い、さらに子宮がんで子宮を失った後、女性と「性」との関わりをテーマとした数多くの小説を著し、評価されるようになりました。この言葉も、そんな中の一冊「女面(おんなめん)」に登場するものです。
この本は、亡き夫の母と暮らす美しい未亡人、そして未亡人に求愛する二人の男との関係を、オカルト風味を存分にまぶして描いた名作ですが、「理性的な女は阿呆らしい」…とは、まあ酒の席での男同士の会話に出てくるような言葉で、女性の口から出たとは思えませんよね。正に「女傑」と呼ばれた円地文子の面目躍如、といったところでしょうか…。ちなみに国語学者だった父親は、彼女の前でしみじみ、「お前が男だといいんだがなあ…」と述べたそうです。
◇本日の曲◇
「少女A/中森明菜」
中森明菜の「少女A」は、理性とは対極にある、本能のままに生きる少女を歌った1982年(昭和57年)の衝撃的な大ヒットです。
投稿者 joqr : 12:00
11月7日(火) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「嘘は河豚汁である」 夏目漱石
夏目漱石の名作「虞美人草」に登場する言葉。これだけでは一体なんのことだか、よくわかりませんので続きをご紹介しましょう。
「嘘は河豚汁である。その場限りで『たたり』がなければ、これほど旨いものはない。
しかし当たったが最後、苦しい血も吐かねばならぬ」
…いかがでしょうか。
たとえば合コンで初めて会った女の子に、「俺、医者なんだよ」とウソをつけば、確かにその場ではモテモテになるかもしれません。ただ、その場かぎりでモテて帰ってくるなら、本当に「河豚汁」を堪能したことになるわけですが、これがヘタに女の子に夢中になってしまって、そこから先に進んで行こうとするならば、大変なことになります。正に「当たって」しまって、苦しい血を吐くことになる。さすが漱石先生、ウマいことを言います。
◇本日の曲◇
「うそ/中条きよし」
中条きよしの「うそ」は、作詞・山口洋子、作曲・平尾昌晃。現役の銀座のママだった山口さんが、ホステスさんに打ち明けられる悩み事の相談をそのまま歌詞にしたという曲です。
投稿者 joqr : 12:00
11月6日(月) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「よい習慣から抜け出すことが、
悪い習慣から抜け出すことよりやさしいのは困ったことだ」 サマセット・モーム
どなたにとっても耳の痛い言葉かと思います。早起き、ジョギング、歯磨き、乾布摩擦…。どれも「よい習慣」ではありますが、たしかに続けるのは難しい、モームのいうように、「抜け出す」のはたやすいことです。反対に…夜更かししたり、どこに行くにも車を使ったり、歯も磨かず寝てしまったり、勝てないパチンコにハマったり、タバコを吸ったり、酒を飲んだり…といった「悪い習慣」から抜け出るのは、並大抵のことではありません。皆さんも一つや二つ、なんとかしなくちゃ…と思っている「悪い習慣」がおありのことと思います。
この言葉の主、短編小説の名手、サマセット・モームは、第一次大戦中、イギリスの秘密諜報機関で働いていました。スパイに要求されるのは、徹底的な人間観察。ターゲットがどんな「習慣」を持っているのかを調べるのは、基本中の基本です。モームの作品に見られる、人物描写の冴えは、そんな諜報機関での経験がモノを言っているのかもしれませんね。
◇本日の曲◇
「ベッドで煙草を吸わないで/沢たまき」
沢たまきの「ベッドで煙草を吸わないで」は、悪い習慣の最たるものを歌った、1965年、昭和40年の大ヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
11月2日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「空は水色 秋は喨々(りょうりょう)と空に鳴る」 高村光太郎
「喨々(りょうりょう)」とは、「澄み通った声」という意味です。秋の魅力を、見事に言い表しています。「僕の前に道はない 僕の後ろに道はできる」という、教科書でもおなじみの詩「道程」と、同じ詩集に入っている詩「秋の祈」の一節です。
1883年(明治16年)、彫刻家・高村光雲の長男として生まれた光太郎。自らも東京美術学校の彫刻科へと進み、後にニューヨーク、ロンドン、そしてパリへ留学。帰国後は吉原の花魁との激しい恋愛などを経て、「智恵子抄」で有名な長沼智恵子と出会い、結婚。彼女との出会いがきっかけとなって詩作に目覚め、詩の名作が次々に誕生します。
後に、「智恵子抄」に描かれるように、妻・智恵子は精神を病み、光太郎は看病に忙殺されるようになりますが、この言葉にはまだ若々しい、前途洋々の青年の姿が透けて見えるような感じがします。
◇本日の曲◇
「青空のある限り/ザ・ワイルド・ワンズ」
1967年(昭和42年)秋の大ヒット「青空のある限り」は、日本武道館で40周年記念コンサートが行われる、加瀬邦彦&ザ・ワイルド・ワンズの曲です。
投稿者 joqr : 12:00
11月1日(水) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「いかに都会を愛するか?
―――過去の多い女を愛するように。」 芥川龍之介
この時間、しばしば名言をご紹介しています、名言の王者ともいうべき芥川龍之介。本当にウマイ、としか言い様のない表現です。この言葉は、1927年(昭和2年)に発表された「都会で」という短いエッセイの中に登場します。このエッセイの中には、こんな一節もあります。ちょっと長くなりますが、ご紹介しておきましょう。
「何かものを考えるのによいのは、カッフェの一番隅のテーブル。
それから孤独を感じるのによいのは、人通りの多い往来の真ん中。
最後に静かさを味わうのによいのは、開幕中の劇場の廊下…」
都会に関する名言には、たとえばルソーの「都市は人類の掃き溜めである」といった言葉のように、都会を否定的にとらえる場合が多いのですが、芥川は、その存在を否定も肯定もせず、独特の魅力を見事に言い表しています。日々、都会暮らしの我々には、本当にしみじみ来ます。
◇本日の曲◇
「恋のダウンタウン/ペチュラ・クラーク」
ペチュラ・クラークの「恋のダウンタウン」は、都会、それも下町の魅力をダイナミックに歌い上げた1965年(昭和40年)の全米ナンバーワン・ヒットです。
投稿者 joqr : 12:00
10月31日(火) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「人に何かを教えることはできない。
ただその人が、自分で気づくことの手助けができるだけだ」 ガリレオ・ガリレイ
教師によるいじめ、また安倍新首相による教育基本法改正の動きなど、「教育」についてのニュースが連日伝えられています。そんな中、この言葉はじっくり噛みしめたいですね。
確かに、子供にいくら「勉強しろ」といったところで、本人がその気にならなければどうにもならないのは、皆さんご存じの通り。何かを教えたいと思ったら、それをストレートに言ってもあまり効果は期待できない。「どうすれば本人が気づくのか」を考えなければならない…というわけです。
先生たちはもちろんですが、我々、親としても、日頃から心掛けておきたいことです。
この言葉の主は、「それでも地球は動く」という名セリフでおなじみ、16世紀から17世紀にかけ活躍したイタリアの天文学者、そして物理学者、哲学者でもあったガリレオ・ガリレイ。地動説を
主張し、教会の権威に従うことを拒絶して、異端審問にかけられたという筋金入りの科学者です。裁判で有罪となり、晩年は軟禁生活を余儀なくされたガリレオ。彼にとって、教会関係者たちに(地動説の正しさを)「どうやって気づかせればいいのか」は、本当に切実な問題だったことでしょう。
◇本日の曲◇
「学生時代/ペギー葉山」
1964年(昭和39年)の大ヒット、ペギー葉山の「学生時代」で歌われているのは、彼女の母校、青山学院の情景だそうです。
投稿者 joqr : 12:00
10月30日(月) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「書物というものは読んで教えられるし、売ってたすけられる」 室生犀星
読書の秋。折しも神保町では、11月1日まで、年に一度の「古本まつり」開催中です。
この言葉は、室生犀星の自伝的小説「杏っ子」の中に登場しますが、この小説が書かれたのが
1957年、昭和32年…といいますから、ちょうど半世紀ほど前。当時、書物は、現在より、よほど貴重な物だったのでしょう。
室生犀星は1889年(明治22年)生まれ。若い頃は、大変苦労した人物で、金沢藩の元・足軽だった父親と、その家でお手伝いさんをしていた女性の間に生まれ、生後七日目で実母と引き離され、お寺に養子に出されます。養子先の寺では、養母に手ひどい仕打ちを受け、12歳で裁判所の給仕として働き始め、その傍ら、俳句や詩などを作り始め、20歳で裁判所を辞職。
20代は上京して同人誌を発行したり、生活が苦しくなって金沢に戻ったりの繰り返しで、大変な日々が続きました。そんな暮らしの中で本を読むことは最大の喜びであり、また苦しくなるとそれを売って生活費にする。いろいろな意味で本に助けられる生活だったのでしょう。
◇本日の曲◇
「追憶/沢田研二」
「読みかけの本」というフレーズが印象的な沢田研二の「追憶」は、1974年(昭和49年)、
夏から秋にかけての大ヒットです。
投稿者 joqr : 12:00
10月27日(金) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「いま、お前に去られることは俺には余りにも切なすぎる。
だがその切実さこそが俺には入用なのだ」 堀辰雄
愛する人との別れ…なんて、できればない方がいいですが、しかし、時としてその愛情に甘えてしまうと、お互いにズルズルとどうしようもない所まで行ってしまう…どんなに好きでも、別れた方がいい。歌謡曲にはしばしば登場するテーマではありますが、人生には、ままあることです。
自ら肺結核を病み、そして最愛の夫人をも結核で亡くし、その悲しすぎる体験をもとに書いた小説「風立ちぬ」であまりにも有名な堀辰雄は、昭和初期に活躍した小説家です。この言葉は、やはり彼の代表作である「菜穂子」に登場する一節で、主人公の「菜穂子」も結核で、高原の療養所で暮らしているという設定です。
言うまでもなく、結核=「死」を意味していた時代のこと。代表作「風立ちぬ」は1932年(昭和7年)、この「菜穂子」は1934年(昭和9年)から41年、昭和16年にかけて書かれた作品で、辰雄が28歳から37歳にかけての時期ということになります。辰雄自身は結局1953年(昭和28年)、48歳まで生きましたが、病状が重くなった戦後は、ほとんど作品を残せませんでした。もちろん、この間もずっと迫り来る死の影と戦いながら闘病生活の中で作品を発表し続けていたわけで、そんな境遇の男性の書いた言葉として思うと、また、違った重みが感じられるようにも思います。
◇本日の曲◇
「北国行きで/朱里エイコ」
1972年(昭和47年)の大ヒット、朱里エイコの「北国行きで」は、男を置いて立ち去る切ない女性の歌です。
投稿者 joqr : 12:00
10月26日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「貧しく正直なりがたし」 平賀源内
18世紀の江戸で活躍した風変わりな天才、平賀源内の言葉。年配の方は、山口崇さんが源内を演じた1971年(昭和46年)から翌年にかけてのNHKドラマ「天下御免」を懐かしく思い出されることでしょう。現代語に直すと、「貧乏人が正直でいるのは難しい」…といった意味になるでしょうか。「正直の頭(こうべ)に神やどる」、たとえ貧乏な暮らしをしていようと、とにかく正直であることだけを心掛けていれば、きっとイイことがある…というコトワザがありますが、源内先生はその正反対、ハヤリ言葉でいえば「マギャク」な警句をポン、と投げかけたわけです。
江戸時代は身分社会、今風に言えば格差社会。お金持ちの支配者サイドとしては、貧乏な方々がこすっからくなるのは困る。できるだけ正直で、素直に生きて欲しい、犯罪など起こさず、社会の底辺をしっかり支えて頂きたい…と、正直でいなさい、と、道徳を奨励するわけです。しかし、それはあちら側の都合であって、やはり、満足に食べられない暮らしでは、なかなか正直でいるのは難しいという本音を述べたのがこの言葉です。
◇本日の曲◇
「オネスティ/ビリー・ジョエル」
正直、それはなんて寂しい言葉なんだと歌い上げる「オネスティ」は、11月に久々の来日公演が行われるビリー・ジョエルの1979年(昭和54年)の大ヒットです。
投稿者 joqr : 12:00
10月25日(水) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「そうだ、俺は不用な鍵のような人間だ。
どの穴へ持って行ってもあてはまらない!」 石川啄木
青春時代というのは、誰もが孤独に悩まされるものです。しかし、石川啄木の孤独は特別なものだったと言ってもいいのではないでしょうか。短歌、詩、そして小説。さまざまなジャンルでその才能を発揮し、わずか26歳で病に倒れた啄木は、また、とても文学的プライドの高い人間でした。
ところが、家庭的な事情から、常に貧困に悩まされ、そんなプライドに見合う生活を送ることが許されない。中学生のころ、恋仲になった女性がいて、彼女はこの自意識過剰の青年を、ずーっと精神的に支えていました。20歳のころ、二人はようやくその仲を認められ、結婚式を挙げることになったのですが、当時、啄木は父母を養わなければならない状況であり、経済的にもどん底。とてもじゃないけれど、一家の主として世間に胸を張れるような境遇ではなかった。
そこで、どうしたか…というと、結婚式をすっぽかしてしまった。新郎のいない式で、奥様は泣き通しだったそうですが…このほかにも、中学校をカンニングでクビになったり、借金を踏み倒したり、とにかく世間的に言えば、かなり「困った人」だった啄木。「孤独」に悩まされるのも無理はありません。それもこれも文学への思いの強さのなせる業であった…と、今となっては言えるわけですが。
◇本日の曲◇
「わかれうた/中島みゆき」
「いつも目覚めればひとり」…こちらも不器用な人間の寂しさを歌った、中島みゆきの「わかれうた」は1977年(昭和52年)のヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
10月24日(火) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「用心は人生を安泰にするが、必ずしも幸せにするとは限らない」 サミュエル・ジョンソン
非常に含蓄のある言葉ですね。
恋愛、仕事…いろんなシチュエーションに応用がききそうです。もちろん、用心深く生きたその延長線上に幸せがある、というケースもたくさんあるでしょう。しかし、やっぱり、ほんとうの「幸せ」というものは、何か自分の人生をかけた冒険、挑戦の向こう側にあるものではないだろうか…ということです。
サミュエル・ジョンソンは、18世紀のイギリス人。独力で「英語辞典」を刊行し、英語学の発展に功績のあった人物ですが、たくさんの名言を残しています。やはりイギリス人だけあって、冒険が好きだったのでしょう。
さて、本当だったらありえないような、自分のそれまでの人生を顧みては考えられない、そんな相手と恋愛に陥るというのはよくあること。そこで引き返して安泰な人生を送るのか?それとも思いきってジャンプして、「幸せ」の可能性に賭けるのか?女性の場合、往々にして、簡単にジャンプしてしまう方が多いようで、逆に男性の方がオロオロしてしまう…というのも、よくあることですね。
◇本日の曲◇
「C調言葉にご用心/サザンオールスターズ」
サザンオールスターズの「C調言葉にご用心」は、1979年(昭和54年)のちょうど今頃、街に流れ始めていた懐かしい曲です。
投稿者 joqr : 12:00
10月23日(月) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「むさぼることをやめよ。まことの友は一人二人あらば足りん」 森鴎外
夏目漱石と並び称される文豪、森鴎外の言葉。1900年(明治33年)から翌年にかけて書かれた「心頭語」(しんとうご)…という、生きていく上での智慧、ヒントを集めた本に登場します。
もう1世紀以上も前に残された言葉ですが、当時よりもむしろ現代に於いて、とても重い意味を持っているのではないでしょうか?
出会い系サイトやミクシィなど、インターネットを通じて、見たこともない人たちとすぐ「友達」になり、その数を誇らしげに自慢しあうような大学生たち。あるいは、手帳に所狭しとプリクラを貼り付けて、交際範囲の広さを見せつける女子高生たち。そんな危うい出会いから、とんでもない事件に巻き込まれる、そういったニュースもしばしば聞こえてきます。
ただ、そんな若い人たちも、もしかしたらときどき、そんな「友達コレクション」の毎日に、「疲れたなー」なんて思うこともあるのではないかと。そんな時、この森鴎外の言葉を、思い出して頂いても、いいのではないか…と、ちょっぴり思ったりするわけです。
◇本日の曲◇
「ともだち/坂本九」
作詞・永六輔さん、作曲・いずみたくさん、「ともだち」は、1965年(昭和40年)、坂本九さんのヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
10月19日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「名声をかちとった芸術家たちは、そのために苦しめられる。
したがって、彼らの処女作が往々にして最高である」 ベートーヴェン
音楽の歴史に燦然と輝く大作曲家、ベートーヴェンの重みのある言葉です。確かに、小説家にしても映画監督にしても、あるいは歌手にしても、デビュー作が大ヒットしてしまうと、その後それを上回る作品を発表することが出来ず、いつしかシーンから姿を消していく…というのはよくある事。表現者にとって、最初に世に出した作品が多くの人に受け入れられるのは、本当に嬉しいことでしょう。しかし、その向こう側には、とてつもなく大きな落とし穴がぽっかりと待ち受けている…という訳です。
ルートヴィッヒ・ファン・ベートーヴェンは、6歳で初めてのコンサートを成功させ、17歳からは一家の大黒柱として家族を養っています。20代後半からは音楽家にとって致命的な耳の病に苦しみ、自殺まで考えたという音がほとんど聞こえない状況の中、かの有名な「ジャジャジャジャーン!」の「運命」、また当時としては斬新なタイトルをつけた交響曲「田園」、さらに革新的な合唱つきの「第九」など、次々に新たな試みにチャレンジ、成功させていきました。おそらく彼自身、この言葉を何度も何度も自分に言い聞かせ、叱咤激励していたのでしょう。
◇本日の曲◇
「フェーム/アイリーン・キャラ」
アイリーン・キャラの「フェーム」は、同名映画のタイトル曲で、1980年(昭和55年)の全米№1ヒットです。
投稿者 joqr : 12:00
10月18日(水) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「一口に若気のあやまちといっても、いろいろ種類があるもんですよ。」 井伏鱒二
なかなか含蓄に富んだ言葉ではないでしょうか。若者たちがいろいろな無茶をやったり、とんでもない行動をしたりするのはよくあることですが、私達はそうしたものを全部ひっくるめて、「若気の至り」「若気のあやまち」といった言葉で、表してしまいがちです。
しかし、よくよく考えてみると、そうした無茶、あるいはとんでもない行動といったものも、それぞれ一つ一つが違う背景を持っているわけです。すべてを「若気のあやまち」と片付けてしまえば、それぞれの行動のもつ本当の意味を、しっかり見据えることが不可能になってしまう。そう簡単に使っていい表現ではないよ…と戒められているように思います。
この言葉は、井伏鱒二の「引越やつれ」という作品の一節。近所の人とのつまらない「いさかい」が原因で、短気になって出ていこうとする下宿人を、下宿のおかみさんが諌めていったものです。そう、年かさの人間だけでなく、若者自身にとっても、自分の行動を「若気のあやまち」「若気の至り」と片付けて、その本当の意味を見失うことがないように、大切にして頂きたい言葉だと思います。
◇本日の曲◇
「てぃーんず ぶるーす/原田真二」
1977年(昭和52年)、原田真二さんのデビューヒット「てぃーんず ぶるーす」は、若さの悲しみ、苦しみを歌った名曲で、作詞家・松本隆さんの代表作の一つでもあります。
投稿者 joqr : 12:00
10月17日(火) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「女性が鏡に映して自分を見るのは、自分の姿を見るためでなく、
自分がどんなふうに他人に見られるかを確かめるためだ」 アンリ・ド・レニエ
女性の方にしてみれば、何を当たり前のことを…と、おっしゃるかもしれませんが、男性にしてみると、ふむふむ、なるほど…と頷ける言葉ではあります。
アンリ・ド・レニエは、19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスの貴族の末裔にして詩人、小説家。
日本でも森鴎外がその作品を翻訳したり、また永井荷風が好きな詩人ナンバーワンに挙げるなど、クロウト好みの文学者として知られています。
この人物の奥様がまた大変な方で、その名はマリー。アンリ・ド・レニエは、やはり詩人のピエール・ルイスと彼女をめぐって争い、結婚にこぎ着けました。アンリが資産家だったことが決め手になったようです。
ところが、結婚後もマリーはアンリを拒み続け、そしてアンリの留守中にピエールと関係をもち、さらに他の男性とも関係し、父親のわからない子を産み、それを関係のないアンリの子供として育てるという…まあ、大変な女性だったようです。こんな妻を持った亭主としては、やはり女性を見る目がシビアになるのも仕方のないところでしょう。
◇本日の曲◇
「アラ見てたのね/都はるみ」
都はるみさんの1966年(昭和41年)のヒット「アラ見てたのね」は、先日惜しくも亡くなられた作曲家、市川昭介さん作品です。
投稿者 joqr : 12:00
10月16日(月) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「何事によらず、明日にのばせる事は、明日にのばした方がいい」 内田百閒
これまで数多くの名言をご紹介してきましたが、これぞ、名言中の名言といっても良いのではないでしょうか。勤勉こそ成功への鍵であると考えたアメリカ建国の父、ベンジャミン・フランクリンは、「今日やることを、明日に延ばすな」と言いました。確かにその通り、できることを早め早めにやっておくことが、結果的には成功につながる。これは真理でありましょう。
しかし、この言葉には、日本人が千年以上の歳月をかけ、作り上げてきた、伝統的な「余裕」が感じられます。急いては事をし損じる。果報は寝て待て。一度きりの人生をどうせなら楽しく生きていきたい。これもまた、真理ではないでしょうか。
黒沢明監督の遺作「まあだだよ」のモデルとなった文学者、内田百閒は、1889年(明治22年)岡山生まれ。東京帝国大学在学中に、かの夏目漱石の門弟となり、卒業後は陸軍士官学校・法政大学などで教官を勤め、また自らも創作を始め、「冥途」などの作品を発表します。その一方で、若い頃から大変な借金の名人として知られ、お金を借りることを「錬金術」と呼び借金モノの随筆を数多く発表。
また鉄道や飛行機などのマニアとしても知られ、列車に乗りたいというだけの理由で大阪へ出かけ、芸術院会員に推挙されると「いやだからいや」と拒絶。無理をせず生きたい様に生きた、人生の大先輩であります。
◇本日の曲◇
「昨日・今日・明日/井上順」
井上順の「昨日・今日・明日」は、1971年(昭和46年)のヒット曲です。井上順の当時の名前は「井上順之」でした。
投稿者 joqr : 12:00
10月12日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「神は人間に孤独を与えた。しかも同時に人間に孤独ではいられない性質をも与えた」 佐藤春夫
佐藤春夫は、大正から昭和にかけ活躍した小説家・詩人です。この季節になると、よく引き合いに出される詩、「秋刀魚の歌」が有名です。
「…さんま、さんま、さんま苦いか塩っぱいか。」
友人、谷崎潤一郎がその妻・千代に冷たく接するのを見て、しだいに彼女に恋心を抱き始めた春夫。後には谷崎から彼女を譲り受けることになり、谷崎夫妻、佐藤、3人の連名で、それぞれの友人に向け、「我等三人此度(このたび)合議を以て千代は潤一郎と離婚致し春夫と結婚致す事と相成(あいなり)」…という、前代未聞の挨拶状を出したというエピソードは、以前、谷崎の言葉が登場した折にもご紹介しました。
先ほどほんの少しご紹介した「秋刀魚の歌」も、彼女への恋心を歌った詩なんです。実は、春夫が最初に千代夫人に出会ってから、ようやく思いを遂げて結婚するまで、十年もの月日がかかっています。その間、谷崎は一度は妻を譲ると春夫に言いながら、いざとなると惜しくなったのか前言を撤回。春夫は神経症となって、田舎に引きこもってしまう…という事件もあり紆余曲折を経ての「譲渡」だったわけです。この言葉は、おそらく、春夫の実感だったのでしょう。
◇本日の曲◇
「ロンリー・ハート/クリエイション」
クリエイションの「ロンリー・ハート」は、孤独な心を歌った1981年(昭和56年)のヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
10月11日(水) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「好奇心というものは、実は虚栄心にすぎない。」 パスカル
17世紀、江戸時代の始めごろ…正に水戸黄門の時代、フランスに出現した天才少年、ブレーズ・パスカル。数学者、物理学者、そして哲学者としても有名ですが、幼い頃から数学が好きで、独学でいくつもの定理を「発見」。17歳の時には、徴税官であった父の仕事を楽にしようと、自ら計算機を設計して完成させるなど、その才能のほとばしりは尋常ではなかったようです。
後には深くキリスト教に帰依し、主に哲学の分野で活躍するようになりましたが、もしそのまま数学の道を歩んでいたら、世界の数学の歴史を変えたかもしれないと言われるほどの天才・パスカルの言葉の続きをご紹介します。
「好奇心というものは、実は虚栄心にすぎない。
たいていの場合、何かを知ろうとする人は、ただそれについて他人に語りたいからだ」
代表的な著作「パンセ」の中に登場しますが、グサリと重い言葉ですね。好奇心が旺盛…というのは、普通は、いいこととして評価の対象になります。しかし、何の考えもなしに、好奇心をもてはやすことは、「たいていの場合」、虚栄心をもてはやすことにつながる…自分の日頃の行動についても、いろいろ考えさせられる言葉だと思います。
◇本日の曲◇
「X+Y=LOVE/ちあきなおみ」
1970年(昭和45年)、ちあきなおみの「X+Y=LOVE」は、題名が数学の公式をもじったヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:00
10月6日(金) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「人間は、欲に手足の付いたる物ぞかし」 井原西鶴
現代語にすれば「欲が服を着て歩いてるのが人間だ」、といった感じでしょうか。井原西鶴は、
江戸時代前期の大阪で活躍した俳人で、若い頃からその才能には凄まじいものがあり、まず一晩で1000句を詠むというパフォーマンスに成功。これを興行として人前でやったというのも凄いです。この試みがウケにウケたので、続いて4000、さらには一昼夜で2万5千もの俳句を詠んでしまったこともあるといいますから、尋常ではない。
やがて40代になると、俳句から、文字の数に制限のない、より自由な「小説」の分野へと進出し、名高い「好色一代男」を手始めに、人情や風俗をヴィヴィッドに描いた数多くの作品を生み出しました。格式ばった武家社会に喧嘩を売るかのように、当時は禁じられていたホモセクシュアルを堂々と扱うなど、何事も包み隠さず、ストレートに対象に迫っていく、その驚異的なパワーは正に「大阪人」の面目躍如です。
西鶴は52歳で亡くなっていますから、小説家として活躍したのはわずか10年あまり。その間に「色」や「お金」を中心に、数多くの人間の「欲望」を主題にした作品を残しましたが、この言葉は、そんな西鶴の基本的な哲学を言い表しているように思えます。
◇本日の曲◇
「ささやかな欲望/山口百恵」
山口百恵の「ささやかな欲望」は、1975年(昭和50年)の今頃ヒットしていた曲です。
投稿者 joqr : 12:00
10月5日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「真の怒り、
真のよろこびのかわりに、人間関係をとりさばく智慧ばかりがある」 武田泰淳
皆さんは、頭にきたとき、本当に心からその怒りを表現することが出来るでしょうか?
あるいは、本当にうれしいとき、その喜びを心行くまで噛みしめることが出来るでしょうか。
本当に頭に来ることがあっても、その相手が取引先だったり、あるいは会社の上司だったり。
グイッと怒りを飲み込んで「おっしゃる通りです」…と、その場は自分をなだめてしまう、ということがどなたにもあるのではないでしょうか。
その結果、自分の中にあった純粋な「怒り」が、いつのまにか形を変えたり、あるいは消えてしまう。これがいいことなのか、悪いことなのか、なんとも言えないところではありますが、人間関係、社会というものの中で生きている以上、仕方ないな…と納得せざるを得ない。結果的に「真の怒り」「真のよろこび」といったものから、どこか遠いところに離れていってしまうわけです。
◇本日の曲◇
「ランナウエイ/シャネルズ」
「ランナウエイ」は、煩わしい人間関係を離れて、恋人と二人、どこか新しい土地で暮らしたい…
そんな希望を歌った1980年(昭和55年)春の大ヒット、シャネルズのデビュー・シングルです。
投稿者 joqr : 18:54
10月4日(水) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「第一に必要なるものは大胆、
第二に必要なるものも大胆、第三に必要なるものも大胆なり。」 キケロ
以前もこの時間で取り上げたことのあるキケロは、ジュリアス・シーザーの政敵であり、哲学者、また「雄弁家」としても知られる人物です。大勢の前で、マイクやスピーカーなど使わず、朗々としたよく通る声でまるで歌い上げるように演説を行い、自分の説を納得させたというこのキケロ。現代イタリア語では「チチェローネ」と呼ばれていて、実はこの言葉は、普通名詞としての意味は、「名所旧跡の案内人、観光ガイド」。キケロのように、まことしやかに語り、客を納得させる人…といったニュアンスなのでしょう。
「雄弁家キケロ」といえば、片方の肩にだけかかったガウンのような服を着た、重厚なイメージの人を思い浮かべますが、「観光ガイド・チチェローネ」だと、口が達者な典型的なイタリア人のイメージが浮かびます。もしかしたら、キケロという人も、やたらとしゃべりまくる、ワインやピッツァが大好きな、情熱的なイタリア男だったのかもしれませんね。
◇本日の曲◇
「どうにもとまらない/山本リンダ」
1972年(昭和47年)夏の大ヒット、山本リンダの「どうにもとまらない」は、可憐な少女だった彼女が、ヘソ出しルックでイメチェン、現在に繋がる人気を獲得した記念すべき曲です。
投稿者 joqr : 12:10
10月3日(火) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「同じ人間なのに、人生の乗車券は特等から十等までぐらいある。」 井上靖
本格的な「格差社会」の到来が囁かれる今、なかなか重みを持った言葉のように思います。
皆さんは自分が特等、一等、二等…十等と数えていって、どのあたりの切符を手にしていると思いますか?
さて、この言葉を理解する上で、明治から戦前、戦後にかけての鉄道料金についてご紹介しておきましょう。名実共に「階級社会」であった戦前の名残として、1960年(昭和35年)まで、鉄道の料金は「一等・二等・三等」の3ランクに分かれていました。現在では、料金の差は座席の差にすぎませんが、かつては運賃そのものにランクがあったのです。
二等の料金は三等の倍、一等はそのさらに倍。現在、東京から新大阪まで新幹線の自由席がおよそ1万3千円ですが、当時の料金体系に当てはめると、二等だと2万6千円、一等だと5万2千円! しかも片道!こうした事情を飲み込んだ上で、この言葉を考えてみると、一層、しみじみ感じられるように思えます。
◇本日の曲◇
「哀愁列車/三橋美智也」
高音が魅力の三橋美智也の「哀愁列車」は、1956年(昭和31年)の大ヒット曲です。
投稿者 joqr : 12:02
10月2日(月) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「すでに生きてしまった一つの人生は、
つまり下書きで、もう一つのほうが清書だったらねえ。」 チェーホフ
この言葉に、ウンウンウン…と激しく頷かれる方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
チェーホフの名作戯曲「三人姉妹」の中で、ある男が言うセリフです。このセリフは、こんな風に
続きます。
「そのときこそ、われわれはめいめい、まず何よりも自分自身を繰り返すまいと努力すること
だろう、とぼくは思います。少なくとも自分のためにちがった生活環境をつくることでしょう」
皆様、いかがでしょうか。
さて、英語の言い回しにも、こういう表現があります。「YOU ONLY LIVE ONCE」ユー・オンリー・リヴ・ワンス=人生は一度きり。チェーホフの言葉にも通じる表現ですが、これをもじって作品のタイトルにしたのが、かの007シリーズの一作、「YOU ONLY LIVE TWICE」ユー・オンリー・リヴ・トゥワイス。
「もじり」であることがわかれば面白いのですが、直訳で「人生は二度きり」といっても訳が分からない。そこで、翻訳者が苦心してつけた邦題が、「007は二度死ぬ」というわけです。
カッコイイですね!
◇本日の曲◇
「007は二度死ぬ/ナンシー・シナトラ」
ナンシー・シナトラの「007は二度死ぬ」は、日本でロケされた映画版の主題歌です。
投稿者 joqr : 17:05