2006年10月27日
10月27日(金) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「いま、お前に去られることは俺には余りにも切なすぎる。
だがその切実さこそが俺には入用なのだ」 堀辰雄
愛する人との別れ…なんて、できればない方がいいですが、しかし、時としてその愛情に甘えてしまうと、お互いにズルズルとどうしようもない所まで行ってしまう…どんなに好きでも、別れた方がいい。歌謡曲にはしばしば登場するテーマではありますが、人生には、ままあることです。
自ら肺結核を病み、そして最愛の夫人をも結核で亡くし、その悲しすぎる体験をもとに書いた小説「風立ちぬ」であまりにも有名な堀辰雄は、昭和初期に活躍した小説家です。この言葉は、やはり彼の代表作である「菜穂子」に登場する一節で、主人公の「菜穂子」も結核で、高原の療養所で暮らしているという設定です。
言うまでもなく、結核=「死」を意味していた時代のこと。代表作「風立ちぬ」は1932年(昭和7年)、この「菜穂子」は1934年(昭和9年)から41年、昭和16年にかけて書かれた作品で、辰雄が28歳から37歳にかけての時期ということになります。辰雄自身は結局1953年(昭和28年)、48歳まで生きましたが、病状が重くなった戦後は、ほとんど作品を残せませんでした。もちろん、この間もずっと迫り来る死の影と戦いながら闘病生活の中で作品を発表し続けていたわけで、そんな境遇の男性の書いた言葉として思うと、また、違った重みが感じられるようにも思います。
◇本日の曲◇
「北国行きで/朱里エイコ」
1972年(昭和47年)の大ヒット、朱里エイコの「北国行きで」は、男を置いて立ち去る切ない女性の歌です。
投稿者 joqr : 2006年10月27日 12:00