2006年10月12日
10月12日(木) くにまる音楽温泉
◇本日のお言葉◇
「神は人間に孤独を与えた。しかも同時に人間に孤独ではいられない性質をも与えた」 佐藤春夫
佐藤春夫は、大正から昭和にかけ活躍した小説家・詩人です。この季節になると、よく引き合いに出される詩、「秋刀魚の歌」が有名です。
「…さんま、さんま、さんま苦いか塩っぱいか。」
友人、谷崎潤一郎がその妻・千代に冷たく接するのを見て、しだいに彼女に恋心を抱き始めた春夫。後には谷崎から彼女を譲り受けることになり、谷崎夫妻、佐藤、3人の連名で、それぞれの友人に向け、「我等三人此度(このたび)合議を以て千代は潤一郎と離婚致し春夫と結婚致す事と相成(あいなり)」…という、前代未聞の挨拶状を出したというエピソードは、以前、谷崎の言葉が登場した折にもご紹介しました。
先ほどほんの少しご紹介した「秋刀魚の歌」も、彼女への恋心を歌った詩なんです。実は、春夫が最初に千代夫人に出会ってから、ようやく思いを遂げて結婚するまで、十年もの月日がかかっています。その間、谷崎は一度は妻を譲ると春夫に言いながら、いざとなると惜しくなったのか前言を撤回。春夫は神経症となって、田舎に引きこもってしまう…という事件もあり紆余曲折を経ての「譲渡」だったわけです。この言葉は、おそらく、春夫の実感だったのでしょう。
◇本日の曲◇
「ロンリー・ハート/クリエイション」
クリエイションの「ロンリー・ハート」は、孤独な心を歌った1981年(昭和56年)のヒット曲です。
投稿者 joqr : 2006年10月12日 12:00