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2009年05月08日

朗読紙片第3回「Terra」

朗読紙片第3回「Terra」

を掲載致します

目で見ながら、もう一度、松井五郎さんの世界を感じてみては

いかがでしょうか・・・


Terra


わたしは なにも 見ない
あなたが知ることのない 地中奥深くで 生きている
わたしは なにも 語らない
あなたが行くことのできない 深海の涯で 生きている

定められた虚空の抱擁に身を任せて
与えられた永遠の一片を受け入れて
なんの条件も なんの束縛も ないままに
この惑星と交わした約束を ただ果たすために

わたしは なにも 問わない
あなたが忘れかけている 空の彼方で 生きている
わたしは なにも 示さない
あなたが失いかけている 森のすべてで 生きている

積み上げられた過ちの重さを信じながら
求められる解答の数を疑いながら
たとえ小さな石でも 階段の一段となるように
たとえわずかな一滴も 大河のはじまりとなるように

それはこの鼓動から思うよりも遠くにあるだろう
それはこの血の流れから思うよりも近くにあるだろう
それはこの呼吸から思うよりも遠くにあるだろう
それはこの体温から思うよりも近くにあるだろう

わたしは 決して 奪わない
あなたが残してきた 時間の轍の一端で 生きている
わたしは 決して 殺さない
あなたが選ぶことのできない 道のどこかで 生きている

放たれた光は闇を責めることはなく
闇もまた光あるがゆえに在り続ける
形にとらわれず 名前に惑わされず
わずかな一点一点はただ線であり続ける

わたしは 決して 苦しめない
あなたと叶えようとしている 夢のつながりで 生きている
わたしは 決して 憎まない
あなたとかならず報われる 愛が生まれる場所で 生きている

なにもかもが無限であることを許されながら
命が ただ有限である真実と向かい合い
「同じ」という希望と「違う」という希望で
終わることのない絶望をも きっと越えてゆける

わたしは 決して

投稿者 agqr : 2009年05月08日 01:05

 

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