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2007年01月13日

第136回直木賞受賞作 直前大予想!

新年早々、大きなイベントがやってまいりました。
第136回直木賞受賞作が近く発表されます。

当ブログでは毎回当落予想をしておりまして、
前回135回は「2作同時受賞」を予想、
うちひとつ(森絵都『風に舞いあがるビニールシート』)をみごと的中させたものの、
もういっぽう(三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』)を外してしまい、
結果は50点の出来。

さて今回はどうなりますか・・・などと言いつつ、
実はもうわかっちゃったんだな、受賞作が。


それはおいおいお話するとして
まずは候補作をみてみましょう。
内容がすぐわかるように各タイトルの横にコメントを付しました。

『空飛ぶタイヤ』池井戸潤(実業之日本社) → 企業の不祥事の真相は?
『四度目の氷河期』荻原浩(新潮社)  → 母子家庭の少年の成長物語
『ひとがた流し』北村薫(朝日新聞社) → 人生のかけがえのなさを描く
『一瞬の風になれ』佐藤多佳子(講談社) → 陸上短距離青春小説
『どれくらいの愛情』白石一文(文藝春秋) → 恋愛短編集
『失われた町』三崎亜紀(集英社)  → 30年にいちど町が消える世界のお話

ぱっと見、意外なのは、北村薫さんがまだ直木賞を受賞していないこと。
エンタテイメント小説の世界で確固たる地位を確立したうえ
山本周五郎賞の選考委員もなさっている北村さんだけに
「あれ?まだ受賞していなかったっけ?」という感じです。

『ひとがた流し』は朝日新聞連載時から話題となった小説。
とてもせつない物語です。

主人公は、アナウンサーの千波、作家の牧子、広告カメラマンの妻になった美々。
3人は高校時代から仲が良く、40代になったいまも交友が続いています。
やがて千波が不治の病を宣告される。ここから物語はせつなさを加速させます。

けれどもこの小説をたんなる「お涙頂戴もの」と断じるのは早計にすぎるでしょう。
作中に盛り込まれたさまざまなエピソードによって、物語は定型に陥ることなく、
登場人物それぞれが歩んできた人生のかけがえのなさを浮かび上がらせています。

間違いなくこの小説は北村薫の代表作のひとつ。
選考委員はこのような作品に対してこそ賞を与えるべきではないでしょうか。
というか、ふつうに候補作を読めば、
この『ひとがた流し』が大本命だってことは誰にだって明らかなんではありますが。


さて、『ひとがた流し』が大本命ならば対抗馬はないのか。
あります。
それもかなり強力な対抗馬が。

『一瞬の風になれ』佐藤多佳子(講談社)がそれ。


主人公はサッカー少年の新二。
天才サッカープレイヤーの兄と比べて自分の才能に見切りをつけた新二は、
高校では陸上部に入部します。
そして陸上選手としての才能を開花させていくのですが、
その高校生活3年間を1学年ごと、3冊にわたって瑞々しく描き出したのがこの作品。
おそらく本屋大賞でも全国の書店員のみなさんから絶大なる支持を得るであろう
スポーツ青春小説の傑作です。


佐藤多佳子さんは小説好きにはよく知られた作家で、
これまでにも落語家の青年の不器用な恋を描いた『しゃべれどもしゃべれども』
スリを主人公にした『神様がくれた指』など、きわめて上質のエンタテイメント小説を
ゆっくりとしたペースで発表してきました。

けれどもいまいち一般への知名度が低かった。
それを打ち破るきっかけとなった記念すべき作品が『一瞬の風になれ』なのです。

ただ問題は、この小説が3冊にわかれていること。
直木賞の内規はよく知りませんが、
ありなんでしょうか、分冊作品の受賞というのは・・・。
間違いなくこの点は選考委員のどなたかが問題にしそうな気がします。
2作同時受賞も考えたのですが、どうもこの作品に関してはすんなりとは
いかないのではないか。


というわけで、第136回直木賞受賞作、当ブログの予想は
『ひとがた流し』のみでいきたいと思います。
それにしても、もし受賞すれば北村薫さんは56歳での直木賞受賞。
うーん、それもなんだかなぁ・・・。
直木賞って本来は有望新人、せいぜいが中堅どころに与えられる賞じゃないかと思うんですが。

投稿者 yomehon : 2007年01月13日 23:52