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2021年07月13日
第165回直木賞最終予想
ここまで各候補作をみてまいりました。では最終予想といきましょう。
まず『スモールワールズ』は、今回の力作長編が揃った中では、
ちょっと分が悪いかなと思います。むしろ本屋大賞のほうに期待がもてます。
次に時代小説ですが、今回は『星落ちて、なお』と
『高瀬庄左衛門御留書』という素晴らしい作品が被ってしまいました。
個人的には『高瀬庄左衛門御留書』のほうが上だと思うのですが、
ここは選考委員の票が割れるんじゃないでしょうか。
当然、『星落ちて、なお』を推す人もいるでしょうし。
時代小説が食い合うことによって、
『おれたちの歌をうたえ』と『テスカトリポカ』の
一騎打ちになるのではと予想します。
ではこのどちら?ということになると……うーん。
先日、『テスカトリポカ』を取り上げた際に、
すべての候補作の中で、もっとも遠くまで
想像力という名のボールを飛ばした作品であると紹介しました。
今年は大谷翔平選手が大活躍しています。
『テスカトリポカ』が描く放物線は、
大谷選手のあの豪快なホームランを彷彿とさせるものがあります。
『おれたちの歌をうたえ』も見事なホームランなのですが、
『テスカトリポカ』は同じホームランでも飛距離が違うと思うのです。
この作品はすでに山本周五郎賞を受賞していて、
過去ダブル受賞は、熊谷達也さんの『邂逅の森』くらいだと思いますが、
そうしためったにないレアな感じも大谷イヤーにふさわしいと思います。
ということで、第165回直木賞は、
佐藤究さんの『テスカトリポカ』が受賞すると予想します。
最後に芥川賞にもちょっと触れておきましょう。
こちらもフレッシュな顔ぶれでまったく予想がつきませんね。
ですが、こちらは李琴峰さんの『彼岸花が咲く島』を受賞作と予想します。
たくさんの声や言葉が聴こえてくるポリフォニー(多声音楽)のような小説。
21世紀の文学はきっとこっちの方向なんだろうなと思わせてくれた作品です。
芥川賞と直木賞の選考会は、7月14日(水)に行われます。
投稿者 yomehon : 2021年07月13日 05:00