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2017年01月12日
第156回直木賞直前予想(2) 『蜜蜂と遠雷』
続いては恩田陸さんの 『蜜蜂と遠雷』です。
作品について説明する前に、まずお礼が言いたい。
誰に?この作品に引き合わせてくれた本の神様に、です。
実に、実に素晴らしい小説でした。
こんな素晴らしい本に出合えるなんてなんて幸運なんでしょう。
語りたいことはたくさんあるんですが、
詳しくは機会をあらためることにして、
きょうはざっと内容を紹介するにとどめます。
この作品は、
芳ヶ江国際ピアノコンクールという、
世界が注目するコンクールを舞台に、
個性豊かなコンテスタント(演奏者)たちが繰り広げる人間ドラマを描いた小説です。
物語は、パリで行われた予選にまったく無名の少年が現れ、
審査員の心胆を寒からしめる演奏を披露するところから始まります。
彼は養蜂家の父親のもと、ピアノも持たずに各地を転々しながら育つという、
およそピアニスト志望とは思えないような生活を送っていました。
しかも彼は、弟子をとらないことで有名な伝説のピアニストが遺した唯一の弟子でした。
彼だけでなく、表舞台から姿を消していた元天才少女や、
妻子を持つ身でありながら音楽家への夢を捨てきれないサラリーマン、
カリスマ性とスター性を兼ね備えたアメリカ人青年らがステージで躍動します。
本の中から本当に「音楽が聴こえてくる」奇跡のような作品。
恩田陸さんのキャリアの中で、間違いなくこれは最高傑作といっていいでしょう。
投稿者 yomehon : 2017年01月12日 00:00